第一話 異世界召喚……

 私は、12歳にして「最強の魔導書使い」と称される天才少女、クレシアです。白い肌に漆黒の髪、白く輝く宝石のような瞳を持つ私の姿は、まさに異彩を放っています。人々は私を「白の魔導書使い」と呼んでいます。


 そんなある日、空を舞い誕生祭に行く道中に突然、飛行魔法が強制解除されてしまいました。気がつくと、私は地面に向かって急降下していました。


「きゃあぁああ!」


 大地との衝突まで、10メートルほどの距離でしょうか。名誉ある最強の魔導書使いなのでこのくらいでは傷一つ付きません。


「痛っ! なんで落ちたのかな……まあ、いっか」


 周囲を見渡すと、私は大きな宮殿の中にいました。床には魔法陣のような模様が描かれ、まるで異次元に迷い込んだかのようです。


(もしかして……新たな敵が仕掛けた罠、だったりして)


 その時、フードを被った怪しい三人組がこちらに近づいてきました。彼らの顔はフードに隠されており、女性であることは分かっても、その表情を読み取ることはできません。


「誰ですか……あなた達!?」


私は魔導書を構え、警戒を強めました。


「我々は争う気などありません……我々は」


 その言葉を遮るように、魔法陣が突然光り始めました。すると、一人の青年が現れます。どうやら召喚用の魔法陣だったようです。


「なんだよ……お前ら、異世界召喚系か?」


 その青年の後から、次々とさまざまな人々が召喚されていきます。貴族、一般人、剣士、勇者、魔族、魔法使い……その顔ぶれは多彩で、混乱が広がります。


「我々は、魔王を討伐してもらうためにあなた方を召喚いたしました。」


周囲からは不安の声が上がります。


「俺!能力ないただの高校生なんです!」

「俺も!俺もだぞ!」

「能力が無い方々はこちらの能力付与台にお乗りください。」

「乗ろう!乗ろう!」


 私はその能力付与台には乗りませんでした。なぜなら、私にはこの魔導書があるからです。最強の魔導書使いである私には、他の力など必要ありません。


 一方、二人組の黒髪の勇者たちは静かに立ち上がり、外へ向かいました。


「いいよ……いいよ、俺たちは」


 彼らの言葉を背に、私も外へ向かうことにしました。宮殿の外に出ると、そこは緑豊かな森でした。ふと、目の前にゴブリンが現れました。


「私が倒して差し上げますよ」

「女の子は戦えないだろ……応援でもしてろ。あと、女の子は酷い目にあうんだぞ」

「それもそれで良いのでは……兄さん!」

「私は最強の魔導書使いです! 私、戦えますよ!」

「じゃあ……やってみろよ!」


 その瞬間、私の心の奥底に宿る力が目を覚ましました。魔導書を開き、運命を切り拓く準備が整ったのです。さあ、私の冒険が始まります。

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