第3話 トーキック中級
ブンブン、ハロ~! 皆大好き、トーキックおじさんだよ。
え、寒い?
いや、ここサウジだし寒いわけないだろ。何言ってんの?
イテっ!
そうやってポコポコ人の頭を叩くなって!
はいはい、他人のネタが寒いんだろ……分かってるっての。
あれ、前回はどこまで話をしたんだっけ?
ああ、中学校のサッカー部が廃部寸前で卒業しちゃったってところね。
そんじゃ、次は高校の時の話かな。
ってもまあ、高校時代も中学の頃とほぼ変わらんけどね。
俺が進学したのは、そこそこスポーツに力を入れてる私立校だな。
は? 俺の中学時代の成績で、スポーツ推薦なんか貰えるわけないじゃん。普通に一般入試を受けたんだって。
中学時代、試合で悔しい思いをした俺だったけど高校じゃ違うんだって思ってたんだよ。
高校入学時には、サッカーってものを少しずつ理解し始めたって思ってたんだ。
だが、俺はベンチにすら入れなかったんだ。
高校のサッカー部は、私立って事もあって近隣の県からそこそこサッカーがうまいヤツを呼び寄せていたんだ。
始めてそいつらのプレーを観た時は驚いたね。
外から動きを観てたんだけど、何一つプレーの意図ってやつを理解出来なかったんだよ。
やっぱり試合勘の無さがここでも響いてくるのかって、相当悔しかった。
俺はその高校の二軍の、ベンチメンバー……のさらに補欠ってところだったな。
ありゃ、さすがにスパイクを投げたくなったよ。俺の今までの努力が全部消えちまった感覚に陥ったんだ。
その後必死に頑張って、二軍の交代要員くらいまで序列は上がったよ。
かなり灰色まっしぐらな三年間だったけど、良かったと感じるのは試合勘を培う事が出来た事と、故障する事なく三年駆け抜けた事かな?
俺達が三年の時の県の選手権じゃ、トーナメント三回戦敗退だったしこの時さすがにサッカーを止めようと心が揺れ動いたな。
だけど、俺はとびっきりの馬鹿だったんだよな。気付いたら、サッカー部のグラウンドでシュート練をしてたんだよ。
あの時は、久々にトーキックでシュートを打ってみたい、って思ってただけだったんだ。アピールとかじゃないよ。第一、引退した三年が何をアピールするってんだよ。
まあでも、この行動が俺の後々に繋がったんだよな。そういう意味じゃ、結果的にアピールしていたとも言える、か?
その当時、別の選手を呼ぼうと大学のスカウトが視察しに来てたらしいんだよ。
そんで、たまたま弾丸シュートを打ってる俺にそのスカウトが興味を示したってわけ。
言っちゃえば、俺の母校になる大学は攻撃力が不足してたんだ。
そんなスカウトの前に現れたのが、トーキックだけどバシバシとヤケクソ気味にシュートをネットに突き刺す俺だったってわけ。
そっからはとんとん拍子の話が進んで、俺はまたしても一般入試でその大学へ入学する事になった。
は? スポーツ推薦なんかもらえるわ――以下略。
こうして、俺の高校三年は大した成績もなく終わって、俺の運命を大きく変えた四年間の大学生活が始まったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます