もうひとつの結末

海空

迷路に潜む怪物

 住宅街は入り口があっても出口がない。住宅街に迷い込み、なぜここが袋小路? 出口どこ? なんて思った人は少なくない。


────住宅街には魔が入る


 そう、迷い込むのは人に限った事ではない。ごくごく稀に迷い込むモノがいる。袋小路はソレを出さないためのものだとしたら? 

 それは知らない方がいいのかもしれない。


 

 ぼくの家は住宅街の最終地点、袋小路と呼ばれるところ。道が途切れているから車はほぼ来ないんだ。だから道路で遊んでいても怒られたりしない。

 ここはいつも誰かしら遊んでいる。そんな場所だった。


 あ、今日は女の子がひとりだ。見たことない子だな。


「誰か待ってるの?」


「ううん、近道をしようと住宅街に入ったら出れなくなっちゃって……」


「入り口からしか出れないよ。来た道を戻れば出れるけど」


 「何度も迷ってたらわからなくなっちゃった。お願い、入り口まで一緒に行ってくれる?」


「いいよ、1回ランドセル置いてくるね」


「うん」




 ────オナカスイタ


 ココヲデタラ サイショニ タベテアゲルネ




「おまたせ」


 玄関から出てきたぼくを女の子は目を丸くして見ていた。そうだよね、ぼく白装束に着替えたから。


「ナンデ ソンナ カッコウ スル ノ?」


けがれがついたら嫌だからだよ。だって……暴れるでしょ?」


 女の子はなりふり構わず逃げ出した。すでに変化も解け、本来の姿が見えはじめている。


「……ア゛ア゛ア゛……ナンΡ怖 ダア゛ア゛ アΨΩイ 危険Φツ ハア゛ア クβ恐 ロΔイ゛イ゛ ηオオδΘキ退 却イ゛イ゛ キτ θケξφンЙ ЁЖ ШЮ……」


「いっぱい逃げて ぼくを楽しませて」


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


 なんで出れなかったと思う? 


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


 どうして力が出せなかったと思う? 


「ウギャア゛ア゛ア゛ ハアハアハア グブッ ブウ゛ッ! ハアハア ブエ゛ッ」


 ────罠だからだよ


「グφΘ……ブッ ブ∀∂エッ……ボエッ ηΘΨ……」


 ほら 逃げて


 もっと 逃げて


 がむしゃらに動き回れば

 入り口が見えてくるよ


 そうすれば

 つま先が教えてくれる





 これが絶望の序章にすぎないことを────












 

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

もうひとつの結末 海空 @aoiumiaoisora

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画