第10話 言い訳 By 扶久子

 私が義鷹様に保護されてから早くも一週間。

 私がカツラを外した時には女房たちはそれはそれは驚いた。


 そして私が言ったを皆は信じた。

 そのがこうである。


「ええと…実は旅の間、途中で賊に襲われたりで一緒に旅していた者達がどんどん減る中、もしもの時に女の姿では危ないという事で髪を切りしていたのです。神社に詣でに行った時は…ええと、その!そうっ!神様に祈願するのならちゃんとした格好でなければと写真館…いえ、できちんとした身なりと化粧を施してからお参りしていたのです!」


「まぁ、では姫君の立ち寄られたお店とは絵師のいるお店で一緒にいた女性にょしょうとは化粧師けわいし(メイクのプロ)でしたのね?」


「え!ええ、そう!せっかく久しぶりに本来の女の姿(ウッソで~す!)に戻ったので絵を…と思ったのですが…その前に先にお参りを…との亜里沙と神社に詣でに行った際に突然の落雷に会い、崩れてきた建物の粉塵に遮られはぐれれてしまいました…」


 そんな適当な口から出まかせな説明も屋敷の奥舞ったところで暮らす上流貴族の妻である母上(芙蓉のお方)様も傍仕えの女房たちも所詮、箱入り…欠片も疑うこともなく感心し、同情は益々深くなるばかりだった。


「貴女ほど美しい姫君がおいたわしい。女の命とも言える長い髪を惜しげもなく切られるなど…」

「それほどに命がけの願掛けとは一体…?」


 そんな言葉に大した言い訳も出てこず、

「も、申し訳ありません。祈願の内容は…他言しますと叶わなくなるやもしれませんので…」と言葉を濁した。


 そんな私の様子に人の良い母君(芙蓉ふようかた)&女房ズ(かえで紅葉もみじ)は、よほどの大願なのだろうとそれ以上は問い詰めるようなことはしなかった。(義鷹様といい、人が言いにも程があるというか…ちょろすぎる面々である)


 正直、良い言い訳を何も思いつかなかっただけなのだが…。


 しかし!この母君と女房たちかえで紅葉もみじには、別のある思惑があった事を私はまだこの時、気づいてはいなかった。

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