第5話 協力者をゲットです
フレイム公爵家にある聖炎イフリート・フレア。それは直系血族しか開けない扉の奥にある。
冷たい扉に触れると少しだけ魔力が吸われる感覚があり、ロックが解除された。
その部屋に忍び込んだ私。
部屋の中央に祭壇のようなものがあり、そこに古びた本が1冊置かれていた。その本こそ、フレア公爵家の聖炎、イフリート・フレア。
見た目はただの魔法書だが、聖武器は自ら主を選ぶという。まだ早いかもしれないが、手っ取り早く力が欲しいのなら聖武器を得るのが一番の近道だろう。
ゲームではそんな話はなく、血統により装備できるものだったから、私ならば問題ない、はず!
そっと触れると炎が噴き出した。
「!?」
「お客さん?こりゃまたちっちぇえなぁ」
「お前は………誰?」
見たことがない、人間かも怪しい存在。真紅の燃える炎のような髪………いや、燃えてる?それに赤い肌と赤い瞳。本の上にそれは浮かんでいた。
「イフリート。炎の精霊イフリート。長かったらいっちゃんでもいいぞ〜」
「……………イフリートと呼ぶわ。お前がイフリート・フレアということ?」
「そうそう」
「では、私の物になりなさい!」
「え、ヤダ」
「「………………」」
まさかの、秒で断られた。やっぱり髪色?髪色のせい??それとも性格?!
「そ、そりゃあ私は性格悪いし、髪も目も桃色でフレア公爵家直系と思えないような色だわ。フレア公爵としてふさわしくないかもしれないでも、それでもアンタが必要なのよ!イヤだと言うならどうすればいいわけ?!どんな条件だろうとクリアしてみせるわ!!」
「いいねぇ。じゃあ、部屋の入り口まで下がって」
「ええ」
そして、一気に部屋が炎に包まれた。熱い。呼吸すらままならない高温。触れてないのにその熱で焼けてしまいそう。
「ここまで自力でおいで。そうしたら考えてあげなくもない」
「……わかったわ」
先生から風魔法メインで習っておいてよかった。
「リトル・ウインド」
複数の空気の層で熱を遮断する。無いよりずっとマシ、ぐらい。さらにフレア家の人間は炎に強い。だから、私なら行ける。念の為ポケットに隠し持っててよかったわ。書き損じで作ったページ片。まだ余裕があるから何とかなるはず。
一歩進むだけでスリッパの底が溶け、熱が伝わる。さすがに足は想定外……!
「うあっ?!」
熱い。痛い。涙がこぼれて蒸発する。この炎の中で飛ぶのは無理。炎のせいで通常より気流が乱れているから……歩くしかない。
「おいおい、マジ?お前さん、貴族のお嬢様だろ?傷なんてできたらまずいのでは?」
「フレア公爵家は炎の家系……火傷の1つや2つでグダグタいう輩はお断りよ!ゲホッ」
「へぇ……」
気力だけで歩く。足の裏の激痛も無視。呼吸の維持にひたすら全力を注ぐ。肺が焼けたら流石に進めない。今はただ、イフリートを得ることだけ考えろ。歩け、進め。足を止めるな……!
ほんの少しの距離が、なんて遠いの……。いや、この程度ができなくては世界なんて救えない……!
私は、負けない!!
「はぁ、は……くそ……!」
足が焦げようが爛れようが構わない。こいつを得ることができなければ、世界を救うなんて夢のまた夢!
「なあ」
「何よ!」
「なんでそんなに耐える?」
やかましいと思いつつ、痛みから気をそらせるのはありがたくもある。
「アンタには本当の主がいる。いつかそいつに返すけど、今は私が!あんたを必要としているのよ!」
あと、少し、後数歩!!
「へえ……」
「うああ?!」
ついに足が焼けただれ、使い物にならない。それでも後少しだと這いずって必死に手を伸ばす。
もう風魔法の維持も怪しい。肺が焼ける。呼吸すらままならない。
あと少し……あと少しなのに!!!!
「うんうん、決〜めた。ハイこれ」
「…………はぁ?」
イフリートがスタスタ歩いて本を手に取り私に渡してきた………だと?
それと同時に炎が消え………身体も治ってる???
「ふへぇ??」
「いやいや、いくらなんでも子供を丸焼きにしたりしねぇわぁ。今のは精神世界での出来事だったのね。ご主人様をこんがり焼いたら、お外に連れてってもらえないでしょ」
「んえ?」
精神世界??
「まあ、精神世界でも死んじゃえば心が壊れることはあるから、子供に触らせないようにしてるみたいだけどよ?これからよろしくな、ご主人様」
「!!よ、よろしく!アンタはこれから、私の協力者になるのよ!」
「うんうん。協力ね?もちもち、するする〜」
軽いけど大丈夫かしら?いやあ、足が焦げ焦げじゃなくてよかった………。必死過ぎて引くこととか考えなかったけどすごくやばかったのでは……?
「あ、あれ……?」
今頃になって体が震える。怖かった。ガクガクと震えが止まらない。息がうまくできない。涙がボロボロ溢れこぼれる。
「ご主人様?!え??何どーした?!おい?!」
「ルビー?!」
「パパ、様……?」
どうして、ここに?精神的に限界だったのだろう。そこで私の意識はぷつりと途切れ、落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます