第4話
施術を終えて帰ると、店で親父さんが待ち構えていた。
「おう、エリカ。また宮殿に行ってたのか」
「はい、お陰様で」
「そーかそーか、ご苦労なこった」
稼げるようになってから、親父さんはずっと機嫌がいい。私のために、わざわざお茶も淹れてくれた。
「にしても、お前。あの求人のお陰で、随分と稼ぐようになったじゃねぇか」
「そうですね。ありがたいことに……」
何と返したらいいか、次の返事に迷っていると、親父さんがポンと肩を叩いてきた。
「エリカ、この調子で頼むぜ」
この調子……、この調子、か。
心の中で、親父さんの言葉を反芻する。
実際、状況は良くなっていると思う。宮殿に出入りするようになったから、今まで以上にお金を貰えるようになったし、ホームレスの相手をしていても、とやかく言われることも無くなった。
でも。
──私のしたいことって、一体何だろう?
私は最近、こんなことを思うようになった。
そりゃあ最初は、親父さんに文句を言われないようにしたい、今まで通りの働きがしたいと思って、お嬢様の部屋の扉を叩いた。だけど、お嬢様とお話しするようになってから……、お嬢様のつま先に触れるようになってから……、自分の胸の内で、隠し切れない「何か」が渦巻いている。
それはきっと、お嬢様に対することだった。
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