赤壁

風馬

第1話

つまらない軍議ばかりが開かれていた。

そんな折り曹操の大群が南下かしてくるという情報が注進された。

相手は80万の大軍。

我が君主劉備の兵ではとてもではないが耐えられない。

そういう意味でも今日の軍議は違った。

「戦いあるのみ!」とひたすら叫び続ける目玉おやじ。

「兄じゃ次第…」と呟く髭おやじ。

そんな喧騒の中…ボソッと耳親父こと劉備が言った。

「軍師殿、呉に行ってもらえぬか…」

「!」…と自分。

わざわざ、敵中へ行け…と。

しかし、ここに居ても戦いを避けられない様子。

ならば呉へ…と戦火を避けるように移動した。

そして、呉で私は…。


ここに来てもやっぱり軍議。

結局、私が来たことで戦うことになってしまった。

その夜、周瑜という男と呼ばれた。

「軍議では戦うことが決まったが、何か勝算はあられるか?軍師殿」

「…」

「ならばお互いの手のひらに作戦を書いて見せ合おうではないか?」

そう言うと周瑜は、ササっと書いた。

私は別に作戦などないので書く真似をした。

「では、手のひらを合わせようではないか。お互いの文字がが違っていれば、読めぬ字になるであろう」

そう言うと周瑜と私は手のひらを合わせた。

そして、周瑜の文字を見た。

「火」

そして私の手のひらにも「火」

周瑜はにやりと笑った。

「お互い同じことを考えていたのなら、曹操の大群の待遇も怖くはありませぬな」

流石に、考えていなかった…などとはいえぬ状況…。

「しかし、火計に必要な東南の風がこの時期は吹きませぬ。軍師殿の力で風を吹かしてくれぬるか?」

どうしてもこの雰囲気から脱したく私は同意した。


そして私は暗闇に怪しい光が灯る祈祷台の上にさらされた。

兵たちは今か今かと私を見つめている。

流石にこの状態では緊張してしまう。

折を見て逃げ出そうと人払いをした。

そしてソーっと祈祷台から黒い林へと逃げ出した。

林の中は暗くなっている。

祈祷台の明かりは小さくなっている。

ここまで来れば走って逃げ出しても大丈夫だろうと、駆け出そうとしたとき…。

ズテッ!

思わずこけてしまった。

その音ににびっくりしたのは林で休んでいたカラスの大群。

カラス達は矢庭に鳴き出し明かりの方へ向かって飛び出した。

その数は凄まじく飛び立っていたカラス達は、一陣の風を巻き起こして飛んで行った。

その風はやがて祈祷台の明かりを消し飛ばしていった。

その様子を兵達は見て叫び声をあげた。

「東南の風だ!」…と。


私はその叫びに目を瞑り、そしてもう一度風を感じ目を開けた。

その眼前には巨大なスクリーンが広がり今まさに壮大な映画が始まる瞬間だった。

そう、あの「レッド・クリフ」が…。

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赤壁 風馬 @pervect0731

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