第2話 僕が小説を書けるのは図書室くらいなもんだ

 僕は放課後、たいてい図書室に行ってスマホとノートで執筆する。

 放課後の図書室は、意外と人がいないので割と快適なプライベート空間だと思ってる。

 調べたい書籍が有れば、直ぐに手に取ることだってできるので、とても便利だ。

 無駄にググってばかりでは、ギガの消費がハンパないのでお財布にもやさしい。


 それでも用心深い陰キャな僕は人目を忍ぶように、窓側のいちばん隅っこの席を選んでいる。

 しかし最近になって、気掛かりなことが一つだけあるんだ。


 僕は視線だけを横に滑らす。

 図書室の長テーブルの対角線上には、本を読む見知らね眼鏡女子が腰掛けている。

 僕との距離は十分すぎるほど開いているのだが、他にも空いてる席なんかいくらでも有るっていうのに、何で?って思ってしまう。


(しまった!)


 彼女は僕の視線に気が付いたらしく、笑顔で手を振っていた。

 陰キャの僕が横目で見つめてたのがバレてしまうとは、迂闊だった。

 きっと笑顔の下での本音では、キモがられているに違いない。

 それこそ、ラブコメでは定番だろ?

 勘違い男子はみんな、あの笑顔を真に受けて玉砕するのだから。


 僕は気付かなかったフリをして、スマホに目を移しながらノートには適当なことを書き込んでいた。

 だってそうだろ?

 陰キャな僕には、この場を切り抜ける術など持ち合わせてはいないんだから。

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