魔術

次の日、竜太が言われた通り8時に出勤すると萬屋が「竜太、秀から連絡あったから研究室行くよ」と言い、研究室に向かって歩き出した。


竜太は「はい!」と答え、萬屋の後についていく。


研究室に着き、ドアを開けると「秀居るかー?」と萬屋が声を張り上げる。


「毎回毎回うるせぇよ」と言いながら秀が出てきた。


(良かった機嫌は直ったみたい)と竜太は安心した。


竜太が「秀さ…」と言った時、ギロりと睨まれた。竜太は「ごめん、あのさ秀、僕の魔術どうだった?」と言い直す。


「あーこれ見て」と秀が一枚の書類を差し出した。


竜太はそれを受け取り中を読んだ。横から萬屋も覗き込んでくる。


「えーと、古住竜太の魔術チェック結果報告書…結果、虹魔法…?虹魔法ってなんですか?」と萬屋に聞くも萬屋は口をぱくぱくとさせて固まっている。


「萬屋…さん?」怪訝に思った竜太が萬屋に再度訊き直す。


「…マジかよ」と萬屋が呟いた。


「そんなに弱い魔法だったんですか?」と不安になった竜太が訊く。


「違う、虹魔法っていうのは…全ての基本魔法が使える魔法だ」と萬屋が答えた。


「それって…」


「チートみたいなもの。魔術ランクSSクラス」と言い捨てるように萬屋が言った。


「…魔術ランクSSクラスの魔術って他に何があるんですか?」


「知らん。今俺が勝手に作り上げた」


「取り敢えず、強いってことでいいんですか?」


「そうだよ。萬屋の魔術の完全上位互換」と秀が口を挟む。


「まぁ竜太に負ける日は来ないだろうけどな」と萬屋が嘯く。


「じゃ、僕は研究がしたいからそろそろ帰って」


「分かった」と萬屋が答え、竜太と萬屋は研究室を後にした。


一課に戻ると桃流が竜太に「竜太、魔術どうだった?」と訊いて来た


「虹魔法だって言われた」と竜太が返すと


「マジ!?」とハーブが声を上げた。


「マジです」


「いいなぁ、強い魔法で」


「ハーブさんは何魔法なんですか?」


「ハーブってあだ名にさん付けするのも変だからタメでいいよ。僕の魔術は変身魔法」と言いながらハーブが竜太に変身した。「声まで変えられないのがネックなんだけどそこは僕の喉でカバーしてるよ」


「へぇ〜、スパイとか得意そう」


「実際、僕は戦闘能力低めだからよく潜入任務に当てられることが多いかな」と言いながらハーブは変身を解除した。


「そうなんだ」


「竜太ちょっと来て」と自分の席に座っていた萬屋が声を掛けてきた。


「なんですか?」と言いながら萬屋の席の前に行く。


「竜太ってどのぐらい運動できる?」


「じいちゃんに剣道とか空手とか叩き込まれましたからまぁまぁ出来ますよ」


「まぁ真斗だしそんぐらいはするか。安心したよ。」


「何の確認だったんですか?」


「モンスターと戦闘もしたりするから身体能力はないとね。だから確認しただけ」


「そうだったんですか」


「あと、今日の君の仕事についてだが」と萬屋が切り出す。「モンスター討伐をして欲しい。竜太、君の初任務だ」

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