気になるクラスメイトは成人女子!そしてトラブルさんいらっしゃい!
え?
まさかの名前が出てきた。
「小野は単なるクラスメイトです」
付き合ったりはしていない。
けどここ最近、やたらと絡んでくる印象はあった。
「確信はないですが、彼女には気をつけた方がいいかと思います。もう少し調査が進めば分かることもあると思いますので、結果が出るまでは能力の件は言わないで頂きたいのです」
メールはここで終わった。
あいつ、疑われてるのか?
言われてみれば思い当たることは・・あった。
霧島さんを探しに新宿に行った時、いつもと違う方向の電車に乗ってきた。
そう言えばあいつの家、僕の家とは全然違う所にあるよな?霧島さんと待ち合わせをした時アイツと出会ったけど、何故か近所に住んでいると思い込んでたような・・・。
途端に小野が不審に思えてきた。
いつから知り合いだった?
同じクラスに小野なんて人物がいたか?
・・そもそも学校内で会ったことがないような気もしてきた。
あいつは一体何なんだ。
考えてもわからない。
そういう時は、とりあえず寝よう。
考えてもわからないことは、考えても仕方ないのだ。
夕食を終え、風呂に入って自室に戻った僕は早々に布団に潜り込んだ。
翌朝。
いつものように支度をして家を出る。
電車に乗って学校まで行くと、いつも出会う場所に小野はいなかった。
授業を受け、放課後を迎えても小野は居らず、また誰も彼女の名前を口にしない。
その日以降、小野の姿を見ることは無かった。
放課後。
「あれから小野に会わなくなったんですけど、何があったんですか?」
自分の中では近所に住んでるクラスメイト、だった存在がある日を境に消え失せた。
そんな出来事が気にならないわけがなく、その謎に一番近いであろう霧島さんに電話して聞いてみた。
「彼女は真・法隆寺派の人間と思われます。そして多少の能力を持っていて、それで大悟さんに近づいたのでしょう」
「でも、小野は・・近所に住んでるただの女子高生で・・」
「詳しくはわかりませんが、我々が目撃した彼女は女子高生ではありませんてした。その・・普通の成人女性に見えました」
訳がわからない。
友人と思っていた人物は友人ではなく、高校生でも無かった。
「恐らくは・・幻術的なもので自身の外観を変えていたものと思われます。そして記憶も改ざんしていたのかと」
以前の僕ならそんな言葉は信じなかったけど・・ここ最近の超常現象に塗れた日常の中では信じざるを得ない。
「彼女の任務はあなたの監視と思われます。ただ我々に正体がバレたので撤退したのでしょう。恐らくはまだ近くにいるはずですが、女子高生としての小野さんと会うことはもうないでしょうね」
・・・ショックだった。
知人が知人でなかったことが恐ろしかった。
そうなると悪い考えが頭をよぎってしまう。
親は、他の友人は、本当に自分の知っている人たちなんだろうか。
彼らももしかしたら偽装された関係なのだろうか。
聞くのが怖いけれど聞かなければ。
「今のところ他に偽装された人物はいないと思われます。相手方もそんなに能力者がいるわけではないでしょうし、まして幻術や記憶改ざんなんて早々得られるものじゃありません。そしてあなたのご両親は間違いなく本物です」
それを聞いて少し安心した。
「記憶改ざんと言っても、ごく最近の記憶しか作れないので付き合いの長い人にはなれません。また幻術は第三者には効かないことが多いので、多人数と関わる場面では使いにくいのです」
なるほど。案外使い勝手は良くないんだな。
「大悟さんもその気になれば使えるんじゃないかと」
その気になれば、か。
記憶改ざんはともかく、幻術は使えたら便利かも。
どういう風に練習すればいいのかわからないけど、自分が誰かになるイメージをしたらできるのかな。
敬純さんにでも聞いてみようか。などと考えながら家路についた。
その途中・・
後ろから車が来たので端っこによけようとしたら、「キキーッ」
急ブレーキの音がして、僕の横に車が止まった。
扉が開いて、中から二人が降りてきたと思ったら頭の上から何かをかぶせられた。
「え、ちょ、なんだ?」
突然のことでパニックになる。何が起こったんだ?
足を抱え上げられ、車に乗せられた僕はなすすべもなく攫われてしまった。
手足を拘束され、視界を奪われた僕は何かを嗅がされたようで、急速に意識を失っていった・・・。
ぼんやりと意識が戻ってきた。ここはどこだろう・・。
手足の拘束は解かれ、僕はベッドに寝かされていた。
周りを見ると、何かの部屋にいるらしい。どこかのホテルの部屋のようだった。
ここはどこなのか。
広域索敵で周囲を調べたが、部屋の外が見られない。
何か細工でもしてあるのだろうか・・。
現状がわからずおろおろと室内を見回していると、誰かが扉を開けて入ってきた。
「お目覚めか?手荒な真似をして申し訳ない。こんな風に来てもらう予定ではなかったのだが、一部の者が暴走してしまってな・・」
スーツに身を包んだロングヘアのОLっぽい人が頭を下げた。
「あの・・ここはどこであなたは誰なんですか?なんで僕が攫われたんです?」
「順番に答えると、ここは我らのいくつかあるうちの隠れ家の一つ、とでも言おうか。
そして私は小野さくら、と名乗っている」
・・・!
小野?これが本当の姿なのか。
「姿を変えてたんだよ。君の級友だった小野さくらは私が変化していたんだ。そして君を攫ったのは、話がしたかったからなんだ」
「そんな理由で攫ったんですか?ずいぶん手荒ですねぇ」
嫌味っぽく言ってみると、小野さんは頭を下げた。
「本当は声をかけて同意の上で来てもらう予定だったんだ。ただ、一部の過激な者が急ぎすぎた結果、こうなってしまった」
本当にさらうつもりは無かったらしい。軽く頭の中を読んでみたけど間違いなかった。
「で、話ってなんですか」
「単刀直入に言うと、我々の仲間になって欲しい」
「仲間・・」
「私たちの先祖はかつての法隆寺の僧侶たちだった。それが古の時代に取って代わられ、我らの法隆寺は奪われたのだ」
「でも、それって戦国時代の話なんじゃ?そんな昔の話を信じてるんですか?」
「そこが一般に知られている歴史と我々の知る歴史の違うところなんだ。歴史ってのは真実か?後から史実が覆ることもあるし、そもそも現代に生きる人間がその時代を見たのか?現存する多数の記録から共通点を見いだして、それが多いものが史実とされているだけじゃないか?」
・・・言われてみればそうかも知れない。数十年前には真実だったことが、最新の研究では違ってました、なんてのはよくあること。
「ではあんた方の真実って何ですか?」
「今の君には与太話にしか聞こえないだろうが」
と小野は前置きしたうえで語り出した。
・・・まず聖徳太子という日本人は存在しなかった。
古の時代、まだ日本という国が形作られる過程にあった頃に外宇宙からやってきた、いわゆる宇宙人と呼ばれる人物がそう呼ばれていた。
彼らはこの国に降り立ち、国の基礎を築く中心となるようある施設を作った。
それが法隆寺だ。
彼らの目的は地球を自分たちの住める星にすること。
それは空気や気温と言った環境的なことではなく、社会システムや文化、言語などを自分たちの都合に合わせて作り変えていくというものだった。
とはいえ何もかも異なる地域を一から作り変えるのは容易ではない。
なので言語と社会規範が比較的似ている日本に降り立ち、ここを拠点に変革を起こそうとしていたのだ。
そして法隆寺を建立したのだが、彼らの中で現地人を指揮していた人物がいた。
その彼が宇宙人仲間から呼ばれていた名前が当時の日本人には聖徳太子、と聞こえたのでそのように呼ばれるようになった。
改革は順調に進んでいた。
多くの改革は当時の日本人に受け入れられた。
だがそれをよく思わない日本人も存在していて、やがて聖徳太子は暗殺される。
その時に自分達の乗ってきた宇宙船も破壊されてしまったので、聖徳太子の仲間は外宇宙に帰れなくなった。
その後、協力関係にあった日本人と手を組んで脅威を排除した彼らは、そのまま法隆寺を守る僧侶として現地人と交わり、子孫を残して生きていくこととなった。
時代は変わり、日本に戦乱の時代がやってきた。
歴史の中心ではなくなった法隆寺だが、それでも政治の中枢に関わるだけの権力は持っていた。
そこに目を付けたのが今、法隆寺を支配している僧侶達の先祖だ。
聖徳太子を暗殺した連中の子孫とも言われているが、そこははっきりしない。
だがその時に法隆寺は奪われ、宇宙人の直系だった僧侶たちは大半が殺された。
逃げ延びた僧侶もいたがもはや奪還するだけの力はなく、ひっそりと生きて血を繋げることしか出来なかった。
それが我ら真・法隆寺派の祖先なのだ。
一気に話し終え、一息つく小野。
僕はと言うと、かなり戸惑っていた。
・・・こんな話を信じろというのか。
今まで聞いたこともない歴史。
辻褄は合うけど、それが事実だとどうやって証明するのか?
それに・・彼らはなぜ法隆寺にこだわるんだろう。
他に寺を作っても良かったんじゃ?
そこに僕はどう関わってるんだ?
いろいろ疑問が湧いてくる。
その疑問をぶつけようと口を開こうとすると
「疑問はあるだろうし、信じられん話だろう。だから今、全てを話しても理解できまい。君の疑問にはいずれまた答えよう・・それよりも迎えが来たようだぞ」
誰かが廊下を走る音。
そして荒々しく扉が開かれ、そこには・・
「青葉さん?助けに来てくれたんですね!」
見慣れた顔がそこにあった。
「大悟くん、無事か?ケガはないか?」
息を荒げながら問いかけてくる。
「僕は何ともありません。それより、そこに小野が・・・」
と言おうとして小野がいた所を見ると、誰も居なかった。
・・君が話してた相手は幻術なんだよ。いずれまた会いましょう・・
かすかに小野の声が聞こえた。
誰もいない部屋で呆気に取られる僕を、青葉さんが不思議そうな目で見ていた。
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