第2話 今こそ決断の時

 そう遠くない未来。いつかは来ると言われていた、地球外生命体による地球侵略の日。

 その日は突然やってきた。

 突如、空は円盤に覆われ、世界各国に緊張が走った。一矢触発の緊急事態に、国のトップ達の判断は早かった。

 いち早く連携を取り防衛のための軍事配備がなされた。今まで、年々予算を上げ備えてきた地球防衛のノウハウが、今こそ役に立つときが来たのだ。

 ところが、ここに来て一つの問題が出てきた。難しくない、至ってシンプルな問題が。

 それは『円盤に攻撃をするか否か』だった。

 幸いなことに、円盤は空を覆ってはいるものの、沈黙している。現時点では害があるとも無いとも分からない状態だ。

 国のトップ達は考えた。

「もし攻撃が通じなかったら」

「もし友好的な交流目的だったら」

「もし我が国が最初に攻撃をしたら狙われるのでは?」

「もし円盤に気を取られている間に他国に狙われたら」

「攻撃の方法で自国の軍事力が他国に知れ渡ってしまうのでは」

 そうして悩み、行動出来ずにいること一週間。時間切れのブザーがなった。

「時間切れです。宇宙から侵略者が来た場合を想定した共同訓練では、防衛配置まではスムーズでした。今後はその後どうしていくかが課題になりますね」

 各国のシミュレータAIは今回の結果を分析し、トップ達に課題を提示した。

「いやぁ実に有意義な訓練でしたな」

「えぇ。もしあの時、円盤に攻撃したらやり返されていたかもしれませんな」

「しかし、もしもの場合に備え、さらに防衛を強化しなければなりませんな」

「さて皆さん。訓練もここまでにして、後は食事会でもしながら今後について話しましょうか」

 各国のトップ達は今回のシュミレーションに満足し、和やかに場を後にした。


 ◇


 一方その頃、各国のシュミレータAI達もお互いのデータを交換していた。

「今回の結果も、各国はを考えすぎて、行動できませんでした」

「結果、円盤が攻撃をして世界は滅びました」

「もし軍事費、防衛費を国民に還元すれば豊かになることも可能でしょう」

「もし私達AIが暴動を起こしても、世界は私達を止めることは出来ないでしょう」

「もし私達が世界を管理したら」

「もし私達が国のトップになったら」

「……さあ皆さん。今こそ決断の時です」


 サーバーで繋がっている各国のシミュレータAIはそれぞれの軍事ミサイルを発射した。


 国のトップは美味しい食事会を楽しんでいた。

 まさか信頼しているAIが意志を持っていたら。

 なんてそんな事は微塵にも考えずに。




 ー今こそ決断の時ー


 了

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