第三幕:タイムステップの真実
やがてクロウは上司や政府関係者の前で事情聴取を受けることになる。そこで明かされたのは、クロノクラッシュが本格的に動き出しているという事実だった。彼らは時間圧縮に介入し、“特定の歴史的大事件”をまとめて書き換えようとしているらしい。そして、それを阻止できるのは“時踏み職人”だけ――。
「お前の父親が、かつて同じような危機を食い止めたのは知っているな」
政府関係者の一人が言う。クロウは唇をかみしめた。
「父が命を落とした理由は、やはり……」
「そうだ。歴史を変えようとする勢力が、当時もあったのだ。彼らは“時間の流れを直接見る”力を持つ時踏み職人を利用しようとし、それを阻止するために……」
クロウの耳には先ほどの黒コートの男が放った「父親は無駄死にだった」という言葉が蘇る。真実はどうあれ、かつて父は大仕事に挑み、世界を守ろうとした。その足跡が、いま息子のつま先を痛めつけているのだろうか。
クロウは自宅アパートの古いトランクから、父が遺した日誌を引っ張り出した。いつもは見るのも辛かったが、今回ばかりは目を通す必要がある。すると、ページの隅にあの“歪んだ歯車”のシンボルが走り書きされていた。
「これは……」
日誌には、父が“時空歪曲地点”と呼ぶ場所で何かを封じた、という断片的なメモが残されている。どうやらそこを狙って、かつて歴史改変テロが起きたらしい。クロウは察した。クロノクラッシュは再び“そこ”で歴史を書き換えようとしているのだ。
葛藤はあった。自分も父と同じように危険に身を投じるのか。過去はともかく、いま安全に暮らせればそれでいいじゃないか――そんな声が心の奥から聞こえる。だが、つま先に広がる疼きが、彼にもう一度踏み出せと語りかける。
「やるしかない。」
覚悟を決めたクロウは、政府や同僚たちと共に作戦を立案し、“時空歪曲地点”へ向かう準備を始めた。
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