第11話 やっぱり可愛いものに弱いのです

 あれからガイアスと共同研究のレポートを作り、ガイアス用の魔宝石……と呼ぶことにした内部流動インク内蔵魔石について耐用試験もしてみた。

 百発撃っても壊れなかったが、石によって強度差があるらしいこともわかった。なので、ブレスレットにして複数をつけ、負担を分割して耐久力をあげてみたり。


 これから問題点や改善点を考えようとなった。そして忘れてた課題と戦い眠ったのだが。






「………おや?」


 ベッドに知らない男がいた。


「うぎゃー!!であえであえ不審者ー!!!」


 とりあえずクッションを投げまくり大声を出しつつ魔法で攻撃!


「落ち着け、ご主人様。なんの用?とーちゃん」


「……………とーちゃん?」


 私の肩にいつの間にかいた子猫は、目の前のイケメンをとーちゃんと言った。


「ふふ、元気そうだね、イフリート。はじめまして。イフリートの父ちゃんこと、光の神です」


「あ、ご丁寧にどうも……?」


 神????イフリートの父ちゃん???イフリート神なの???


「で、どーしたの?我の様子を見に来たってわけでもなさそうね」


「それがさぁ、最近レテの川から記憶を盗んだり、私の祝福をどうやってか勝手に与えてるバカがいるみたいで、とりあえず仕方ないから地道に記憶を回収してるの」

「や、やめて!今それを取られるわけにはいかないの!イフリート!」


 慌てて神とやらから距離をとる。イフリートも庇うように私の前に出た。


「う〜ん、イフリートと契約してるから、本気で抵抗されたら厄介だな……」


 どうしようどうしよう……これから起きることがわからなくなるのは困る。いずれなくなるとわかってはいたけど、今は無理!考えろ……何か取引できることはない?!


「か、代わりに働きます!」


「うん?」


「記憶をもうしばらく使わせてもらう代わりに、私が黒の教団を探って、犯人を倒します!」


 そもそも私の最終目的はそれだ。そういう意味では神に協力できるのではないだろうか。それに、私のほうが自由に動ける。


「……ふむ。それはいいね。では、君を勇者にしよう」


「…………は?」


「うん、それがいい。私の代わりに働くってことだし、聖武器の契約者だものね。私直属の勇者は久しぶりだなぁ。連絡役として使徒をつけてあげようね。おいで、ポッポちゃん」


「くるっぽー」


 現れたのは目が覚めるほどに美しい真っ赤なサラサラロングヘアと宝石のような赤色の瞳を持った白い鳩マスク全身タイツの変態。明らかに両立できないものを持ってくるんじゃないわ!キモいんじゃーーー!!


「チェンジ!!!」


「ご主人様、ポッポは便利だぞ?」

「チェンジ」


「いや、とても有能な」

「チェンジ」


「私」

「チェンジ」


「勇者様」

「焼き鳥にすんぞ」


 とりあえず近寄るなキモイ。炎を出して近寄れないようにした。


「怖。フレアの末裔は過激だなぁ。でも懐かしいや。フレアも最初は全力でそうやって嫌がってたっけ……」


「そーいやそうね……仕方ねぇなぁ……」


「私は常に勇者様の理想の姿をリサーチしてから来ているのですが……」

「絶対NО!!!変態鳩マスクなんてやだきらいあっちいけ〜〜〜〜!!変態嫌い!!ヤダヤダ!!」


 私の好みは変態鳩マスクじゃないもん!そりゃ綺麗な赤毛は嫌いじゃないけど!羨ましいし好きだけど、鳩マスクと全身タイツでマイナスだっつーの!!


 イフリートが男性姿になりポッポちゃんに耳打ち………鳥の耳ってどこ……?


「勇者様……これならどうですか?」


 それは雪の妖精シマエナガたん……ではなく、そっくりだが色違いのころんとまぁるい小鳥さん。部分的に黒いが、ベースカラーは炎のような鮮やかな赤色。つぶらな瞳も赤色の宝石みたい。 





 つまり、きゃわいい。






 中身が変態赤毛ハトマスクとわかっていても悶えるレベルの愛らしさ。それがちょこんと私の手に乗り首をかしげる。あざときゃわゆい。優勝!!


「勇者サマ、よろしくおねがいしますね?」


「……………………こちらこそ………」







 私は負けた。完全敗北である。







 可愛いものには勝てない。中身が変態鳩マスクであったとしても可愛いならしかたない。


「さて、勇者が納得したところで、今の君には荷が重いだろうから、聖武器……は持ってるから、それがいいかな」


「それ?」


 神が指さしたのは私のブレスレット。


「便利な機能をつけて、容量を拡張してあげるね」


「え」


「やだなあ、礼なんていらないよ。そうだ、イフリートも散歩したいだろうからそこに住めるようにしてあげようね」


「ちょ、ま」

「大丈夫、大丈夫。色々とオマケつけとくから、後でポッポちゃんに聞いていてね」




「だから待ってっていってるじゃない!!!」


「ひぇ?!」


「……………え」


 床に転げるアリス。え、現実?ブレスレットを確認すると、なんか時計サイズだった宝石が一回り小さくなり、虹の粒が入っている。


「おはようございます、勇者様」


 そして私を見上げる可愛い小鳥さん。


「きゃ〜、可愛い!」


「……アリス、その小鳥さんによく似合う鳥かごを用意して」


「くるっぽ〜?」


「は〜い!ただいま!お持ちしますね!!」




 アリスがいなくなったのを見計らって、ブレスレットに話しかけた。


「イフリート、いる?」


「おう!新しい家、いい感じだぞ!これでご主人様と出かけられるな!」


「…………ソウダネ……」


 ガイアスと作ったブレスレットの聖武器化。

 イフリートの中身がブレスレットにお引越し。

 勇者になっちゃった。



 誰にも言えない秘密が一気に増えたんだが?!非力な貴族の小娘にどうしろと?!私は朝から頭を抱えるのだった。


 追伸。ポッポちゃんにはピンクのフリルもりもりな鳥かごが用意され、遠い目をしていたので面白かったです。ついでなのでピンクのリボンも付けてあげました。

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