第5話 寝不足の魔法少女!? リペア登場

 ラブリィレッド渾身の一撃がカメレオン怪人に叩き込まれる。その瞬間、ステッキの先端にため込まれていたラブリィレッドの魔力が解放。凄まじい爆発が起きる。

 空から見ればその爆発がハート型になっていることに気付くことができただろう。間近にいたラブリィレッドは自分自身が起こした爆発に巻き込まれてそれどころではなかったのだが。


「ケホッケホッ……すっごい爆発。まさかこんな爆発が起きるなんて」

「ちょっと、何よ今の魔法。っていうか今の魔法なの?」

「魔法じゃないの? フュンフの言う通りにしたつもりなんだけど」

「魔法……なのかもしれないけど。威力はすごかったし。でもアタシが想像してた魔法とは違うっていうか。まぁいいわ。おめでとうラブリィレッド。これであなたも立派な魔法少女よ!」

「うん!! じゃないってぇっ!! 今回だけだから! 魔法少女に変身するのとか今回だけの特例だから! なんで好き好んで何回も何回もこんな姿にならなきゃいけないわけ。だいたい私はおと――」

「先ほどの大きな爆発はあなたの仕業ですか」

「っ!」


 突如ラブリィレッドの上から聞こえてきた女性の声。そこに居たのは箒のような何かに乗った緑髪の女性。顔立ちを見ればかなり美人だということはわかるが、いかんせん目の下にある隈と顔に残る疲労の色がそれらを台無しにしている。

 

「自己紹介が遅れました。私は魔法少女……ふっ、あぁ申し訳ありません。気にしないでください。ただ魔法少女などと名乗っている私自身が馬鹿らしくなっただけなので。ゴホン、失礼。思わず愚痴を。あらためて自己紹介を。私は魔法少女リペアです。魔法少女統括協会に所属する職員のようなものです」

「ま、魔法少女統括協会?」


 耳慣れぬその言葉にラブリィレッドが戸惑っていると、リペアと名乗った魔法少女が箒から降りてラブリィレッドに名刺を渡してくる。


「どうぞ」

「あ、こりゃまた丁寧にどうも。えっと……それで結局魔法少女統括協会ってなんなんですか?」

「これから説明しますのでご心配なく。それよりも前に少しやることがありますので」


 リペアはそう言うとラブリィレッドが起こした爆発の中心に目を向ける。ラブリィレッド自身は気付いていなかったが、そこには男が一人倒れていた。年齢は二十代前半。体も服もボロボロで意識は失っているが、生きてはいるようだ。


「えぇ!? なんでこんなところに男の人が! も、もしかしてさっきの爆発に巻き込んじゃった!?」

「そうじゃないわ。さっきあなたが戦っていたカメレオン怪人。その中身よ」

「中身!? って、人だよ!?」

「そうよ」

「えぇ……もうわけわかんないよぉ。っていうか思いっきり殴っちゃったけど大丈夫なの?」

「生きてるんだから大丈夫でしょ。詳しい説明はそこの女がしてくれるわ」

「貴女は魔法少女統括協会に登録している妖精のフュンフ様ですね。面倒……はぁ、とても面倒ですがきっちり説明させていただきます」

「えっと、あの、説明してくれるのはありがたいんですけど。大丈夫ですか? なんかめちゃくちゃフラフラしてますけど」

「ご心配なく。いつものことですので。これでも出発前に三十分程度ですが仮眠を取れたのでいつもよりは元気なんですよ。ふふふ、実に三十七時間ぶりの睡眠でした」

「えぇ……大丈夫じゃない。それ絶対大丈夫じゃないよ……」


 死にかけのような表情で笑うリペアの姿にラブリィレッドは思わず苦笑いする。


「失礼。そういえばまだあなたのお名前をお聞きしていませんでしたね」

「あ、えっと私は……ラブリィレッド……です」


 あらためて名乗る自身の名に羞恥の感情を抱くラブリィレッド。


(なんなんだよラブリィレッドって。いやだからって実名名乗るわけにもいかねぇし。ってかなんなんだよこいつは! マジ死にかけなんじゃねぇのか! めっちゃ怖いんだが!)


 リペアの死んだ魚のような目で見つめられると心の奥底まで見透かされるような気すらしていた。


「…………」

「あのぉ、どうかしました? ジッと見られてるとさすがに恥ずかしいんですけど」

「あぁ失礼。一瞬意識が飛んでいました」

「ほんとに大丈夫ですか!?」

「ご心配なく」

「いや心配しますって! 今すぐ休んだ方がいいですって!」

「本当に大丈夫ですので。自分の体の限界は見極めているつもりです。ではラブリィレッドさん。警察に彼を引き渡す前に怪人について簡単に説明しておきます」


 リペアはそう言うと、気絶している男に向けて箒を向ける。その先端から発射された縄が男を縛り上げた。


「あの、なにを?」

「失礼。起きて逃げないように先に処理だけしておこうと思いまして。では話を戻します。ラブリィレッドさんはこちらをご存じですか?」

「黒い玉? なんですかそれ」

「これは『アクダーマ』と呼ばれる丸薬です。人の欲望を増幅させ、怪人へと変える秘薬です」

「えぇ!? そんな薬が……」

「怪人には大きく分けて二種類います。生まれながらの怪人と、後天的に怪人となる者。この『アクダーマ』という薬は後天的に怪人を生み出すための手段というわけですね。あなたが今回倒したそのカメレオン怪人というのは、その後者の怪人だったわけですね」

「はへー……そうだったんですねー」

「あなたちゃんと理解してるの?」

「いや実はほとんど理解できてなかったり……でもなんとなくは理解したと思う」

「まぁ詳しい説明は後ほど。ちょうど警察が到着したようですので、彼を引き渡しましょう」


 ラブリィレッドが戸惑っている間にリペアが拘束していた男を警察に引き渡す。


「ご協力に感謝します!」

「いえ、いつもご苦労様です」

「どもです」


 男が警察に連れて行かれるのを見届けたラブリィレッドはそのまま黙ってリペアの側から離れようとした。

 が、しかし――。


「どこに行こうとしているんですか」

「えー、いやー……あのー、もう終わったから帰ろうかなー、なんて……ダメです?」

「ダメです。申し訳ありませんが、ラブリィレッドさんには来ていただかなければいけない場所があります」

「来ていただかなければいけない場所? どこです?」

「『グリモワール』です」

「『グリモワール』? えっとそれっていったいなんなんですか? いやなんとなくは察してるんですけど、できれば外れて欲しいなーとか思ってまして」

「詳しい説明は道中で。後ろに乗ってください」

「え? え?」


 ラブリィレッドの戸惑いを他所にリペアは半ば無理矢理ラブリィレッドを箒の後ろにを乗せる。


「しっかり掴まっていてくださいね。眠たいので飛ばしていきます」

「え、あの、今眠たいとか言いました? ちょ、待っ――ひぃやぁあああああああっっ!!」


 そしてラブリィレッドはリペアに連れられ、『グリモワール』へと向かうことになるのだった。

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