第4話

すぐに家へ連れ帰られた私たちは、熱いお風呂で冷たくなったからだを温められ、いつものようにお手伝いさんが作った夕食の並ぶ食卓へついた。




本当は全部私のせい。私がラズベリー色のクマに気を取られたばっかりに、パパとママの結婚記念日をお祝いする外食がなくなってしまった。

けれども、全て兄が自分のせいにしてしまったから、パパもママも不機嫌になることはない。



時々感じる違和感。

でも、毎日美味しいご飯を食べさせてくれて、毎日お風呂に入れてくれて、新しい服を着せてくれる。

きっと、兄は優秀で、私はそうでもないから、変な風に考えてしまうだけ。

小学生の兄は、学校でも塾でも優秀だと周りの大人たちが褒めているのをよく聞く。

その一方で、私はというと、ピアノは同じところでいつも間違えて先生にため息をつかれてしまうし、何度聞いても英語の発音が先生の通りにできない。

兄と同じくらいに愛してはもらうには、もっともっと頑張らないといけない。



ずっと、そんなふうに思っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る