第3話🍑加奈の事情
携帯を持てなかったのはアレは
12歳になった日
六月の終わりに近づいた頃の5月28日
「ただいまぁー」
と引き戸を開けると鍋が急に飛んできた
「キャー」
私(加奈)は咄嗟に後ろを向きランドセルで鍋をかわす
慣れとは恐ろしい訓練したかのように咄嗟に体が動いた。
父親は母親の髪の毛をワシ掴みにしてぶり回していた
蹴ったり殴ったり
母の手には負けじとフライパンが握られ母親も フライパンをぶり回す父親とは違い罵ったり罵倒したり
バアアーンとフライパンで顔面を攻撃
父親はブリ巻いた焼酎に滑って
ズッコケていたがノンビリしていたらヤられると思ったのか直ぐ体制を立てなおす
2人はひょっとこ踊りのようにハッホッハッと
お互いの身体を上手いことかわすように逃げながら攻撃をくりかえす。
加奈は慌てて台所に走りキッチン台所マットで包丁をくるみ家を飛び出す。
母親の泣く声と父親の怒声が響き渡るのを加奈は耳を小さな手で塞いで聞きたくないとつぶやいた。
街頭の下で足を抱えてすわる身長150センチ体重25キロあるかないかの加奈には止められない
危険な牙をむくドーベルマンと歯を剥き出しにしたオオカミのようなふたりの取っ組み合い
加奈は夫婦喧嘩にはよく遭遇していたが中々慣れない。
怖くて怖くて身を縮めて時間の過ぎるのを待つしかない
バンと音がして父親がドスドスと家を出ていく、今日の勝負は父親に軍配が上がる
父親が負けた時は前髪がゾロりと抜けおちて
ヅラが横向きになってる
父親はハゲじゃない
母親がバリカンでそぎおとしていたのだろう
前から後ろ右から左
10文字カット
伸びた父親はされるがまま
静かになった家に
恐る恐る入ると母親がキャリーケースに鼻血をすすりながら服を詰め、出ていく用意をしている
母親が負けた時は財布が空
仕返しとばかりに10文字カット見ようじゃサザエさんの髪が十文字にバリカンでかられた感じ、ヅラは父親の頭に乗ってるから
母親はスカーフを被っている
「ママ負けちゃった?」
加奈が小さな声で聞く
「クソ男、ヅラまで持って行ったか?」
母は悔しそうに呟いた。
グシャグシャになった髪と敗れた服、ブツブツ文句を言う母親、部屋には味噌汁が畳をよごし誰かが押し入った様な惨劇、母親の財布が空っぽになって”負けた”
とばかりにころがっている。
父親のポケットは母親か1晩寝ずに体で稼いだ万札が詰め込まれていた
それに
加奈の大事にしていたぬいぐるみさえボロボロになっていた。
酒癖悪さにプラス女癖悪いし、ギャンブルもやる、酒を飲まない時は穏やかな父、しかしコップいっぱいの酒で豹変する父
子ヤギが牙を剥く狼にかわるように
目付きが変わりだんだん顔にちからがみなぎっていく目がギロリと座った頃にはDV親父の出来上がり
酒は悪魔の水だった
母親は気が短くて喧嘩っぱやいそれに気が強い、勿論ケンカも強い
毎日毎日部活のように朝から晩まで父親と殴り合いをしていれば強くもなる。
父親も本気で行かないと怪我するレベルにまで到達してしまった母の根性は凄い
二人はドッコイドッコイな仲
母親は頭に来て
出て行くが何時も2日したら戻って来ていた
そんな現実に慣れていた加奈は「またか」
そう思っていつもの事だとあまり気にしていなかった。
包丁を元に戻し家の片付けを始めた
両親ともその日は帰って来なかった、これも何時もの事
加奈に取っては両親が揃っていないことが安心だった。
いっそ別れて他人になってくれた方がいい
毎回呟く加奈の声はいつの間にか加奈の願いになっていた。
わかれてほしい
離婚している友達の家が羨ましくもあった
味噌汁を吸った畳はボロく解れはじめている
何時も暴れる父親
何時も喧嘩をしかけて愚痴しか言わない母親
そして始まる乱闘
ゴングは父親の投げる一升瓶から始まる
ガシャーン
家の中は酒の匂いと夜の街で働く母のキツイ香水の匂い
ふたつの匂いが混ざって吐き気がしてくる。
よその家から漂う幸せなカレー🍛の匂いがとても羨ましく思えた
友達と遊んでいると1人又1人、父親か母親が迎えに来る、両親と手を繋ぎ帰る友達が不思議だった、何であんなに仲いいの?それに加奈は迎えに来てもらったことは無い
1人暗い家に帰り台所でお湯を沸かす何日か前に炊いてあったカチカチのコメにお湯をそそぎそれを食べる、粗末な晩御飯。
赤カビ青カビがはえていないかよーくみる
危険な食事だが食わないと食う物がない
犬の飯の方が余程栄養があるのがわかる、安心して食べている隣の犬が羨ましくおもえる。
(ーё一)ジー美味しそう
ヤバ💦🐶🏠️
裸電球に照らされた ちゃぶ台はさっきまで一回転していた、
加奈が何とか定置にもどす。
今時まず無いだろう、傷だらけのちゃぶ台に裸電球、その下でヤカンのお湯をご飯に又そそぐ
電気と水道が止まらないようにいのる
だが加奈は決して親の悪口を言わない
あんな親でも加奈には親なのだ、大きくなったらお腹いっぱいご飯を食べる
色んなものを食べる
そんな夢ばかり見て生きていた。
そして2日が過ぎた、両親が帰ってくる
そして又、あの毎日が帰って来るのかと虚しい気持ちが襲ってくる。
しかしこんどは何日過ぎても父親も母親も帰ってこない安心を得た時、同時に不安も襲って来た。
「もしかして捨てられた」
僅かに残った米に水を入れて炊いた
水加減なんて分からない適当に水を入れて火をつける、何とか食べれそうなお粥にホッとする。
学校に行けば給食と言う物がある
なんて素晴らしいシステム、だが金曜日の夜を迎えコツソリ持ち帰ったパンも食べきってしまうと空腹と言う地獄の土日が始まる。
たまらずコンビニに足を向ける、家のあらゆる所を探し回り引き出しの奥から三百円を見つけた時は小躍りしたぐらい嬉しかった
父親のポケットから投げ無しの千円が四角く固まって出て来た
おそらく父親がポイと脱ぎッパの作業着を母親が洗濯して干していたのだろう。
カチンコチンやで、ティッシュのカスまでついている千円札、どんなにくたびれていようが、きたなかろうが加奈にとっては命をつなぐ千円は大事な千円
カチンコチンの千円を大事に開く乾いているから破れないよう
にそうっとそうっと慎重に
取り敢えず1300円あるのに安堵する
お腹も限界に近い。
日曜日の朝、たたんだ布団に残りのお金を隠し2百円を握りしめコンビニに行く
弁当を食いたかったが買えない、次パンコーナーで160円の食パン🍞を見つけた
ジャムパンやメロンパンをチラ見しながら
欲望を振りおとす。泣く泣く食パンに手を伸ばす今の加奈にとっては食パンも有難い
何せ六枚切りだからお腹いっぱいたべれるが
一日2枚食べれば3日しか持たない。
月曜日になれば給食があるそれまでの辛抱だと自分を励ましながらがんばる、月曜日になれば普通のごはんが食べれて牛乳も飲めるそんな事を考えるとうれしくなる。
そんな日々を過ごしていると
「なんか加奈って臭くない」
鼻を摘むクラスメイトそんな心無い一言で、イジメがはじまる、いや加奈の場合仕方ないかもしれないもう1週間も風呂に入って無い確かに臭い。
着替えはかろうじてしているが洗っていない脱ぎ捨てた服を、使い回しそんな加奈に朗報
テレビが明日大雨が降る線状降水帯ってのに用心するように言っていると先生がきをつけるように
帰りの会の時いっていた❗️
朝起きると天気予報通りザザーを越す大雨
加奈は古びたベランダによごれた服を並べる
雨が汚れを叩いて洗濯してくれる。
初潮は迎えたが何回かしが生理も来ない、栄養失調とストレスからか
生理不順になっていた
まあナプキン買うお金もないから
生理は来ない方がいい
祖父が残してくれた家があるだけマシ
父親が売り払う話を母にしていた事がある
本決まりになりあの喧嘩になったのだろう
しかし名義は母親で権利書は母親名義、権利書を母が握って隠していた
売ったら、何処に住むンだと大喧嘩になったのだろう
家を売るのどうの言われた時加奈が屋根裏にまた権利書を隠した、住む所ないなら1番困るのは加奈だ、小学六年で権利書どうのこうのを知ってる子供はあんまり居ないだろう
髪も洗おうと加奈はボディソープを掴むが、カラッポ
シャンプーもそこをついていたから、僅かに残っていた台所洗剤を水で薄めて量を増やし体洗いタオルであわだてるゴシゴシと擦りながら外に出る
全身泡だらけの加奈を雨が洗いながしてくれるシャワーより強い雨で体をすすぐ、水じゃなく雨だから髪は重たい感じが抜けない
贅沢は言ってられない幸い線状降水帯はちがう地域で暴れていた。雨の後は天気になった
二、三日すると服も乾きあんまり臭うことはなくなった
その内電気も止まり水も止まった
そう命を繋ぐライフラインが止まってしまった。
コンビニにいくと新しく入ったアルバイトのお姉さんが加奈に近ずいてきた
「いらっしゃい
お買い物?一人で来たの」
久しぶりに聞いた優しい声音にうなずいてしまう。
もう使いたく無かった千円を遂に使うことになった。給食費さえ払えない、事情を知らない担任は容赦無く厳しいセリフを吐いてくる
「給食費明日もってきなさいね、忘れちゃダメよ」
忘れたと言えば担任の先生は忘れ物の多さを指摘する、縄跳び 赤えんぴつ、ノート、
お金さえあれば忘れない買えないから忘れて無いけど忘れたフリしてその場をのがれる
毎回叱られ注意され、
「ダメな加奈ちゃん忘れん棒な加奈ちゃん」
のレッテルをはられた。
怒られすぎて学校に遂に行けなくなったがお腹ペコペコは我慢できない。
ちゃっかり給食には顔を出す‼️
と
「お前、給食だけくいにくる、やーいやーい食いしん坊」ヒソヒソ話が聞こえて来る
「本当はどこもわるくないじゃん
ズル休みだよぉあんな食べてるしククク」
と笑われそれが辛くて学校の給食にも行けなくなった。
給食費払ってないから給食はたべれない。
当たり前っちゃ当たり前か😭
とうとう覗くだけのコンビニの前で倒れてしまった。
それから警察と児童相談所って所の人が来て両親の事を聞いてきた育児放棄で親が捕まるのが嫌で家出したと嘘を言った、12歳になれば多少は諸事情は分かる、
親に可愛がられた経験もないが、しかし親を見捨てれなかった、
探して欲しくもないからダンマリを決め込む。
どこかで元気でいて欲しい気持ちは本当にあった。
信じてくれたかは分からないが、私は施設に入る事になった。びっくりな話、施設は暖かいお風呂もあるしご飯もたべれるそれも三度三度朝昼晩、
話も聞いて貰えるし学校で必要な物は買ってもらえる、なんて幸せなんだろう。
今までは腐りかけたものはセーフ腐ってるとわかりながら食うときもあった
腹痛は付き物、それは仕方なし 最悪 食えなくて風呂は無いに等しく洗濯なんて出来たらラッキーだった。
そんな子供時代をすごした私が携帯欲しいなんて言える訳がない
チョー贅沢品だ
それに月々の支払いするくらいなら貯金に回したい。
そうそんなとき変な男に絡まれ彼に会った
大学生の時、大学に行けたのは
大学は出なさいと施設を出てからも仲良かった先生が力を貸してくれた
バイトで2年お金を貯めて受験する事を進めてくれた、しっかり頑張ってとった首席は学費免除のご褒美付き
先生も施設育ちで苦労して来たようだった、色々アドバイスしてくれるだから今は卒業して就職出来た、語学の勉強をして通訳になりたかった、英語、中国語 仏語は独学、NH〇の講座の番組を見て録画して何度も見て勉強した。
ゲームもない携帯もない出来ることと言えば勉強くらいだったから
かえって良かったのかも知れない
親は何にもしてくれなかったが人並外れた忍耐力と勉強すればよくなる頭と貧乏で鍛えた人並み外れた体力をさずけて貰えた。
さすが親は親だ
ハングリー精神とゆうやつを叩き込んでくれた。
だから携帯は持っていなかった、
携帯無くてもなんとかなる
死にゃせん
しかし遂にその日が来た
スマホを買った
仕事に必要だと言われ昨日買ったばかり、そうスマホデビューしたのは昨日だ!
しかし携帯が無い訳を今そこまで赤の他人に説明する必要ある?
スマホ持っていなかったくらいで?そんな不思議?
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