新生活
「竜太、ちょっと来て」一課への挨拶が終わった後、萬屋が竜太を呼び止めた。
「どうしたんですか?」
「ほら、前に言った魔術のチェックやるよ」
「チェックってどうやるんですか?」
「まぁ来てよ」と萬屋が歩き出した。
「はい。そういえば桃流さんにラン預けちゃったんですけど大丈夫ですかね?」萬屋に続いて竜太も歩き出す。
「大丈夫だよ。あいつ猫愛が凄いから多分、今めちゃめちゃ甘やかしてると思うけど」
「そうなんですね」
廊下を歩くこと30秒、「研究室」と書かれた金属製のドアの前に来た。
「研究室なんてあるんですか?」
「まぁここの主な仕事は鑑識だけどね」と言い萬屋が勢いよくドアを開け、「
その直後、「居るよ。うるせぇなぁ」と言いながらぼさぼさの髪に無精髭が生え、白衣を着た若い男が出てきた。(せっかく綺麗な顔してるのに勿体無いなぁ)と竜太は思った。
「こいつはすz…」
「自己紹介くらい自分でできる!」と秀が萬屋の言葉を遮った。「
「ごめんな。こいつ一応一課の人間なんだけど性格に難があるんだ」と萬屋が手刀を切る。
「大丈夫ですよ。ランよりはマシです」
「聞こえてるぞ、萬屋」と秀が言う。
「じゃあ言われないように努力しろよ」
「うるさい!で、要件は何だ?」
「この竜太の魔術をチェックしてほしいんだよ」
「要件を先に言えよ。忙しいんだから」
「忙しいって言ったってどうせガラクタ作ってるだけだろ」と萬屋が呆れたように言う。
「ガラクタ…?面白ぇ!見せてやるよ!最新作を!」
「お前が主人公ぶっても滑稽なだけだぞ」
秀は萬屋の言葉を無視して部屋の奥に消えた。1分後、秀は大きな謎の機械を抱えて戻ってきた。
「見ろ!これが俺の最新作!『全自動刀研ぎ機』だ!」
「性能は?」と萬屋が訊く。
「ものの3分で刀が研げる優れ物だ!たまに刀をボロボロにしたり折ったりするのが難点だがな!」
「刀折るのかよ。はい、不採用不採用」
「自信作だったのに…」と秀がさっきの威勢は何処に行ったのか、落ち込んでしまった。
竜太が「秀さn…」
「秀さんと呼ぶなヨォ…」と竜太の言葉を遮った。が、依然落ち込んだままだ。
「…じゃあ秀。僕の魔術チェックっていつやるの?」
「…今からやろう」と言って秀がのろのろと歩き出した。萬屋と竜太は後に続く。
「萬屋さん。何で秀ってさん付けされると怒るんですか?」と竜太が小声で訊く。
「あー、多分僕があいつの発明品が不採用になるたびに『さっすがですよ秀さん〜』って言ってたからだと思う」
(あんたのせいだったのか)と竜太は思う。
大きな机の前に着くと秀が立ち止まり、メーターのついた金属の棒のようなものを竜太に渡してきた。
「…それに魔力込めて」
「…?魔力を込めるってどうやるの?」
「俺が説明するよ」と萬屋。「全て意識をその棒に注ぎ込む感じでやってみて」
竜太は言われた通り全ての意識を棒に注ぎ込んだ。するとメーターにMaxと表示された。
「…その棒渡して」と秀が力なく言う。
竜太は秀に棒を渡すと「…帰っていいよ」と秀が言った。
「竜太、帰るぞ」
「はい」
「…後で結果渡すよ」
「分かった」と萬屋が言い、竜太と萬屋は研究室を出て行った。
研究室を出ると萬屋が「じゃあ竜太、荷物の整理もあるだろうし今日は解散しよう。明日は一課に朝8時までに来て。はい、これ竜太の部屋の場所と部屋番号。今日からそこが竜太の家ね」と言って紙と鍵をを渡してきた。紙には地図に加え「303号室」と書かれている。
「また明日お願いします!」と言い竜太は萬屋に手を振り歩き出した。
「あっ、ランは先に桃流と一緒に部屋行ってるってさ」と萬屋が竜太に大声で言う。
竜太は返事の代わりに萬屋の方を振り返り頭を下げ、歩き出した。
地図に書かれたマンションの303号室のドアの前についた竜太は鍵穴にさっき貰った鍵を差し込み回した。カチャリと澄んだ音が響いた。ドアを開けると部屋の中にランと桃流が居た。
「あっお帰り」と桃流とランが声を揃えて言った。「ラン君が良いって言ってたから家具はラン君の指示のもとセットしといたよ」
「ありがとう、桃流」
「じゃ、僕そろそろ帰るよ。僕302号室だから、これからよろしくね〜」と桃流が笑いかけてきた
「うん、よろしく」と竜太も笑った。
桃流が帰ってから、竜太は「さて、荷解き始めるか」とランに言った。
明日から正式に仕事が始まるんだ、と竜太はワクワクしていた。
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