第四話 能力付与台

 私たちは、あの大きな宮殿に戻ることを決意しました。そう、私が召喚されたあの場所です。そしてしばらくして、ようやくその建物の中に足を踏み入れることができました。


「すみません、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」


少し緊張しながら、あの私達を召喚したあの三人組に私は声をかけることにしました。


「どうかしましたか?」


 フードを被ったあの三人組の一人が、優しい声で応じてくれました。


「能力付与台を使わせていただけますか?」


私の言葉に、彼女たちは頷きます。


「どうぞ……お乗りください……」

「わ、分かりました!」


 彼女達の言葉に促され、心の高鳴りを感じながら台の上に立ちました。さらに指示が続きます。


「では、この水晶に片手を当ててください……どちらの手でもよろしいですよ」


 私は右手で、恐る恐る水晶に触れました。その瞬間、水晶は白く光り輝き、まるで生命を宿しているかのようでした。私の目の前には、私の世界では見たこともない文字が浮かび上がります。


「なにこれ!」


**能力付与完了**


**初級魔法強化**

初級魔法の攻撃力アップ


**詠唱時間ダウン**

−100%


 その後、視界の上部に謎の二つのバーが横並びで現れました。驚きと興奮が入り混じる中、さっと隣にいるゆづきさんに目を向けます。


「ゆづきさんも見えますか……これ!」

「見えないけど、もしかして僕と同じかな? 緑色のバーと青いバー見える? クレシアさん」

「はい……青いバーと、緑のバー……見えますよ」


私はゆづきさんの言葉に耳を傾けましま。


「それは青い方がMPバーで、緑の方がHPバーだよ」

「HPバーは敵の攻撃で減少するもので、それがゼロになると……死んじゃうよ」


「MP……バー……は、なんですか?」

「MPは魔力量を数値化したものだよ! まるでゲームみたいだけど……」

「この能力付与台って凄いですね……」

「うん! 凄いものだよ。 僕、これで剣士になれたし」

「召喚されたときに能力付与台に乗ったんですね……ゆづきさんも……」

「うん、そうだよ!」


「ありがとうございました……」

「どういたしまして……それでは、魔王討伐のために引き続き冒険を楽しんでください……さようなら」

「さようなら! 皆さん……では!」


 私とゆづきさんは、三人組の方々に見送られます。

能力を手に入れた私は、自信を取り戻し、これからの冒険に向けて力強く歩み出そうとしました。あせるように三人組の一人がこちらに焦るようにやって来ました。


「この杖をお使いください……杖が無いと、魔法が使えませんので」


 一本の小さな魔法の杖を私に渡しました。それは白い木で出来たおしゃれな杖でした。


「あ……ありがとうございます……」

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