お嬢様と駆け引き

 俺が家庭教師を始めてから一週間。

 俺は何個か結衣に関係するものをsnsにアップしたが、未だにヒントがつかめない。

 貴族に転生しているのならインターネットに触れる機会が少ないかもしれない。

 俺はそんなことを考えながら結希の部屋を掃除しに、モップと洗剤が混ざった水の入ったバケツを持って、結希の部屋に入った。

 この時間、結希は学校(めっちゃ名門校)に通っていて、他のお手伝いさん達も結希の部屋には近づかない。

 部屋に入ったら、結希のパソコンが置いてあった。

 しかもつけっぱ。

 年頃の女子がどんなことを調べているのか気になる。

 でもさっき考えていた通り貴族はインターネットに触れる機会があまりないかもしれない。

 俺が結希の検索履歴を見ると、そこには予想外の物があった。

 なんと!ちょっと違法なサイトで漫画読んでる!

 読んでいたのはラブコメや青春もの、あとちょっとエッチなやつ。

 ま、まあ見なかったことにしよう。

 俺がモップを取りに、振り返ると、そこには真っ赤な顔をした可愛らしいお嬢様が...

「すみません何も見てません。信用できないのなら毎月時給のの10%をあげるのでどうかクビだけは勘弁してください。」

 俺は近くの紙にペンで文字を書き、契約書代わりにした。

 書かれている内容はさっきとほぼ同じだ。

 ここで彼女が同意すれば俺の勝ちだ。

 なぜなら毎月”時給”の10%だ。

 一時間働いて手に入れたお金の10%を一か月に一回。

 つまり毎月俺は600円払えばいいだけだ。

「なるほど毎月約25万円ですか。いいですねサインしましょう。」

 引っかかったな!

「サイン書けましたか?」

「はい!毎月約25万も渡していいんですか?」

「600円ですよ?」

「え!?」

「ちゃんと読んでないんですか?契約書。毎月、”時給”の10%を払うという契約です。僕は今、時給6000円で働いているので、」

 ふっ。

 世間知らずのお嬢様め、人は簡単に信用していいものじゃないぞ。

 それで、俺は母親を信用していたが捨てられ、スラム街で毎日必死に食い物を探し、時にはゴミを食うこともあった。

 ある意味、人間ってのはこの地球上で一番穢れた生物だ。

 おっと。

 ネガティブ思考になってしまったぜ。

「そんなのひどいです!」

「ちゃんと契約書を読まないと駄目ですよ。いつか騙されますから。」

「むぅー。」

 彼女はキレ気味にパソコンを片づけていた。

 そして部屋を出ていった。

「ていうか今日学校じゃないのか?」

 俺は誰もいない廊下で呟いた。


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