第8話 ドワーフのための家づくり

 「何じゃと、お前さんが儂らの家を建ててくれるじゃと?」

 ドワーフたちを訪ねて、生産スキルで家を建てるのでこの土地に住まないかと提案したら、驚かれた。

 「ものづくりは儂らも得意じゃが、そんなに急には家を建てられん。人族の子であるお前さんにそんなことができるとは、悪いが信じられん。」

 まあ急には信じられないよね。

 では論より証拠だ。彼らを街はずれに連れて行って、家を建てることにした。

 「ウィリアムさんならきっと出来ますよ。」

 エリカ先生の励ましが嬉しい。

 まずは収納魔法で持ってきた木材と石材を取り出すと、ドワーフたちは驚いた。

 「うお、凄い収納魔法じゃのう。こんなにたくさん入るんか?」

 うん、つかみはOKだね。

 そしてログハウスをイメージして集中する。

 前世ではログハウスの別荘もいいなと思っていた。もちろんお金がなくて縁は無かったけれど、ネットでよく見ていたから、記憶はしっかりある。

 さすがに椅子や鞄と違って、長い時間集中する必要がある。

 しばらくして大きな暖かい光が消えると、そこには平屋のログハウスが現れた。

 「おお、こんな短い時間で家が建った!」

 「まだ子どもなのに、凄い才能じゃな。」

 ドワーフたちはどよめいた。

 ドアを開けて中を案内する。

 寝室とトイレと洗面所があり、リビングとキッチンは一体となったリビングダイニングになっている。

 そしてリビングの真ん中には石造りの暖炉と煙突がある。。

 「あったかそうな家じゃ。」

 「疑って済まんかったのう。ぜひ儂らの家をお願いしたい。」

 ドワーフたちが次々に頼んでくる。子どもの僕に頭を下げてくるとは、心根の素直な人たちなんだろうな。


 辺境伯領は広大で、空いている土地はたくさんある。

 父上の了解を得てからドワーフに住みたい場所を選んでもらうと、ノーザンフォードの街から少し離れたあたりの、山と川に挟まれた所になった。

 川の近くなのは、鍛冶をするのに水は欠かせないから。そして故郷が山地だったから、山が近いほうが落ち着くらしい。

 「さて、家の配置はどうしようかな。」

 「できれば真ん中に広場をつくって、それを囲むように作ってもらえると嬉しいんじゃが。」

 「うん、分かったよ。」

 「家を建ててくれるうえに、いろいろと希望を聞いてくれて本当に有難いのう。」

 「困ったときはお互い様だよ。それにドワーフの皆さんがここに住んで鍛冶や細工をしてくれると、うちの領地も発展するからね。」

 「おお、優しいうえに頭も良いんじゃな。」

 「鍛冶や細工は儂らに任せてくれ。」


 ドワーフたちが期待して見守る中、家を建てていく。

 家が出来るまで集中力を持続することが必要だから、一軒建てたら休む。 

 また集中できそうになると建てるということを繰り返す。

 さすがに簡単ではないけれど、一日に何軒も建てられるのだから生産スキルは凄い。

 「なんという優れたスキルだ。」

 「ものづくりは儂らも自信があったが、ウィリアム様は桁違いじゃ。」

 6軒目を造ったところで疲れてきたので、無理をせず今日の作業は終わりにした。

 集中力が切れるとうまく作れないし、魔力が完全に底を尽くと倒れるらしいので、エリカ先生からは決して無理をしないようにと言われている。

 翌朝も朝食をとると、また現場に行って家を建てる。

 それを5日間繰り返し、全部で30軒を建てた。

 「ふう、これで最後の一軒です。」

 「「「おおー!!」」」

 ドワーフたちは歓声を上げた。

 「これでみんなが住める!」

 「ああ、ようやく安住の地が。」

 泣き出す人もいれば、ひざまづいて神に祈りだす人もいた。


 思ったより疲れたから、しばらくのんびり過ごそう。

 こっちの世界に来てから、こんなに根を詰めて頑張ったことはない。

 記憶は曖昧だけど、前世ではノルマや納期に追われていたような気もする。

 異世界に転生してまで、あくせく働くのは嫌だ。それは譲れない。

 でも、こんなにドワーフたちに喜んでもらえたのは嬉しいな。

 父上も兄上も凄く褒めてくれたし。

 うん、生産スキルは良いものだ。

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