面接
「どのくらいかかりますか?」と竜太が後部座席から運転席の萬屋に声をかけた。
「ん〜、ざっと5、6時間くらいかな」
「長いよ〜… おい萬屋!この車なんで40km/hしか出てないんだよ!180km/hまで出せるんだからチキらず130km/hくらいまで出せよ!」とランが野次をとばす。
「130km/hも出したら法定速度オーバーな以前に曲がりきれずに崖から転落して死ぬわ!ここ山道だぞ!」
また言い争いが始まりそうな雰囲気だ。この車内という密閉された空間でそんなことされては敵わないと思い
「ラン、少し黙ってよっか」と竜太がランを嗜めた。
「お、ナイス竜太」
「どういたしまして。てか萬屋さんのことってこれからなんて呼べばいいですか?萬屋さん?真さん?萬屋課長?」
「萬屋のままでいいよ。みんなからもそう言われてるからさ」
「分かりました」
そこから暫く車内は静寂に包まれた。
少し息苦しさを感じた竜太が「そういえば魔法って一体なんなんですか?」とずっと気になっていた疑問を萬屋に聞く。
「あー確かにまだ説明してなかったね。少し長くなるけど、いい?」
「大丈夫です」
「おっけ。じゃ、最初は魔術から話すよ。魔術っていうのは一般的には生まれた時から魂に刻まれているもののこと。で、魔術は魔力を流しこむことで使えるようになるんだ。基本的には魔術は一人一個。まぁたまに2つとか持ってるやつもいるけどね。ちなみに俺は炎と雷の魔術を持っている」
そう言いながら萬屋は左手をハンドルから放し、手のひらから小さな火の玉を出した。
「今俺は炎の魔術に自分の魔力を流し込んで炎を出してる状態。魔法警察入ったら竜太にも魔術を使えるようになってもらうよ。」
そう言って萬屋は左手をハンドルに戻した。
「で、魔術には大まかに分けて2種類ある。一つ目は基本魔術。基本魔術は扱いやすくシンプルに強い。その代わり対策方法が知れ渡っているから対策されやすいよ。例を挙げると、炎、水、草、風、雷、氷、毒とかかな。もう一つは特殊魔術。特殊魔術は扱いに癖があるから慣れるのが大変。その代わり対策方法が少ないから刺さる時はマジで強い。例を挙げると、テレポート、斬撃、封印とかかな。で竜太の魔術を知りたかったからあの時竜太をわざと怒らせて魔法使わせようとしたんだけど竜太が思いの外、頭が回るやつだったから確認できなかったんだよね〜」
「…なんかスミマセン」
「いいよ別に。でも魔法部入るんだったら魔術の登録いるから今度確かめないと」
「…分かりました」
「目的地までまだまだあるから別に気にせず寝ていいよ」
「分かりました。ありがとうございます。」程なくして竜太は眠り始めた。
なぜか頰が少し痛い。軽く叩かれているのだろう、たぶん。でもまだ眠いからもう少し寝ていたい。そう思った時耳元で若い男の「おーい起きろ〜」という声が聞こえた気がする。
うるさいなぁ、と思いながら竜太は薄目を開けた。目の前にいたのは萬屋だった。
萬屋の「やっと起きたか」という呆れたような声に竜太は慌てて起き上がり「…スミマセン」
「まぁいいよ。ともかく、着いたよ。荷物は取り敢えず車の中置いたままでいいよ。」
竜太はランを抱えて車を出た。ランはまだ寝ている。そこはコンクリートで出来た薄暗い空間だった。車が沢山置いてある。
「ここは…」
「国際魔法警察日本支部の地下駐車場」
「駐車場!?ここが!?」
「いやデパートの地下駐車場と大差ないだろ」
「いや駐車場って言ったら地面が砂利でロープで仕切られてて雑草が周りに生えてる所じゃないんですか!?」
「…もしかして街来たの初めて?」
「はい。恥ずかしながらあの村から碌に出たことなかったので…」
(まあ真斗のことだから有り得るか)と萬屋は思い
「まあ取り敢えず面接行くよ」と言った。
面接の行われるという応接室に向かいながら「面接って誰とやるんですか」と竜太が訊いた。
「国際魔法警察日本支部長
「へぇ…。てかなんで青木さんにはさん付けするのに三井さんは呼び捨てなんですか?」
「一応友達みたいなもんだからだよ」
「そうなんですか〜」
そんな話をしているうちに竜太達は応接室についた。
「準備はいいか」と萬屋が訊く。
「ばっちりです」と返す。
「じゃあ、いくぞ」と言い萬屋は「応接室」と書かれた重厚感のある木製の西洋風のドアをノックした。
コンコン、という澄んだ木の音がした。数瞬後「どうぞ」と声がした。若い男の声だが萬屋より少し低い、耳馴染みの良い声だった。
部屋に入ると黒い髪のショートカットで整った顔立ちをした翠眼の若い男が革製のソファに座っていた。
「どうぞ座って」と若い男が笑いかけてきた。
竜太達が腰掛けると「国際魔法警察日本支部長補佐の三井晃だ」と言い名刺を差し出してきた。竜太はそれを受け取り「古住竜太です。宜しくお願いします」
「よろしく」と三井が笑いかける。
「お前…いつもとキャラ違うな…」と三井の方を見て萬屋が言う。
「…」三井は喋らない
「えっ、そうなんですか!?」と竜太。
「そうだよ、いつもはもっと怠けててうざいから」と萬屋が笑いながら答える。
「…竜太君だったかな。出て行ってくれ」と苛々したのを押し殺したかのような声で三井は言った。
「えっ!?面接は…?」
「合格でいい。仮に何かあったらコイツの責任にするから」といって萬屋を指差した。
「…じゃあ失礼します」
「あっ、廊下で待っててくれない?」と萬屋。
「分かりました」
竜太が一向に起きないランを抱えて応接室を出た直後、部屋の中から三井の大声が聞こえてきた。
「おい萬屋!最近ベローチェとか色々なやつが僕のこと舐め始めてるから新入りには尊敬されようと思っていい顔してたのが台無しじゃねぇか!どうしてくれるんだ!あの新入りまで俺を舐め始めたら!」
「そんな性格してるから尊敬されずに舐められるんだよ」
「…お前今月減給な」
「青樹さんに言うけどいい?」
「…今のは失言だ。青樹には言わないでくれ。あの人の説教長いから」
「分かったよ。じゃあな〜」
「…早く出てけ」
萬屋が出てきた。
「大丈夫なんですか?」と竜太が訊く。
「大丈夫大丈夫。魔術の登録は今週中にやるよ」
「分かりました」
「まあそんなことより」と萬屋が笑う「ようこそ、国際魔法警察に」
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