としごろ

「すみません、あなたが転生者ですか?」

 背後から男が話しかけてきた。

 久しぶりの休日でルンルン気分の俺はスラム街の友達に久しぶりに会いに行っていたのだ。

 だが、せっかく休める日にこんな面倒ごとに巻き込まれるのは嫌だ。

「どういうことですか?」

「あ、突然話しかけてすみません。」

 見た感じ、彼は身長168cmといったところだ。

 黒いパーカーを着て、眼鏡をかけている。

「その、信じてもらえないかもしれないですが...」

「とりあえず話だけ聞いておく。」

「あ、あの、昨日夢に神を名乗る男が現れたんです。」

 神を名乗る男...

 アイツ、俺以外の人の夢にも出ているのか。

「それで、僕以外に転生者がいるって聞いて......あと、言い忘れてたんですけど、僕、転生しているんです。」

「そうですか。じゃあ、僕は時間がないのでまた。あと、連絡先だけ教えてください。」

「分かりました。」

 俺は男の連絡先を教えてもらったあと、俺たちは別れた。

 ということになっているが、俺はあの男の後をつけていた。


 色々調べ終わったしそろそろ帰るかー。

 俺が屋敷に帰ったのはあの男との会話から二時間経った後だった。

 屋敷に帰るといつもの人たちが働いていた。

 と言っても5人しかいないが。

 今日は休日だが、家庭教師の仕事はある。

 今日の場合、メイドとしての仕事が無いから時給は千円だ。

 俺はいつもの制服に着替え、結希の授業の時間まで部屋で本を読んで時間を潰していた。

 前世は読書が苦手だったが、今回は好きだ。

 一年ほど前、本屋でバイトをしていて、その時に本が好きになった。

 お気に入りは、太宰治だ。

 理由は特に無いけど、なぜか親近感が沸く。

「あ、もう時間か。」

 時計の針は、授業開始の5分前を指していた。

 俺は本を本棚に戻し、服のシワを直した。

 そして結希の部屋をノックした。

「結希様、部屋に入りますがよろしいでしょうか?」

 …返事がない。

 まあ、いつも返事がないし、入っちゃお!

「では入りま...」

 ドアを開けると結希は漫画を読んでいて、その漫画には上半身裸の男が描いてあって...

「あ...」

『ばたん』

 俺は無言でドアを閉めた。

「え、ちょっ、それ誤解です!!待ってください!無言でドアを閉めないでください!」

「大丈夫です!女子とはいえ、年頃です。好きにしてください。また一時間後に部屋に来ますね!」


 …結局誤解だった。

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