第四話 汝の手 善をなす力あらば
ルクブ砦から来たケンノサントの騎士は、とつぜん何もない空間から
動きあぐねて、ただ目の前の
「
「
「うむ。まわりの
前に出て腕まくりする独去へ、縫がまた小石を投げる。
いたずら者を目で
動き出す独去を見て、騎士たちはようやく平静を取り戻した。
『おいおいコイツら……なにかしら奇妙な音をペチャクチャとたてておるぞ。鳴き声か? やはり人ではないのか? 森から来た猿の
『いや衣服を身につけているからな……異国の流民か、どこぞの
『かろうじて人らしいのだが……まあ猿の
騎士たちは、嘉助を見ては顔を
「市さん
縫が独去の
「しばし、待て。そう揺らされおっては術がかけられんぞ……よし
独去は、指を
「きりやれんず きりすてれんず きりやれんず」
切支丹の
声が止まると同時に、遠くで
独去の
忍法、
複数の人数の思考を声に出すことなく伝え合わせる術である。
精神と意識に関わる現象を操作する忍法であり、
「あぁチクショウめッ。近場の鎧武者だけに
しゃがみこむ独去をよそに縫と嘉助は腰を
「お騒がせしてすみま
『お? いきなり言葉を話し始めたぞ。なんだ? どうやら猿ではなかったようだ』
ニコニコと
「言葉は、わかっようになったとやけど、こん人たち……ロクなこと言うとらん。わかっとらんほうが良かったかもしれん」
「はあ。もとから歓迎はされんと思とったですけんど……まさか
いまの違和感しかないの状況に、たじろぐ嘉助。
しかし何もない空間から人が浮き出て来る現象などケンノサントの騎士たちにとっても受け入れ難い事態だった。
現にいまも五人の
『な、何にせよ、気にすることもない。
確かに目の前にいる五人は、武器も持たずろくに持ち物もない
このまま放置したとしても、自分たちにとって
『念の為に見回しても、魔法陣はどこにも出ていない。魔法の
「マホウ……? こん人たちの言うたマホウってなんね、嘉助っさん?」
「お師さん。オイが知っとるわけがなかですよ……」
『さっさと、この村から取るもの取って帰るとしようぜ』
騎士たちの興味は、突然現れた異国人からツパルク村から巻きあげる食料へと戻った。
『タゲルボ、バント、 早く食い物を差し出させるぞ。ガロツクの者どもがすぐそこまで
呼ばれたチキドが我に返って槍を勘解由らへ向ける。
『寄るな!
勘解由らに背を向けたバントは、集まり震える村人を
『しかし、ここのヤツらときたら、どいつもこいつも
言うないなや、バントは手近な村人の女の手を取り、顔を上に向けさせた。
司祭が
『
『
バントは、腰にすがりつく司祭を木の葉を散らす
突き飛ばされたときに
『セブ殿やめておけ……お上に逆らうと村中の者がみんな、殺される。止めよう。しかたがないのだ』
村娘の悲鳴が
「ここでんッ侍が、領民ば
「ああッまたね。ウチたちはまた、こげんつうくれのおる土地に来たとねッ」
縫が
あわてて嘉助が止めた。
「お師さん
「
だが唇を引きつらせながらも縫は、その場に立ちつくしていた。必死に自分を抑えていた。
徳川幕府の
だから、身分をかさにきて力なき
二人が怒りを
「兄ちゃんが
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