第5話 僕は小説とは関係なく素直に疑問をぶつけた

 僕は彼女に名前を訊くのは、失礼な気がしてきた。

 そもそも生徒会役員なら、文芸部でもないから勧誘の意味も分からなかった。

「じゃあ、見てたのは謝ったし、この辺で解放してくれると助かるんだけど」

 僕は恐る恐ると切り出した。


「ふぅー、仕方ないわね。私の名前は高橋たかはし莉愛りえ。みんなは『りえっち』とか呼んでるわね」

 なんで愛称の方が長いんだろう?

 僕は他愛のない疑問を浮かべていた。


「たぶん語感が良いからじゃないかしら。佐藤君が文芸部に入ってくれたら、特別にりえっちって呼んでも良いわよ」

 僕は知らずと、口に出してしまっていたらしい。

 序でだと思い、前話冒頭の疑問をぶつけることにした。


「高橋さんは生徒会なんでしょ?何で文芸部の勧誘に熱心なの?」

 

 高橋さんは人差し指を、横に揺らしながら言った。

「チッチッチッ……りえっちって呼ばなきゃだよ。私は生徒会の書記であると共に、文芸部の部長でもあるんだよぉ」


「ところで高橋さんは、なんで僕の名前を知ってるの?」

 僕は前話冒頭の、もう一つの質問をぶつけてみた。


 高橋さんは、この質問にはキョトンとしていた。

「えっ?私は普通に、同学年の生徒の顔と名前くらい全員知ってるけど。だって、まるまる二年も同じ学校に通ってるんだよ?」


 僕はこの瞬間、陽キャっていわれてる人達って、ヤッパリ別の世界に住んでるんだなって実感したんだ。

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