第3話 卑怯な冒険者

「お前、どうやってあそこから抜け出したんだ?」


「それにその力は一体……?」


 魔人のことは明かさないほうが良いだろう。それより今は、こいつらから早く遠ざかるべきだ。


「俺を置き去りにしたことはもういい。だからもう俺に関わらないでくれ」


「いや、レイド。お前、俺たちのしたことをギルドに報告するつもりだろ?」


 アルドはそんなことを言ってきた。どこまでも自分の保身しか考えていない奴だ。


「何言ってるの、アルド。あなたがレイドを置き去りにするよう提案したんでしょ? 私は脅されて仕方がなく従っただけ」


 カミラは今さらそんな言い逃れをしようとしてきた。なんとも卑怯な女だ。


「な、カミラ! お前だけ罪を免れようってのか。なぁレイド。俺たちのこと、やっぱり報告するんだろ? 頼むからここで死んでくれよ。俺はお前を口封じしないと夜も眠れそうにないんだ」


「わ、私は知らないから! 何も聞いていないからね!」


 アルドは短剣を手に俺へ斬りかかってくる。


 だが、短剣は脆くも崩れ去った。


「まだ結界が有効なのですか?」


 俺はラウレイオーンに問う。


【いいや。私の呪力の残滓の影響だろう。呪法は基本的に生物、無生物問わず有害だからな。聖別すらされていない道具では、たちどころに壊れる】


 ラウレイオーンは、俺にしか聞こえない声でそう教えてくれた。


「な、なんなんだよ! お前、いつからそんな力を隠し持っていたんだ?」


「いつからって、そんなことどうでもいいだろ? いいから俺の視界に入らないでくれ」


 俺はできるだけ冷淡に告げた。


「ひぃっ、バケモノ!」


「私は何も見てないから!」


 アルドとカミラは、恐れをなして逃げ去っていった。


【情けない連中だな。あんなのとつるむとは、お前も人を見る目がないな】


「選択肢がなかったので。でも、あなたから呪法を教われば、もっとマシな人と関われそうだ」


 俺は気を取り直して、冒険者として再出発することにした。

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