第17話 足し算
その日の夕方、アルバーノは持っていた物の修理を終えてガレージに届けにきた。カレンはお礼を言うと代金を渡し、修理されたものを眺めていた。カレンはその後、ユイにローレルが来ることを伝えるとさっそく彼女を迎えに行く。
カレン
「ようこそ、ローレル。この中には入ったことが有るのかしら?」
ローレル
「・・・入ったことは無いかな。いつも外から見てるだけだったから」
食事をするダイニングには大きな机が置いてあり、テーブルクロスが引かれている。その上にはユイが作ったおいしそうな料理が並べられていた。ローレルは促されるまま椅子まで案内されると腰を掛ける。
ローレル
「・・・・」
ユイ
「お酒は飲めますか?」
ローレル
「ええ、飲めるわ」
ユイは笑顔になると近くに置いてあったラム酒の封を切り、グラスに注いで炭酸水を入れる。
カレン
「私、実はワインって苦手だったのよ。白も赤もね。どっちかと言うとビールとかラム酒とかそっちの方が好みかしら」
ローレル
「・・・・ありがと」
ローレルはグラスを持つと注がれたラム酒を一気に飲み干した。
ローレル
「・・・それで?お願いってなに?」
カレン
「まあまあ・・・それよりも冷めないうちに料理を食べたらどうかしら?ユイの料理は王国でもトップクラス。第2王女の私が保証するわ」
目の前にあったフォークを掴むとローレルは肉に突き刺して口に運ぶ。
ローレル
「・・・人が作った物を食べるのは・・・・久しぶりすぎてね。人前で食べるのも初めて。だからマナーも何も知らないの、私はね」
カレン
「マナーなんて私も知らないわよ。食材と作ってくれた人に感謝があればおのずとそれが行動に現れるってもんでしょ」
2人はユイの料理を食べ始めた。
カレン
「・・・それでね?お願いって言うのが一つ。それから認めて欲しいってのが一つあるの?どっちから聞きたい?」
ローレル
「どっちでもいいわよ」
カレン
「そう・・・じゃあ認めて欲しいってほうからにしようかしら。こっちの方が大切だから」
カレンはそういうとテーブルの下から赤い本と手帳のようなものを取り出した。
カレン
「まあ、簡潔に言えばこの集落の人たち全員分の住民税は今後いらないわ」
ローレルは持っていた肉を落としそうになった。
ローレル
「何言ってんの?あんた正気?」
カレン
「ええ、正気よ。住民税だけじゃない。相続税とか固定資産税とか・・・でも電気代と水道代、ガス代は払ってもらうけど」
ローレル
「・・・この集落の惨状を見て同情しただけなら止めときなよ?そんな軽はずみな発言は」
カレン
「軽はずみ?違うわよ。わかってないのよ。お互いにね?」
ユイが割って入る。
ユイ
「どういうことでしょう?カレン様」
レトリック王国は土地を治めるにあたり「分国制」という制度を設けている。領主は既定の場所を治めることで一定の報酬が王宮から支払われる仕組みになっている。
しかし、それ以上に収入が欲しい場合はその治めている場所の税収を上げる必要がある。治めている場所が何かしらの産業で成功したり、住民を多く誘致したりすることが出来れば自分の取り分を増やすことが出来る。という成果に対しての対価である。
カレン
「能無しはずっと惨めな思いをしながら治める。能が有れば私腹を肥やすことが出来る」
ローレル
「だったら領主にとって税収は大事じゃないの?」
その言葉を聞くと赤い本を開きカレンは2人に説明を始めた。
カレン
「私の部屋の本棚にホコリをかぶって入ってたいくつかの本にはこの土地の歴史が書かれていた。しかも全部手書きで。おそらく記述したのはかなり昔の感じ。そこにはこの土地が一体どういう道を辿ってきたのか?っていう本当の所が書いてある」
ユイ
「それを紐解けばって話しですか?」
カレン
「そう、それを紐解けば私に税金が入らないのがわかる」
カレンはその詳細について話し始めた。
現在、この国の王国歴は450年。ジェイが建国した年を0年とすると約450年間続いている国になる。現国王で16代目。このアレストに領主が置かれた時期は建国から50年後の王国歴50年になる。
魔の領域の生存競争が一通り沈静化したのを見計らって人々はここにやってきた。理由はここが「魔物・動物狩り」の拠点として優れていた為である。山岳地帯を含む魔の領域だがここら一帯は平地になっている。そのため人が住んだり、建物を建てるのに非常に適していた場所。それなりに大きな川も数本流れている。
カレン
「だからこの平地を生かして魔物狩りの前線基地を作ったの。あなた達も知っていることだとは思うけど狩りで得られる物の恩恵は大きい。国力増大にかなり寄与していた。だから王族が治める必要があったの」
ローレル
「魔法の使える王族・・・・ってこと?」
カレン
「まあ、それは後の話にしておくわ」
ローレルが教えてくれた歴史通りやがてアレストは栄えていく。この地で採れた魔物や動物を他国へ輸出し、外貨を稼ぐことに成功していき、各地に居た商人や労働者はその話を聞きつけてやってくる。
次第にアレストはそのおかげで一大地方都市になるまで成長していく。人が集まれば自然と経済は回り始め、様々な産業が発展していく。そして相乗効果を生むように魔の領域から無制限に採れる資源を人々は効率よく次々と利益に変えていった。
カレン
「道具とか乗り物とかそういうのも発展することになった。この地に特化したね」
この国にわずか50年という生存競争の果てに誕生した魔の領域。それは人々に脅威を与える以上に魅力的な宝の山でもあった。この国の他の地域でも同様に前線基地が建てられアレストと同じように人々は魔の領域に立ち入るのだが、そこに居たのはその領域に潜む龍や数多くの魔物達だった。
ユイ
「他の地域では上手く行かなかったということですか?」
カレン
「そう、ここが異常なまでに栄えたのは他に比べるとその域龍が大人しかったから。人が割と簡単に入り込むことが出来たの。そりゃそうよね、毒龍なんだから直接襲ってはこないもの。おまけにその毒素の影響で他よりも魔物が少ない。だからこそ出来たことだったの」
カレンは持っていた煙草とライターを滑らしてローレルに渡した。
しかし、次第にアレストに出稼ぎに来ていた人たちに異変が訪れ始める。ここで生活をする人たちはここの水を使う。飲料水、農作物への水やり・・・次第に水に溶け込んだ毒素が人体を蝕んでいく。初めは手足のしびれから始まっていき、気が付くと痛みを感じなくなりやがて勝手に手足が落ちていく。
まるでそれは凍傷を負った時に人体が末端を切り離していくのと似ている症状だった。
ローレル
「・・・・」
ローレルは煙草を掴むとライターで火を付けて、自分の右手を眺めていた。
カレン
「一部はきちんと気が付いた。しかし利益に目がくらんで一部は黙っていた・・・そして悲劇は加速していく」
ここを去るか、それとも続けるか。その選択が迫られたとき、人は欲望に目がくらんだ。王宮は国力増大のためにアレストへ多額の資金援助を行った。莫大な量の紙幣がすられ、金塊や宝石が目の前に積み上げられる。信念や意志が無い人間を簡単に動かす方法、それが目の前に置かれた金。
カレン
「金で頭を殴られれば、その欲望に酔っぱらう」
土地の人たちは優先的に手足を失った人たちに高い金を支払い、言葉巧みに魔の領域の前線へと押し上げて行く。
「キミらしか出来ない」
「キミらの力が必要だ」
「キミらの使命だ」
そうやって毒素が強まった前線に押し上げれていくと、そのうちに手足だけではなく臓器や脳にも障害が出始めて、最後には・・・。
カレン
「やがてね、その場に倒れるの」
しかも毒をため込んだ人間はそれだけで他の生物にとって有害になる。当然、魔物や動物が処分もしないばかりか細菌も微生物の分解も遅い。そのために死体は森の中に積まれてガソリンをかけて焼かれることになる。
ユイ
「そんな・・・」
カレン
「でも、そんな愚行も長いことは続かなかった。逃げ出した人達が情報を次々と漏らしていくの。その事態が悪化してくると王宮は次々と関係者を切り離していった」
段々と毒素の危険が周知されると人は寄り付かなくなっていった。時間が経てば経つほど寂れていき、かつての栄華を誇った姿は無くなった。
カレン
「その栄華は絶えることになる」
王国歴62年「地方都市アレストは事実上解体」この地が栄えたのはわずか12年の出来事だった。公の記録ではそこからここには人が住んでいないことになっている。
しかし、王宮としては国の脅威である域龍の動向を把握しなければならない。そこには治める土地も、治める国民も既にいない。そのため王宮はこの地へ置く役人の名称を「領主」から「監視人」に変更することになった。
カレン
「でも、それは周知されなかった。ここに残っていた人も、私の以前に居た監視人も、お互いに立場を理解してなかった」
「定義間違い」
監視人は明確に領主ではない。そのため本来なら税金を取る必要も、この土地をどうするという事もする必要が無い立場にある。国の仕事をやる監視人はその土地の為に置かれているわけでは無い為である。
ローレル
「私も含めて勘違いを・・・」
ユイ
「そのようですね」
この国の領主という言葉の定義自体がかなり曖昧に設定されてる。都、街、村を治める人を指す言葉でもあるが、ただ単に土地の所有者を指すことも在る。
カレン
「曖昧な解釈が今でも悪さをして、馬鹿な国民を育てているって言うのはよくある話。この赤い本は〝王宮律令〟つまりきちんとそういう取決めが明記されている。だから私は昨日王宮に連絡を入れて事実を確認したの。だからこれは私個人の解釈じゃない」
カレン
「だから私と貴女の関係性って言うのは主従関係でも行政と国民でもなく、監視人と一人の住人という関係性・・・まあでも王族と国民ではあるかもしれないけど」
ローレル
「・・・じゃあ今まで払った税金は」
カレン
「あなた達が不当に払ったお金を取り戻そうとも考えたんだけど・・・それは不可能みたい。何せここに居た元領主は税収記録を王宮にあげてないのと、残っている資料もほとんどない」
やがて人が消えて無くなったこの土地に残されたのはこの屋敷。かつての前線基地の跡地に建てられた監視所という名目の建物。
カレン
「大分昔にここに住んでいた人はほとんど消えた・・・でも、その後からもここには行く当てのない人たちが集まってくる。不法移民、犯罪者、社会的負い目をおった有名人・・・とかね」
表の世界で生きることが出来なくなった人たちが流れ着くようになる。
ユイ
「でもどうしてここなのですか?魔の領域は広いです。よりにもよって王宮側である王族が住んでいる屋敷の近くに住む理由は無くないですか?」
カレン
「一つは毒素のせいで領主も含めて誰も寄り付かない。王宮側の追及も来ない場所。それともう一つは」
カレンの言葉をローレルが遮る。
ローレル
「ここは道路と上下水道、電気が揃ってるから」
屋敷の監視所は王宮の持ち物でもあり、そこに入る人物は王族。なのでその場所まではきちんと道路が舗装されており、上水道、下水道、電気に至るまでのインフラが丁寧に敷設されている。
カレン
「こんな追い込まれた土地なのに、きちんと生活することが出来る。しかも生命線でもある水や電気も使える。ここは豪雪地帯でもあるのだけれど、記録を見るときちんと道路の除雪までされる。まさに至れり尽くせりって感じね」
隣町まで気軽に行けて、さらにはライフラインがあって、それでいて人が寄り付きにくいという好条件がここには存在していた。どうぞ身を隠すために住んでくださいと言っているような場所だ。
ローレルは咥えていた煙草を手に取ると灰皿に灰を落とした。
ローレル
「・・・この集落に住んでいる大人たちは口を揃えて言っていることが有るの。〝自分たちは自給自足が出来ている。だから税金は払わない〟ってね。何をほざいているのかわからなかったけど、私たちは自給自足なんか出来てない。その気分に浸ってるだけってことを知らないの」
道路、水道、下水、ガス、電気・・・日々の生活を支えるエネルギーは大抵の場合税金が投入されている。それが出来るのが国という存在であり、税という存在意義でもある。それが途絶えればここの人たちは簡単にこの場所から出ていくだろう。
カレン
「・・・まあ税金に関しては正しく使われているかが大事なんだけど・・・それは別の話。とにかく私としての税金はもらえない。私たちは域龍監視の報酬とそれなりに予算のある監視費用で全然やっていけるわ。他国でいう所の国家公務員ってやつね。まあ、誰もやりたがらないでしょうけど」
ローレル
「・・・なんであなたはそれを私に教えてたの?黙ってればあなたにはお金が舞い降りたし、別に誰も咎めやしないでしょ?」
カレンは煙草に火を付けた。
カレン
「私はね、貴女と話がしたかった。だから教えたのよ」
ローレル
「・・・話?話ならしてるじゃないの」
カレン
「そうじゃない。関係性もそうだけど、貴女の心と会話したかった。でも私は陰に隠れてる。それじゃ絶対に貴女と会話なんか出来ない。出来るはずがない」
カレン
「私は少なくとも正しくあろうとしただけ。これが正解か不正解かどっちかなのかはどうでもいい。だた、貴女と会話しなければこの先へ行けないと感じた。だからそれをやっただけよ」
ローレル
「・・・変わった王女様ね」
カレン
「それはお互い様よ」
2人はその後ユイも交えて酒を酌み交わした。
ローレル
「・・・そういえばクロムとか言うちっこいのはどうしたの?」
ユイ「クロム様なら今日から3日ほどバンデルに行っています。事前に用意出来なかったものと、必要な契約をしに」
ローレル
「契約・・・?」
カレン
「まあそれはクロムが帰ってきてから出いいわ。それよりも私のお願いをきいてほしいんだけど?」
そういうとカレンは奥の引き出しから紙を1枚持ってきた。
カレン
「あなた、私の先生になってくれない?」
ローレル
「はぁ?先生?」
カレン
「そう。私は今日思い付いたわけ。あなたに鉈の使い方を教えて貰った時に、なーんにも知らないんだってこと。だから先生になって教えて頂戴な。もちろん受講料は払うわ。ここに金額を書いてくださる?」
ローレル
「・・・金はいらない」
カレン
「そうはいかないわ働いたら対価を貰うべきよ。少なくとも私はそう思うし、私も真剣にならないといけない。そのための金よ、これは」
カレンは勝手に紙に金額を書くとローレルの胸ポケットに押し込んだ。
ローレル
「・・・わかったわよ、それで?具体的には何を教えればいいわけ?」
呆れるように手を広げていたがどこか楽しそうにもしていた。
次の日、カレンは屋敷に置いてあった作業服を着て庭先に出ていた。目の前に有るのは手斧やチェーンソー、草刈り機。しばらく待っているとローレルがやってきた。
ローレル
「これの使い方とかを教えればいいわけ?」
カレン
「ええ、そうよ」
ローレルはため息を付くと一つ一つ置かれたものを見つめると、手斧を取って近くに生えていた木の前に立った。勢いよく片腕で斧を振ると木に斧が刺さる。
ローレル
「斧で木を切るためのチェーンソーがあるけど、最初は斧で何本か切れるようにしていおいた方がいい。その方が木こりのやり方がわかるから」
カレン
「わかったわ」
刺さった斧を引き抜くと両手で掴んで思いっきり木に打ち込んでいく。
ローレル
「あら?意外と筋はいいじゃない」
カレン
「そりゃどうも・・・っ」
やり方をローレルに教わり、木を切り倒すと次はそれをチェーンソーで輪切りにしていく。ローレルの義手はフックの取り付けられたものに交換されていた。そのフックにチェーンソーのハンドルを引っかけると左手でスターターロープを引っ張りエンジンをかける。
ローレル
「力じゃなくて重力そのままってイメージで下ろすの」
ローレルはそういうとチェーンソーの重みを利用して刃を木に食い込ませて切断してく。するとあっと言う間にさっきまでそこに有った木が薪に変わってしまった。
ローレル
「・・・こんな感じだけど?他には?」
カレンはこのほかにも草刈り機、スコップ、マチェットの使い方やロープのつくり方、紐の結び方・・・などなどこの土地に住んでいる人ならではの物をローレルに教えて貰った。
カレン
「・・・・これは少し時間が掛かりそうね」
ローレル
「そうかもね、でも幸い練習台は沢山ある」
指を指した先にあったのは屋敷の裏側にある広い土地。草木が無造作に生えており、ガラクタや良くわからない井戸まであった。
ローレル
「ここの場所は多分・・・畑か何かあったんじゃない?でも誰も手入れする人がいなくなった。練習台には持って来いじゃない」
カレンはローレルが帰ったあとも一人でその裏庭で作業を続ける。石をどかしたり、草木を刈ったり、薪を作ったり・・・。
カレン
「・・・上手く道具が使えてないって証拠よねこれ」
手を見ると血豆がいくつか潰れて血が出ていた。顔には泥が付いて作業服は汚れている。
カレン
「ローレルは私よりも毎日こういう作業をしているのに私とは結果が違う・・・ああいう風にならないと駄目ね」
斧が薪を割る音は夜遅くまで庭に響き渡った。
その日からカレンは毎日、毎日裏庭の掃除をしていく。最初はぎこちなかった道具もそのうちに慣れてきて使えるようになっていく。
クロム
「・・・はぁ、はぁ・・・よく続くねこんなの」
カレン
「続くから続けるのよ。私はあなた達と違って私にはやることがないのよ」
クロムとユイはカレンに「ある提案」をした。それがこの集落の手伝いをすると言う物。それも2人だからこそ出来ることをやったほうがいいと考えた。
ユイ
「・・・ならば私は子供たちに何かを教えたいですね」
ユイは子供が好きというよりも年下の子たちの面倒を見るのが好きだった。この集落には学校が無い。各々が独学で文字や算数を学ぶこともしているが、やる子もやらない子もいる。
カレン
「文字の読み書きと算数、四則演算は出来たほうがいいわね」
集落にある大きめな家の中に黒板や机を持ち込むとユイはそこで子供たちを相手に授業をし始めた。最初はおっかなびっくりだったが時間をかけるごとに徐々に打ち解けていく。
ユイ
「文字を読めれば自分で学ぶことが出来ます。本も読めますし」
クロムはローレルが担っていた村の商売の部分や農具などを手に入れるルートを確立することになる。公正な金額で村の生産物を買ってくれる相手を探したり、家を直す手伝いをしたりなどなど雑務をこなしていく。
集落の収入源である麻や綿花の作業も手伝いをしていく。綿花の花が咲くのは7~8月、麻は9月頃。レトリック王国は気候的に寒冷地。その高地に位置するこの場所の夏はとても涼しい。花が咲くと集落はその時期花畑の真ん中に浮かぶ小さな島のように見えた。。
農作物には集落の人々全てが関わることになる。大人たちに交じって子供たちも手伝いをして、体の一部が無い人達は畑には出ずに収穫された麻を水で煮たりする。
そうやってカレン達も参加していき収穫を終えるといつの間にか季節は10月になっていた。集落がいったん落ち着く気配を静かに感じ取り、これから来る厳しい冬に向けて準備が始まろうとしていた。
ローレル
「急にどうしたの?訪ねて来て」
ある日、カレンはローレルの家に突然訪問した。
カレン
「そろそろ時期かなって思って」
ローレル
「時期?冬支度の事?」
カレン
「それもあるけどそっちはユイとクロムが何とかするから大丈夫。私もそろそろ自分の仕事をしないとね」
ローレル
「仕事?」
カレン
「ええ、仕事。私がやるべきこと」
カレンがローレルに聞きに来たのはこの土地に存在する毒龍の居場所だった。
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