第8話 『解体メガネ』 undoodnu さん

p.71)やあ、俺はメガネの次郎。


モノが意識をもつ系統の話には弱い。不遇な結末を想像してしまうからだ。



p.71)「一点ものということですと、全て分解して中身を検める必要があるのですが、


税関で実際どのような手続きが踏まれるものかわたしは知らない。しかし禁制品摘発に際しては想像を絶する手間をかけるものだということはなんとなく分かる。渡航歴においてグレーな場合はとくにそうであろう。



p.71)税関Pと運び屋Xは万年筆を一つずつ分解し、中身を検めた。


万年筆は文具である。この話において文具はカモフラージュとして用いられているようだ。万年筆はどの程度まで分解できるものか考えたことはないが、ものすごい数の一点ものの万年筆にはとても興味がある。



p.72)運び屋Xは一郎のアニキと六郎を税関Pに渡して、俺を掛けた。


マジシャンズチョイスと呼ばれる技術が用いられているのだと思う。万年筆は、それを不自然に感じさせないための伏線だ。Xはプロなのだ。



p.73)一郎のアニキと六郎が犠牲となって、荷物検査が終わった。


次郎は、Xが運び屋でありブツを不法に持ち込もうとしていることは知っているが、そのブツが何で、どこに隠されているのか知らなかった。実際に荷物を頼まれただけで密輸犯人にされる事件は後を絶たない。眼鏡のフレームに仕込めるブツとなると、やはり薬物系だろうか。しかし、用意周到さに比べると、持ち込める量は少なすぎるかもしれないな、と思いながら読み進める。



p.73)マキちゃんはロケットエンピツを二つ取ると、何も言わずに店の出口へ向かい、手を振って店を出ていった。


この話で読み解けないのは、マキちゃんとロケット鉛筆だった。ロケット鉛筆は自分も持っていた。赤、黄、青色がいい。と二つもらっていい? を合わせると、赤、黄、青の芯が入ったロケット鉛筆×2本か、もしくは赤、黄、青、の三本セット×2セットで6本か、それともわたしの想像とは別のロケット鉛筆があるのか。また、留守を預かっているマキちゃんは、Xが運び屋であることを知っているのか。ここはもっと読み込まないと見えてこない。



p.74)851809


この数列も気にかかる。検索すると

Grand Seiko SBGV027 Limited Edition Quartz 85180や、Cherished Teddies や、Sheila Sometimes You Just Need A Little Peace And Quiet 851809がヒットする。興味は尽きない。



p.74)俺は意識を失った。


一本の眼鏡のフレームに入るものでXが運んで採算がとれるもの。眼鏡の次郎はそれを取り出される過程で意識を失う。

ブツは次郎に意識を与えていた何かだったのかもしれないと思う。

先ほどでてきたロケット鉛筆も、冒頭にでてきた一点ものの万年筆も、永遠の繰り返しを象徴する文房具だといえる。

とすれば、眼鏡に意識を与えるブツとは、神の領域に迫る何か、だったのではないか。

そして、ロケット鉛筆は信号機の色だったのは、モラルなき科学への警鐘を表しているのだとすれば、マミちゃんは潜入捜査官である可能性もある。


解体メガネというタイトルには、メガネが解体されるという意味と、解体されるためのダミーネのメガネという意味と、何かを解体するときにかけるメガネという意味と、何かを解体させて見せるメガネという意味合いが読み取れる。それぞれに郁恵もの読み方ができる作品だと思う。


などという楽しみ方を許してくれる作品の、広さがたいへん素敵だと思った

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