一年の賭けは元旦にあり
博打打ちのDさん曰く。元旦に、ふぐ刺しと鶏刺しと生牡蠣を食べるのがギャンブラーの慣わしだそうだ。
「やっぱりね、三回やるのがいいんだよね」
三は、四(死)に届かない数字だからだろう。
体調不良にならなければ、その年の賭け事は上手くいくとされている。
私は、競馬もパチンコもソーシャルゲームのガチャもやらないが、Dさんと共に「三がけ」と呼ばれるそれらを食べることにした。
まずは、ふぐ刺し。猛毒であるテトロドトキシンを保有しているため、リスクがある。
トラフグの薄造りは、歯応えがよい。噛むほどに旨味が出てくる。
次に、鶏刺し。サルモネラ菌やカンピロバクターは、鶏肉によく見られるため、リスクがある。
甘い醤油で味付けしたそれは、薬味のニンニクと食べると、大層美味しい。
最後に、生牡蠣。ノロウイルスを含まないものを提供する技術は確立されていないとされているため、リスクがある。
Dさんが手慣れた様子でナイフで割ってくれた殻付き生牡蠣は、体液に旨味があり、美味だ。
その後。結果として、私の体調に異変は起こらなかった。
Dさんは、ノロにあたり、「正月から病院で働いてる人らには頭が上がらないよ」とコメントを残した。
賭け事が上手くいくことを、体を張った賭け事で運試しするという風習。
以上が、「三がけ」である。
虚構の民俗学 霧江サネヒサ @kirie_s
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