第8話 オークの襲撃
ギルドでの仕事にも慣れてきたある日、最近の懸案事項についての会議が冒険者ギルド内で開かれた。参加者は、もちろんギルドの出資者である、アントーニオさん、アンナさん、ルチアーノさん、そして私だ。
私たちが席に着いた後、ギルドマスターのアントーニオさんはこう切り出した。
「最近、この都市の周辺でオークの活動が活発化していて、商人や近隣の農村の住民から警護の依頼が増えているのは知っているだろう。だが、いくつかの冒険者パーティーがオークの襲撃でメンバーを失ったり、負傷したりした影響で、引き受けてくれる冒険者がなかなか見つからない依頼が増えてきているんだ。」
「冒険者ギルドは、依頼を冒険者に斡旋できなければ、信用を失うし、収入が減ってしまうわ。」とアンナさん。
「冒険者の警護をつけないで移動していた商人が全滅したという話も最近増えている。この街ピラソンの主要な産業は製塩業だから、安定的に塩をほかの都市に販売するには、街道の安全が欠かせない。」とルチアーノさん。
「オークの活動の活発化は私たちの冒険者ギルドだけでなく、ピラソンにとっても大きな問題ということか。オークの拠点を複数の冒険者パーティーで攻撃すれば解決するのではないだろうか。」私は、腕の立つ冒険者パーティーでオークの拠点に奇襲をかければ、倒せるのではないかと考えた。
「だがな、どこにオークの拠点があるか誰もわからないんだ。ピラソン周辺には、森や丘も多いから見通しがきかない。それに、この辺りには帝国時代に作られた要塞や荘園の廃墟、廃村も多く、オークが隠れられそうな場所は多いんだ。」私の提案にギルドマスターはこう答えた。
荘園とは、換金性の高い作物を生産する農場のようなものだ。帝国時代、このピラソン周辺にはたくさんの荘園があったそうだが、帝国の衰退、オークや魔物の襲撃により多くの荘園は廃墟化している。このあたりの荘園では、オリーブや柑橘類を生産していたところが多く、地下貯蔵庫を備えた荘園あるらしい。オークにとっては恰好の隠れ家だろう。
また、廃墟化した要塞も隠れ家にはよいだろう。この辺りは、オークの襲撃に備えるため要塞がいくつか帝国の末期に作られたが、現在では打ち捨てられている。丘の上の城壁で囲まれた要塞に隠れていたら、オークが住み着いていても見つかる可能性は低い。
「それに、優秀な冒険者パーティーを複数雇えるような依頼主はいないと思うわ。」アンナさんも難しい顔をしている。
「依頼主の件だが、複数の商人が依頼料を出し合えば、オークの拠点を攻撃するのに必要な冒険者パーティを集めることはできると思うが、やはりオークの拠点が分からないのが問題だろう。奴らは神出鬼没だから、拠点を叩かない限り根本的な解決にはならないだろう。」ギルドマスターも難しい顔をしている。
「オークの拠点を探す方法があればいいんだがな。。。オークの拠点を見つけるには、人海戦術でこの辺りでオークが隠れられそうな場所を一か所ずつ探していくしかないが、このやり方では、いくらお金があっても、必要な冒険者を集めることはできないだろう。」
元冒険者のルチアーノさんでもオークの拠点を見つける方法は思い当たらないらしい。
「つまり、オークの拠点さえ見つけることができれば、拠点の攻撃に必要な冒険者は集められることはできるということか。私に考えがあるから聞いてほしい。」私は、私の筆記魔法を使ってオークの拠点を見つけだす方法を思いついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます