第10話 可愛いものに弱いです

 予想外に黒の教団とか変わってしまった私。自分でやるにはリスク高すぎなので、情報収集はとてつもなく不安だがアリスに任せた。


「ご主人様〜」


 今は力を蓄え、さらに情報を得るべきだろう。シャドウムーブがあるとはい、子供が情報収集は難しいわよねぇ。


「ご主人様ご主人様ご主人様〜〜」


「はいはい、何かしら?」


「ヒマ」


「……そうなのね」


 私はまったく暇じゃない。ガイアスのアドバイスにより行儀作法なんかの講師は他領地から招き、遅れを取り戻すために猛勉強している。

 アース公爵領の人達が大変丁寧に教えてくれるので助かっている。ただしかなりのスパルタなので宿題がエグくて終わらない。イフリートと遊んでやりたいが純粋に時間がないのだ。


「かまってくれよう……。あ、これならどうだ!」


 イフリートが……………炎の毛並みのにゃんこに!!そして私の足に擦り寄る。


「くっ…………!」


 私の負け。完全敗北である。課題があるが可愛さには勝てない………!なんでか知らないけど、こういう可愛い生き物に怯えられるんだもの!撫でたくても逃げられるんだものおおおお!!


「ふっふっふ……勇者フレアも我の可愛さに屈服していた。フレア公爵家の人間は、可愛いものに弱いのだ!!」


 否定できない。どやってる子猫かーわーいーいー。


「いや、何してるのホント」


 本日の講師であるガイアスがドン引きしていた。


「だってイフリートが可愛いんだもの!」


「それイフリートなの?!」


「うむ、我だ。我はすごいんだぜぇ。普段はヒトの男の姿だが、女にもなれるし凛々しい獅子にもなれるからな!」


「今のその姿は……?」


「愛らしい獅子!」


 子にゃんこにしか見えないが、可愛いからヨシ!!


「ふっふっふ……我は知っているぞ」


「な、なんだよ……」


「オマエ!我みたいな可愛い生き物が好きだろぉ。我は知ってるぜぇ。一昨日も屋敷の裏手で猫に」

「わーわーわーわーわーーーーーー!!!」


 ガイアスが大慌てしている。


「猫に?」

「遮ってるのに確認するなよ!!」


「にゃわいいでしゅね〜、肉球ぷにぷに〜」

「うぎゃ〜〜〜〜〜〜〜!!!!?言うな!!」


「マジで?やだ、アンタ猫好きなの?」


「えううううううううう……」



 意外だ。否定しないので本当なのだろう。ガイアスが面白すぎるがうらやましい。猫を手なずけてたってことよね。羨ましい………。


「ガイアスはご主人様も好きだと思うぞ、可愛いから。フレアの家系は小さくて可愛いものなら何でも大好きだ」

「そんなわけないだろ!!!」

「それはないわよ」


「え〜、なんで?」


「私、可愛げないもの」


 だから皆から大変嫌われてる。


「可愛いだろ。ご主人様の父ちゃん、ご主人様大好きじゃん。我から見てもご主人様は可愛いぞ」


「いや、今現在ぶっちぎりで可愛いイフリートに言われてもなぁ……」


 イフリート、ふわふわでおひさまの臭いがする。一生吸っていたい……。ここんとこある意味事件続きで疲れた身体に染みるわぁ。


「なぁなぁ、ガイアス。ガイアスも我のご主人様、めっちゃ可愛いと思うよな?」


「………………………可愛いと思わなくもない気がしなくもないような気がしている」


「どっちよ」


「これは可愛いと思ってるが素直になれない……シシュンキってやつだな!我は賢いから知ってるぞぉ!」

「よ〜しよし……イフリートはかわいいなぁ……?」


 ガイアスがイフリートを撫でたが目が笑ってなかった。うっかり人を丸焼きにしそうな目だった。まあ、イフリートは丸焼きにしても大丈夫だろうけど。


「怖」

「悪かったよぉ………」


 すっかりイフリートがガイアスにびびってしまわれた。とりあえずよしよしする。


「ほらこれ」


「おう?」


 ガイアスが見覚えのある石を手渡した。内部に黒い球体が入っている。


「それをつけて魔力を注ぐと望んだ文字になる。ものすご〜く苦労したけど、市販化は無理だな。一定以上……僕か君レベルの魔力とコントロール力がないと無理。あと、コストがかかりすぎる」


「………それでもすごいのでは?使ってみた〜い!」


「もちろんどうぞ。訓練場の的でも使うか」



 訓練場に移動する。ここは魔法で保護されており、魔法をガンガン撃っても壊れないのだ。


 手のひらの石を撫でる。魔力に反応して内部のインクが蠢く。


 文字は『小炎』『連続』


「リトル・フレア!!」


 声に応じて発動された魔法…………数が思ってたより多い!!え、あ、でもずっとふよふよさせとくわけにもいかないし!


「いっけー!」


 全弾的に当てたが…………。


「的………」


「壊れたな……」


「床………」


「壊れたな…………」


「威力……」


「おかしいな………?いや、君の魔力がバカ強いせいでは?以前より格段に強くなってないか?!」


 自分ではよくわからん。


「そりゃ、常に我を実体化させてるからだわ。常に魔法の修行してるようなモンよ?ご主人様、歴代の中でも魔力量がバカ多いから何ともないけど、普通の魔法使いだと1時間が限度かな。ガイアスなら……5時間ぐらい?」


「え、イフリートの持ち主が魔力強くなる理由ってそれ……?」


 まさかの全自動修行?


「まあ、それもあるな!それにしても、いいな〜その石!もっと大きければ我、入れそう!」


「「……………」」


 目線で『作らないよ?』とガイアスが言っていたので私も無言で頷いた。

 国宝でもある聖武器の中身を入れて持ち歩くとか恐ろしい。絶対やらないからな!と心に誓った。


 出来上がったものについては連名で研究レポートを作成し特許取得することとした。公爵レベルの魔力を持つ人間は、絶対欲しいだろうしね。

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