第十話 意を得ば 須らく歡を盡くすべし
怒るふりをしつつも、
『
残された三人はセブに礼を言う。
三千世は部屋に
兄の
セブが
「そいで、市さん。ここはどこなんね?」
「この地の名前は聞いた、ルクブ地方ヒュマジ草原のツパルク村だそうだ。国はケンノサント。あの山はカリスラビント
日本の
「さっき
縫が
「ガロツク、ですたい」
嘉助の声に独去が
「さてさてここは
「勘解由様は
縫が独去の筆を取ろうと手を伸ばす。
「……おそらくは、違う。ここは
ただの外国ではないと聞き、伸ばした手を止めた縫は
「そいなら、市さんは、ウチたちは海ば渡ったとじゃ
「ああ。ここはおそらく日の本から海を
「そうやね。ウチも勘解由様の忍法は行く者の命を
独去は、窓から見える
「
〝異なる世界〟じゃ。
独去が指差す空へ顔を向けた嘉助は昼間でも
山々の向こうからは針のような細い線が空へ伸びてキラキラと
「あいは月ね、嘉助さん」
「……わかんません。昼間から
そう言ったきり、二人はしばらく言葉が
「
「ほんに勘解由様のお力は、凄まじかぁ」
目を
「
縫の
「はぁ……
考えあぐねていると、セブ司祭から忍びたちへ声がかかった。
『皆様よろしければ、こちらで食事にしませんか?』
手にした木の
「起きられない方は横になられたままで、お召し上がりください。
大きな一枚板の木の食卓には
なにかの動物の乳で煮られた甘い匂いが
「良か匂いですね」
「本当やね」
大皿には薄く切った野菜の焼き物が重ねてあり、その上から溶かした乾酪〈チーズ〉がかけてあった。
その隣りには
『
セブの言葉が終わる前に、縫は
「スゴか……ご
流れるような動きが、
食前の祈りが始まったのだ。
異なる宗教の
食前の祈りが終わると同時に、縫と嘉助が手前の
「
「
「
「そげんねぇ」
嘉助と縫は、ホクホク顔で焼き野菜を
『よろしければどうぞ。麦の酒です』
「
独去は木の
「坊主んクセに酒ね。はー、生臭かねぇ」
「ワシは坊主じゃないと言うておろうが。僧の
「
『同じものでよろしければ、またお待ちします。酒も料理もまだ用意がありますから』
食卓につかず勘解由の食事の
「お嬢、セブさんがお
「
勘解由も上体を起こして
「そうね、
『ええ。ですから皆様もできるだけ早く、ここから逃げてほしいのです』
嘉助は先ほど、ケンノサントの騎士たちから
「嘉助さん、その
「わかいました、ちっと後で
縫にいわれるまま
道具も使わず、鉄板が柔らかい粘土の板でもあるように指で難なく
それに拵えている部品の形も
まったく器用な男である。
「
嘉助に事情を
『この先の
「運の無かことでしたねぇ。
「あん人らの言う通りに、
顔を
『
「そ、そいじゃ食い物を渡すだけ
声を上げた
『ここは元はと言えば流民が寄り集まって暮らしていた場所でした。それで土地の持ち主が私の
「なんね。ふだんは
縫が
「ハハ。
縫の脇の
「なんじゃそれは。嘉助の飲まなんだ分の酒じゃろッ。ワシにも少しくらい分けんか!」
素早く独去へ舌をだしてセブ司祭に向きなおる。
独去は空の盃を回して縫に
「あー嫌だ嫌だ。嫌な話しか聞かんしッ酒は
独去のようすが
その
『やがて通るガロツクの兵に殺されなくとも、
「遅かれ早かれ、村ん人らは死ぬとですか……」
『まぁ、遅くなることはないでしょう。先ほどの兵隊が言うことには……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます