第2話 不思議の裏側

時は少し巻き戻り、ケルベロス地獄の番犬視点


「お前らやるぞー!!」


「「おー!!!」」


「欲しいモノはー。」


「「奪い取る!!」」


「我らは。」


「「ケルベロス地獄の番犬であるが故に、何処までも追いかけ追い詰め、奪い取る!!一度狙った獲物は逃さない!!」」


「今日もいい感じだな。」


「「押忍!」」


「では今日の獲物のルートを説明する!!見て覚えろよ?今回は隠居したとは言え元騎士団のメンバーが護衛についていると言う噂を耳にした。気をつけろよ。だが、裏を返せばこれはつまり?」


「それ程金になるモノを運んでいると言う事です!!」


「そう、ハイリスクハイリターン。今回はどデカい仕事になる。だが…。」


「撤退のタイミングを見誤るなですね。」


「その通りだ。分かってるじゃないか。ならいつも通りいくぞ。今回は下準備が文字通り命綱になる。騎士団のメンバーなんて人間の人外真正面から正々堂々やったらマジのケルベロスがいる場所に一直線だ。」


この国の騎士団とは別名人面人外集団。人間のみで構成されていながら人間と同列に扱うことができないイレギュラー。この国が小国なのに大国に囲まれながらも侵攻されていない大きな要因。

たった1人戦場に派遣されるだけで戦力過剰になる程で、それが群をなしているのだから騎士団は化け物なのだ。本来ならば戦うどころか関わること自体自殺行為だがそのリスクを加味しても、それが守る荷物となれば受けられる恩恵が大きい。


「「押忍!!」」


「では下準備だ!罠を張り巡らせ!!」


ー暫くしてー


「そろそろ時間だな。獲物が罠にかかるのを待て、護衛が自由に動けなくなったら速攻だ。護衛の油断を誘うために今回は棍棒を持ってただの野盗を装うぞ。最初から俺らがA級賞金首であるケルベロス地獄の番犬ってバレたら速攻で潰されるからな。護衛が本気を出す前に事を終わらせる。相手の油断を誘うのも重要な事項だ。」


「「押忍!!流石兄貴!!」」


「そう褒めるな。」


ー暫くしてー


「掛かった!!俺は念の為護衛の相手をする。お前達は荷物を奪え!!」


「「お゛ぉ゛ー!!!!!」」



俺達は物陰から飛び出してそれぞれの仕事を熟す。


「頭!!アレ!」


俺はミックスが指差す方向に目を向ける。するとそこには森の管理者とも揶揄されるドリアード森林の大精霊がいた。

姿形は人のそれと全く持って変わらないが看破の技能を持つ俺達の目にはその正体が易々と分かる。


「よし、ついでだ貰って行こう。」


精霊を捕らえ売り捌けば人生数周分の富が手に入る。

それは精霊が珍しいと言うのもあるが魔法という分野において精霊がいるのといないのとでは天と地ほどの差があり、競売にでもかければ研究に没頭するか戰場に入り浸る魔導士共がお互いに金を積み上げ続け、仕入した方法が違法だろうと合法だろうと最終的にバカみたいな金額を払うことになるからだ。


「「おー!!」」


「見つけた俺が行きます!」


ドリアード森林の大精霊は精霊の中では戦闘能力が低い部類だと言うしミックスでも捕らえる事が出来るだろう。今日はなんていい日だ。一生、酒も食い物も食べ放題飲み放題だ。


「ぐぇ!!」


だが俺の予測とは違いミックスがドリアード森林の大妖精に近づこうと足を一歩踏み入れた瞬間、辺りが凍りついたのかと錯覚するレベルの悪寒が全身を支配する。当然考えられる原因はドリアード森林の大妖精のみ。

ミックスが後ろに倒れ後頭部を木の根に強打する。


「おい、大丈夫か!?」


「あ、兄貴ぃ…。」


頑強なミックスが一撃で意識を飛ばしたのは初めてだ。俺は急いで撤退指示を出そうとするがキレたブルがドリアード森林の大精霊を睨みつける。


「よくもミックスを!!」


「おい、待てバカ!!」


ミックスの惨状を見てもブルがドリアード森林の大精霊に近づこうとして今度は顔面を強打する。そしてその様子を間近で見ていた俺は何がどうなったのかを目撃してしまった。


「おいおい、ドリアード森林の大精霊シルフ風の精霊王が憑いてるのかよ!!あり得ねぇ!!精霊に精霊が憑くなんてあり得ねぇよ!!チキショウ、今回の獲物はデカ過ぎた。こんなのがこの森に生息してるなんて聞いてねぇ!!」


俺は2人を担いで急いでその場から逃げ去った。護衛の方の追撃が怖いがそんな事で足踏みしていられる程状況は良くない。


「命あっての物種だ。人間の人外だけで無く精霊王なんて魔法そのものみたいな化け物まで相手に出来るか!!!」


精霊は金になるが精霊王まで行くとそんなもんミリの価値もない。命を賭けても指一本触れられない存在に己の命を賭けるなどアホの極みだ。

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