第9話

2人ともこの辺りに詳しいらしく、迷うことなくカジュアルなパスタの店へ連れて行かれた。

4人席に案内され、2人が並んで座り、テーブルを挟んで私が座った。



「パスタとピザを適当に頼んでシェアするのでいいよね?」


「なんでお前が仕切ってんの?」


「いいじゃん。どれにする?」


「どれでも。お任せしていいですか?」


「OK。じゃぁあ――」




注文を済ませると、ようやく自己紹介となった。


「英文の兼房乃亜です。昴生とは高校が一緒だったんだよねー」


上水柳かみみずやなぎ昴生です。こいつ、兼房とは高校が一緒で、まさか大学も学部も一緒になるとは思わなかった」


「東条優海禾です。お2人と同じ英文学部です」


「嘘だ? すごい偶然」


「優海禾って、地元こっちの人?」


「お前、いきなり下の名前呼び捨てって、図々しいって」


「細かいなぁ。わたしのことも乃亜でいいからねー」


「地元は岡山県です」


「あ、じゃあ、一人暮らし?」


「そうです」


「優海禾んで鍋パしよ! 同じ英文なんだから、仲良くしようねっ」


「だから、図々しいって」


「私、こっちに知り合いがいないので嬉しいです」


「敬語もやめよーよ。友達になったんだからさ」


「そこは兼房に賛成。そうだよ、同じ1年なんだから敬語はナシで」


「とりあえず、連絡先交換しよっか」


連絡先を交換し合ったところで、上水柳くんに電話がかかって来た。


「ちょっとゴメン」


彼が電話に出るために、店の外へ向かうのを目で追っていた乃亜は、上水柳くんがお店の外に出たのを確認してから小声で言った。


「昴生のこと、とらないでねっ」


乃亜は冗談ぽく言ったけれど、本気? よくわからない。


「とったりしないよ」


「わたしたち、いい友達になれそうだね」


乃亜は無邪気な笑顔を見せた。

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