第2話🍑再会


それから日々は過ぎ、俺も忙しい日々に追われて加奈との事はすっかり記憶の中から消えていた

入社式も終わって落ち着いてきた頃


「課長、歓迎会出るん?」


社長秘書の絵里香が出席を聞きに来た


「オレのとこ営業部だし、男ばっかだから、どうしようかなぁ飲んで騒ぐだけじゃつまらん」


桜も満開で街がピンクに染まる中、ハナミズキもチラホラ咲き始める四月半ばの新入社員の歓迎会がアチコチで始まる


「今年は営業部と販売部、それに受付の参加ですよ」


「受付?嗄(か)れたおばちゃんばっかじゃん!愚痴聞かされて散々な目に遭わされるしオババ達無駄に酒つぇーし、考えてみてよ!どこの会社行っても受付嬢は可愛い系や綺麗系が座ってるのが普通やろ〜。あんなベテランババアを着飾って座らせておくなんて、ウチぐらい気持ちワリィ」

絵里香は武を怒鳴りつける


「コラッ、そんなこと言っちゃダメよ。親切丁寧がモットーだから、彼女たちは良くやってくれて評判もいいし今年はそのおばちゃんたち、いや違う、ベテランのお姉さんたちが10人揃って定年になって、新しい若い女の子10人が入ってきたのよ。もう文句なしのピッチピッチ」



「え?マジピ、ピッチピッチ❤ってか


う、嘘じゃあるまいなしかもあのおばちゃん達65なんかいー

なのに膝上のスカートはいてたの?

ウワッヤバ」


「ま、まあ、ね

いいじゃん65だって

仕事はすごく真面目だしデモネ

今度は勿論、新卒、新卒膝上スカートも似合うって」


そんな謳い文句に乗せられて、

「よし、出席!」

秘書の絵里香はニヤリと笑ってた。

今年はピッチピッチの謳い文句が効いたせいか出席が例年より多い


「コリャ会場をホテルに変更ね」

絵里香はすぐホテルに交渉する、後輩のボンボンが立ち上げたばかりのホテルだ、安くあげるのも秘書の仕事

使える物は手当り次第使う


「ガイラルディアか外観も中も

なかなかイイ、ホテルね」


後輩が持ってきたパンフを見ながらつぶやいた。


「交渉に行くか!」


絵里香はすぐ武に連絡する




「え?ヤダ俺忙しいんだけど無理」

武は嫌そうな声を出す


「私も行くから武も来てよ

社長連れていく訳にもいかないのよ、それにアンタの部署の歓迎会なんだから」



「は?購買も案内もいるじゃんか、男性もいるだろ」



「は?行くのよアンタが!アンタが行かないとダメなのよ

コレ社長命令よ」


「嘘つけ姉ちゃん命令だろ

昔から俺に頼む時必ず親父の命令ってたよな」



「じゃあボーナスカット

って手もあるのよフフン」



「ハァ~・・・.。oஇ



分かったよ

いけばいいんダロ

ねーちゃんの奢りの飯付きナ‼会社の

経費で落とせねーからな」



「わかった」




坂道を登って行くと道の通りにはまだ色を付け始めたハナミズキが長く並び白ピンクの木々で出迎えてくれた


ホテルの入口から皐月が赤白ピンクグリーンのコントラストで手入れされた四角く綺麗に

整えられた枝から咲き誇っている

春に三日の晴れ間なしの言われ通り石畳は雨をすって

日本庭園が広く伸びてThe日本の春満載だ 外国人が喜びそうな作りと思う。


商談にも使えそう

絵里香は満足げに呟く


ホテルの作りは縦長く下に来るほど丸みを帯び凄く珍しい作りになっている。



「ようこそいらっしゃいませ」


品の良さそうなフロントに

きちんと身なりを整得た男性(推定50くらい)


俺と姉貴はフロントへと足を進める

フロント前に行くと頭を深く下げられた


「いらっしゃいませ」

と微笑む顔をよく見ると・・・

髪をひとねじりしてアップに整得た女性?アレこの子は?

たしかに見覚えがある

えーっと確か確か🤔

「あー⊙ ⊙たしかオマエ加奈ダッケ?」👉

俺は咄嗟に呼んでしまった

ビックリしたフロントの男性は加奈を見る


加奈は一瞬ドギマギしていたが気を取り戻して姿勢をただし「いらっしゃいませ

ご無沙汰いたしております。

その節はお世話になりました」


とご丁寧なご挨拶

どうやら加奈も俺の事を忘れていなかったようだ


「武知り合い?」

絵里香は不機嫌そうに武を振り向き聞いてくる


「うん、ちょっとね」


「あんたねー」

呆れ顔の絵里香は武の悪いくせのナンパで知り合ったと誤解して武を睨んだ


武は女癖が悪く仕事は出来るが頭の痛い行動もする

なんせグループ会社の跡取りだ

金遣いのあらい女や癖の強い女に捕まったら会社存続の危機




「貴方、武とお知り合い?」


凄みのある目を向ける絵里香に

加奈は丁寧に答えた。

「はい、1年前私が大学四年の時、変な男に追いかけられて助けていただきました。御礼に伺うに

連絡先も何も分からなかったので、随分失礼いたしました」。


納得出来ない絵里香は武をチラ見しながら尋問のようにきいてくる

「携帯で連絡先交換はしなかったの?」


「なんだよ、そんなんしてねーよ、誰かれ手当たり次第なんて思うなよアネキ」

加奈も冷ややかな態度で


「私も軽く教えません、それに私あの時、携帯持って無かったので」


それを聞いて驚いたのは武だった。


「あの時警察に電話してたよな?」


「あれはマネです。通りかかった方が本当に警察に通報してくれたみたいです。警察の方から聞きました」


今時の大学生が携帯を持たないなんて異次元かと思うくらい、絵里香もビックリ。今の時代、小学生ですら持っているのに⤴ぃ?



携帯持っていない、それには深い事情があった、人には話せないくらい




「佐藤様お待たせしました、今海が参りました会議室へどうぞこちらです。」

フロントマネージャーの川崎優吾が先を歩き案内する


2時間ほどしてさっきの気の強そうな女性と武が加奈の前にあらわれた

つかつかとヒールの音を響かせてさっきの女性が声をかける


「遅くなったけど

私こうゆうものです」

加奈に名刺を差し出した


「佐藤コーポレーション秘書室佐藤絵里香さん?」

加奈は名刺を見ながら小さく呟いた


「そう、コイツは私の弟の武よ


今度新人歓迎会をここのホールでやるから

よ、ろ、し、く、ね。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る