第6話 おばちゃん、おこちゃまになる

タバコの補充は、おばちゃんがやるようになった。


おばちゃん、17歳男の子より3倍歳取ってるし~? 極度の近視だから、遠くが見えない。普段は運転可能な視力を保つメガネをかけているのだが、老眼で、近くのものはそのメガネじゃ見えないから、首にストラップで老眼鏡を下げている。


タバコを探し出すときにはそれを使うのだが、見つけ終わると通常めがねに変える。


ところがこのストラップが細いチェーンで、さらに胸元だ。


見えねぇ! 


こんがらがっちゃって、サクッと直せない。


右に回してみたり左に回して、さらにこんがらがってあたふたしていたら……、柿の種が……。


ふっ! と笑っておばちゃんの胸元へ手を伸ばしてきた。


なにするだ! 


当然脳裏には、「セクハラ」の文字が!


呆然としているおばちゃんの手からメガネを取った!


そして……。し……心臓吐き出すかと思ったぜ!


柿の種。こんがらがってるメガネのストラップを直し始めた。


ぼ―ぜんとするおばちゃん。しかし柿の種の、ぱっつん前髪でよく見えない眼が、完全に呆れて笑っているのだ!


「敬老」の眼じゃない!


「まったく、この子は世話が焼けるなぁ~」って眼なのだ!


おばちゃん。柿の種におこちゃま扱いされているのだった。


ああ、「おばちゃんが17歳にセクハラしっこねーじゃん!」 って笑ってたのに、形勢逆転だ。


17歳がおばちゃんにセクハラ……、じゃなくて、子供の世話をしている。


同じ年の女の子には真っ赤になったくせにぃ――――! おばちゃんなら平気なんかい!


おばちゃん……。なんか、心がズタボロ……。


おばちゃんの威厳はどこ行った! 


バイクの一件から、奴らはおばちゃんを、


当然「女の子」じゃねーし! 


「塩対応レベルのおばちゃん」でもねーし! 


おばちゃん、17歳男の子になっちゃってるんじゃね?


それからは、おばちゃんがストラップを直せず悶えてると、柿の種が直してくれるのが当たり前になったしまった。


おばちゃんの威厳……。吹けば飛ぶような~♬ 将棋の駒じゃなくて、ちりだった。


17歳男の子。


「ジェネレーション・ギャップ? なんですか? それ?」


英語がわからなかったんじゃない!


世代ギャップを、おばちゃんに持ってなかったぁ~~~!


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