第11話
「優海禾? 優海禾ーっ? ぼーっとしてどうしたぁ?」
乃亜がテーブルに身を乗り出して、私の顔を覗き込んでいた。
「あ、ぼんやりしてた。ごめんなさい。なんだかいろんなことが全部初めてで頭が追いつかなくて」
「何だそれ?」
上水柳くんに笑われた。
そんな上水柳くんを見て乃亜も笑っていた。
「もしかしてホームシックとか?」
「そうかもしれない。恥ずかしいね」
そう言って私も笑った。
笑うのは得意。
どんな時でも笑うことができる。
兄が、冷たい目で私を見るようになっても、ちゃんと笑えていたしね。
「の、乃亜と、かみ……上水柳くんって仲良いんだね」
「いやいやいや、ただの腐れ縁だから。高2、高3と同じクラスだったからよく話すようになっただけで、仲良いとかそういうんじゃないっていうか」
「本人前にして否定しないでよ〜。傷つくじゃん」
「あ、悪い」
「そう言えば、江西覚えてる? この間偶然会ったんだけど、髪の毛緑にしててびっくりした」
「江西ってあの学年で1番、頭が良かったあの江西?」
「そう! 難関国立大受かって、すぐに緑にしたんだって」
「へぇ。今まで勉強ばっかりしてた反動ってやつ?」
「じゃないかなぁ。でね、森山さんってわかる?」
乃亜は高校の頃の話を上水柳くんにし続けたので、自然と聞き役になる。
今頃、兄は、私に会わないように気を使わなくてすむ分、自分の家を自由に過ごせているだろうか?
2人の話を聞きながらも、頭の中でそんなことを考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます