男運のない私が年下王太子に溺愛されるわけがない!

月川はるの

短編/1話完結済

「俺のお母様に従えないなら別れてもらうしかないよ」


 目の前の男は柔らかな声で諭すように私に囁く。


 その瞬間、私は悟った。



 今回も「ハズレ」だと─…。



 ◇ ◇



 アルカディア大国では恋愛はカジュアルなものだった。

 気が向いたら付き合えばいいし、嫌になったら別れればいい。

 結婚をしてもそれは同じで、外で恋人を作るなんてのもあたり前なのだ。 


 だけど私、エレナ・フォン・リューベックは愛し愛される関係にとても憧れていた。

 

 娘が恥ずかしくなるほど愛し合っていた両親の影響だろう。

 伯爵家として貿易を中心に領地を納めている我が家はとても領内一といっても過言ではないほど仲のいい夫婦で、私が8歳のときに病気でお母様は亡くなったが、12年たった今でもお父様は後妻も娶らず一途に愛し続けている。

 そんなお父様みたいな人に出会いたいという私もファザコンというものなのだろう。


「だけどさ!一言目にはお母様お母様って!あのマザコン男!」


 結婚適齢期真っ最中の淑女にあるまじき言葉遣いなのは理解しているが、自室でぐらい暴言を吐かせてほしい。

 テーブルから溢れんばかりのケーキの山を、紅茶で一気に流し込む。


 最初は優しかったのだ。本当に優しかった。

 笑顔が優しく、話題も楽しく、私より12才年上で大人の余裕がある。まさに理想的な男性。


 さきほどまで彼の言葉に一喜一憂し、運命の相手だと浮かれていたはずなのに、今では目の前の紅茶のようにすっかり冷めてしまっている。


 もうこれで6回目だ。


 1人目は階級意識が高く使用人に暴力を振るう男だった。

 2人目は私がいつ彼に恋に落ちるか賭けの道具にして笑っていた。

 3人目は既婚者であることを隠していた。

 4人目は賭博が好きで借金まみれだった。

 5人目は彼女が5人いた。

 …6人目は重度のマザコンである。



 もうこれは認めるしかない。


「男運が…ない・・・」


 私には男運がなかった。


 それはもう絶望的に。



 突き付けられた現実が呑み込めない。

 胸が苦しいのは心が傷ついているのか、はたまた食べ過ぎによる胸やけか。



 燃え尽きたように俯いていると、横から笑いをこらえるような声が聞こえた。

 この声の持ち主はわかっている。


「男運じゃなくて男を見る目がないの間違いじゃない?」


 15年間毎日嫌でも顔を合わせている弟のユリウスだ。

 癖のある淡いブラウンの髪に、エメラルドの瞳。

 嫌になるほど私に顔が似ていて、弟はモテて私はモテない。解せない。


 「まだ15歳のおこちゃまに恋愛なんて分かるわけないでしょ」

 「20歳になっても情緒がお子様な姉様には負けますよ」


 ここ1・2年でユリウスは生意気になった。思春期というやつだろう。

 お母さまが亡くなったときユリウスはまだ3歳で、私がいないと寝れないとクマのぬいぐるみと一緒に 毎晩のように一緒に寝ていたあの頃が懐かしい。


 弟の生意気な口は可愛いかったころの昔話をすれば黙らすことができるのだが、そんな元気も今はない。

 私も結婚適齢期。これ以上失敗を重ねたくないのだ。


「あれ?珍しく落ち込んでる?そんなに好きだったの?」


 私が失恋で落ち込んでいると思ったのか弟の声に焦りが見えた。


 実際私もあの男が好きだったかといえば、そうではなかったのかもしれない。

 だってこんなすぐに冷めてしまうなんてきっと彼でなくてもいいのだろう…そう思うと私もたいがい失礼な女だ。そういうところが相手に透けているのかもしれない。


 自分の思考に傷つき、荒んだ心を慰めるように窓の外の揺れる木々を見つめた。

 物憂げにため息をつき、紅茶をそっと口に含む。


「じゃぁさアレクシスと付き合っちゃえば?」


 そして勢いよく噴き出した。


「わっ姉様それは淑女としてアウトでしょー」

「あんたのせいでしょ。だいたい王太子殿下を呼び捨てにするのは辞めなさいよ!」


 ぴしゃりと弟に注意することで、噴き出したことをなかったことにして、目の前のケーキを口に運んだ。

「外ではちゃんとしてるし大丈夫だって。俺ら幼馴染みたいなもんだしいいじゃん。なぁアレクシス」


 そして勢いよくむせた。


「エレナ大丈夫?」


 むせて言葉がでない私の背中を優しくなでるのは、アレクシス。

 アレクシス・ルキウス・アルカディアといってこの王国の王太子だ。

 白く輝く白銀の髪色、端正な顔立ちでどこか冷たい空気をまとわせている彼は身分も相まって、貴族令嬢の中で注目度ナンバーワンの貴きお方。


 そんな彼が私の背中を擦っているこの状況は非常におかしいが、それなりの理由がある。

 12年前、お母さまが亡くなったときにお母さまを深く愛していたお父さまが引きこもってしまった。 可愛い子どもを2人放っておいて引きこもるなんてどうかと思う。弟は当時3才だったし、私は8才だ。

 見かねて声をかけてくれたのが、母の叔母の娘、つまり現王妃で私たち姉弟は3年ほど王宮に住まわせてもらっていた。弟と同い年のアレクシス王太子殿下とも必然的に姉弟のように育ってきたのだった。

 でも私ももう20才で、王太子殿下は15才。いくら姉弟のように育ったからといっても本当の姉弟ではない。

 私は背中をさする王太子殿下の手を避け、慌てて淑女の礼をとる。



「王太子殿下、お目にかかれて光栄でございます。お変わりなくお過ごしでいらっしゃいますか」


 目線を下げて挨拶をすれば頭上からくすくすと笑い声が聞こえる。


「エレナは相変わらず固いな。昔みたいにアレクと呼んでよ。」

「ご厚意に感謝いたします。恐れながら、現在の私の立場上、殿下をそのようにお呼びすることは相応しくありません。」

「僕のお尻を叩いたことあるのに?」


 突然の爆弾発言にぐぅっと喉から変な声がでた。

 私が10才のときにユリウスとアレクシスが私の部屋でカマキリの卵を孵化させたとき二人のお尻をこれでもかっていうほど叩いた記憶がある。しかも生尻で。

 間違いなくあれは不敬だったが、乙女の部屋で虫を育てるなんて言語道断である。

 王太子殿下にとっても黒歴史のはずなのにどこか嬉しそうにしているのはなぜだろうか。


 私が11才になった日、お父様のひきこもりが終わって家に戻ることになり姉弟ごっこは終わりをつげたが、同い年のアレクシスとユリウスは友情を深めていたようで、今もたびたびリューベック家の屋敷に来るのだ。


「アレクシス、からかうのはそのへんにしろよ。姉様は失恋ばかりなんだからさ」


 弟よ、それは助け舟なのかそれとも追撃なのか。


「失恋?なんでエレナみたいな魅力的な人が振られるの?」

 そういうアレクシスの顔はどこか楽しそうだ。これ絶対馬鹿にしている。


「ユリウスは黙ってて!それにこっちが振ったんだからあんなマザコン野郎こっちがお断りよ!」

「だから姉様は見る目がないんだって。なんでそう癖がある男ばっかりにひっかかるかな。だからアレクシスにしとけっていってるのに」

「ちょっ黙って!!ユリウスあんた不敬がすぎるわよ」


 黙らせようと弟のほうへ向かうと、反対のほうから手を引かれた。


「そうだよ。僕と付き合おう!」


 まばゆくような笑顔が目の前に迫り、私はもうつっこみを放棄した。



 ◇ ◇



 一国の王太子殿下に告白されたら喜ぶべきだろうか。


 落ち着いて考えてみてほしい。


 私の求めている夫婦像は愛し愛される関係だ。

 アルカディア王国では王太子妃になってもあたり前のように側室もついてくる。

 そして側室たちは虎視眈々と王太子妃の座を奪いに来る血沸き肉躍る王宮ライフが始まる。


 今だって国王陛下には側室は5人いて、アレクシス王太子殿下にも兄弟が11人いる。

 普通なら血なまぐさくなってもおかしくなるところを均衡を保っているのは現王妃殿下の手腕だ。

 次々に側室を篭絡し、統率をとっている。一部では側室方の愛は国王陛下よりも王妃殿下にあるのではないかと言われているぐらいだ。


 そう、そのぐらい丹力がないと王妃なんて務まらないのである。


 そもそもアレクシス王太子殿下に付き合おうといわれたのは、自慢だけど3回目だったりする。

 

 殿下が4才と8才のときに結婚を申し込まれたのだ。

 あのキラキラした目で見つめられたら思わずOKしてしまいそうだけど、正直そのころから年下には興味はなかったので丁重にお断りした。

 そのころの私は40才の騎士団長に夢中だったからね。もちろん相手にされなかったけど。


 ともあれ、殿下の淡い初恋が私なんて光栄の極みだ。

 しかし今回は違う、殿下も15才。ちょうど婚約者をあてがわれる年齢だ。

 本人はまだ男友達…つまりユリウスと遊んでいるほうが楽しいのか逃げ回っているという噂がある。

 彼だってその場のノリに合わせただけなのに、下手したら周りに囲われて王太子妃候補の仲間入りになってしまう。いい迷惑だ。

 5才も年上の王太子妃なんて誹謗中傷間違いなしだし、選ばれないに決まっている。

 そうなれば貴重な花の20代の大半が潰れてしまう…冗談でもシャレにならない。

 あそこにいたのが私とユリウスだけで本当に良かった。


 それに私が失恋して自暴自棄になって15才の男の子に手を出したなんて噂になったら外聞が悪すぎる。私は落ち着いた年上が好きなんだから!!


 自室でやけ食いしていたはずなのに、ユリウスとアレクシス王太子殿下から逃げるように屋敷をでてきてしまった。

 そうだ。やけ食いの続きは新しくできたカフェでしよう。リンゴタルトが美味しいらしい。

 私は昔からリンゴタルトが大好きだった。甘く煮込んだリンゴにサクサクのタルトが絶品で王宮ですごしていたときもよく食べていた。王宮のリンゴタルト美味しかったな。


 甘いものはいい。いやなことを忘れさせてくれるし幸せになる。

 もうやけ食いは言い訳で、ただ食べたいだけなんて無粋なことは言わないでほしい。


 心をリンゴタルトに奪われた私は軽やかな足取りでお店に向かった。


 ◇ ◇


 …今日は人難の相でもでているのかもしれない。



「まぁまぁまぁまぁまぁエレナさん奇遇ねぇ」


 目的地のカフェで待ち受けていたのはリンゴタルトではなく、さっきまでお付き合いしていた元カレ、シグリッド・ロイエルと、別れる理由になった彼のお母様だった。

 神様…思考を放棄して食に走った罰があたったのですか…。

 先ほどまであふれるほど沸いていた食欲も一気にしぼんでしまったが、笑顔を貼りつけ挨拶をする。

 

「まぁまぁまぁまぁせっかくのご縁ですもの。こちらにお座りなさい」

「ありがとうございます。けどお二人の時間をお邪魔するわけにはいきませんもの。またの機会にご挨拶させてください」

「あらあらあらあら私が一緒だと嫌かしら?」


 はいーいやですー!あなたもシグリット様ご遠慮願いたいですー!

 なんてことはもちろん言えず濁すしかない。


「いえ…そんなことは…」

「エレナ、お母様がここまで言ってくれているんだ。座りなよ」


 シグリット様もさっきわたしたち、別れましたよね?

 なんで同席することを勧めるのかしら?


「ここのケーキはチョコレートケーキが美味しいのよ。頼んでおきますからね。」


 強引に席に座らされ、しかも勝手にチョコレートケーキまで頼まれてしまった。

 私の食べたいのはリンゴタルトなんですが…。


 一応これでも私は伯爵令嬢。

 年配の女性に失礼な真似をすれば社交界で大変な目にあってしまう。

 しかも私には母親はいないのだ。自分の身は自分で守るしかない。

 王妃様は後ろ盾になってくれるなんていうけど…幼少期だけ一生返せないほどの恩がある。そこまで迷惑をかけたくない。


 さっさとケーキを食べて帰ろうと決意するが、シグリット様のお母様はそのつもりはないらしい。


 「息子と喧嘩したんですって?私のせいよねごめんなさい」

 

 しおらしげに謝罪する彼の母親の口元はあがっていた。母親を大好きな息子が誇らしいのだろう。

 そんな母親をシグリット様は心配そうな目で見ている。

 別れたことをこの男は母親に話しているのだろうか。


 「いやですわ、お母様のせいではありません。シグリット様はとても素敵な人でしたがご縁がなかっただけですから…」

 「エレナ!俺たちは別れてないだろ!」


 シグリット様からまさかのカウンター。

 いやいや別れるっていったのそっちでしょ!


「…シグリット様にはもっと素敵な女性が見つかりますわ」

「そんな卑屈にならなくていいのよ。エレナさん」

「卑屈…?」

「エレナさんって早くからお母さまがいないから淑女として自信がないのよね。私に任せておけばいいのよ」


 どうやらシグリット様のお母様は思い込みが激しいようだ。


「そうだよ!エレナ。お母様に任せておけばいいよ!」


 ジグリット様あなたは黙っててくれませんか。

 

 あ…でもわかった…。

 ジグリット様は私の12才上の32才。男性でも適齢期は過ぎていた。

 この機会を逃したくないのだろう。

 32才にもなってお母様お母様うるさい男誰だって願い下げだよね。


「すみません、今回はご縁がなかったということで、シグリット様の幸せを遠くから願っておりますわ」

 

 こういうときははっきり言わないといけない。それはこの20年の人生で嫌でも学んできた。


「エレナさんあなた自分の立場わかっていらっしゃる?」


 さっきほどまでの声より数段低い声を発するのはシグリット様のお母様だ。

 怒気をはらんだ声は苛立ちを隠す気もないらしい。


「片親のあなたでもいいと言っているじゃない。早くにお母様を亡くされているから…こういっちゃ悪いけど教養面で足りない部分も多いのではないかしら。目上の者の助言は聞くものよ。」


 はい、本性でました!若くて言うことを聞きそうな嫁を手放すわけにはいかないですもんね。

 でも片親と馬鹿にされてわかりましたなんていうわけないでしょ。


「わかりました。」


 肯定の言葉にわかりやすく笑顔になる2人に私ははっきりと言葉を告げる。

 

「母が亡くなっても一途に愛し続けているお父様を尊敬してますの。けれどそれを片親と蔑まれるようでは父がなんていうか…まずは父に相談してみますね」


 あなたが母親を使うなら、私は父親を使う。お母様の写真をみてはいまだにメソメソ泣く父親だが、片親呼ばわりしたらきっと激怒するだろう。


 父の名前を出すと途端に黙る2人に、この人たちは自分より下だと思っている人間に強く出るんだなと改めて気持ちが冷めていくのが分かった。

 年上が素敵だなんて思っていたけど、シグリット様はまるで幼い子どものような顔をしていた。


 そのまま淑女の礼をしその場を辞すことに成功した私はリンゴタルトを食べ損なったことだけを悔い、馬車に乗り込んだ。


「今度侍女に頼んで買ってきてもらおうかしら」


「リンゴタルトなら僕が買ったよ。昔から好きだったよね。」


 幻だろうか。

 目の前になんでアレクシス王太子殿下がいるのだろうか…。


「ま、間違えました…」


 いったん落ち着こうと馬車を降りようと体を反対に向けようとしたが、時すでに遅し、次の瞬間には王太子殿下の隣に座らせられていた。


 まだ15才だと思っていたが私より背は高くなっていて力も強い。

「話が途中だったから追いかけてきたんだ。」

「年頃の男女がこうして二人きりでいるのは外聞が悪いですわ。」

「大丈夫だよ。護衛と俺たちしか二人でいることを知らないはずだから。エレナが困るようなことはしないよ」


「今この瞬間が困ってるんだってば!」


 心の声が思わずでてしまい、とっさに口を押えたがもう出てしまったあとだった。不敬すぎる。

 ちらりと殿下のほうを見上げれば、とろけるように嬉しそうな顔をしていた。

 ま、まぶしい…。


「久しぶりに昔みたいに会話してくれたね。嬉しいよ」

「不敬をお許しくだ…」


 私の口をふさぐように殿下の指が私の唇に降りてきた。


「不敬じゃないよ。じゃあ命令だ。昔みたいに話してよ」


 子犬のように眉毛をさげて命令されるだなんて卑怯だ…。けど…もうこれは意固地になってる場合じゃ ない。私は一息ついて覚悟を決めた。


「アレクいい加減にしてよね」


「うん!」


 うん!じゃない。会話になってない。


「私とあなたでは身分が違うの。同性のユリウスとは違うんだから理解してよ」

「だから二人きりのときにお願いしたんじゃないか」

「お願いじゃなくて命令でしょ」


頭が痛くなってきた。ため息をつくとアレクが心配そうに顔を除いてくる。

15才なんてまだまだ子どもだと思ってたけど、アレクは成長期を早めに迎えたのかすっかり青年そのものだ。けどまっすぐ見てくる瞳は昔のままでどこかくすぐったくなる。


「ロイエル家には俺から罰を与えておくから安心して」

「え?」


「エレナを物みたいにあつかったろ?」

「見てたの!いつから?」

「最初から。助けようかと思ったけどエレナそういうの嫌がりそうだし」

「その配慮は大正解!ありがとう!」

「でしょ!ほめてほめて」


 ぐっ可愛い…いやいやほだされるな…


「自分で解決したしこれからも解決するからアレクは手も口もださないで」


 そういうとアレクの笑顔はますます深くなる。


「相変わらずエレナはかっこいいよね。あの男はエレナには合わないよ」

「それはどうもありがとう」


 淑女にかっこいいは誉め言葉なのか?


「ねぇエレナ。俺と本当に付き合わない?俺だったらエレナを大切にするよ」

「あのね…15才に手を出すなんて」

「あの男は32才なのに20歳のエレナに手を出そうとしてたでしょ」


 確かに…シグリット様とは12才だ。そう考えると5才は確かに…いやいやいや!!


「15才は子どもでしょ」


 そういうとふてくされたような顔をするアレクに昔の面影を感じホッとする。

 …が相手はまだあきらめる気はないようだ。


「あと3年で成人だ。そしたらもう子どもじゃないよ」


 なぜか距離が近づいてきている気がする。私の足にアレクの足が触れていてそこが熱をもっているのが分かる。

 相手は子ども子どもと自分に言い聞かせて言葉を探した。


「私は王太子妃にはなりたくないし!」


「じゃぁ婿入りするよ!」


 間髪いれずに返ってきた言葉に言葉を失っていると、名案というようにアレクは言葉を続けた。


「僕には11人兄弟がいるしね、別に王太子に固執してない。適当に爵位をもらってもいいし、婿入りしてもいいよ。もちろんエレナ以外を娶るつもりもないし、愛人も作らないよ。あっでもエレナも僕だけにしてね」


 国の王太子が何をいってるの!?

 何でもないような顔をしてとんでもないことを言っている自覚はあるのか。


「…アレク…あなた本当に私のことが好きなの?」

「前からいってるでしょ。僕はエレナ一筋だって」

「前からって…」

「4才の時にプロポーズしたでしょ」


 4才って…あの時からずっと!?

 

「あの時のエレナは騎士団長に夢中で本当に面白くなかった。騎士団長がロリコンじゃなくてよかったよ」


 たしかに騎士団長がロリコンだったら大問題だ。


「エレナとユリウスと暮らしていたときは本当に楽しかったんだ。エレナは迷惑をかけたとおもってるだろう?あの時、母上は後宮を掌握するために毎日忙しそうでとても寂しかったんだよ。」


 今では申し訳なく思っているのは事実だが、あの時は私も楽しかった。大切な思い出でもある。


「エレナだって母親が亡くなって寂しい思いをしているのに、ユリウスのために泣くのを我慢していたろ?かっこよくてやさしいエレナは僕の憧れで初恋の人だよ」 


 そういうとアレクは、私の髪を一房手にとって唇を落とした。

 そのしぐさと眼差しは色っぽくて、自分の顔が熱くなるのをはっきりと感じた。


「その表情は期待してもいいってことだよね?」



 一体私はどんな表情をしているのだろう。


 年下なんて守備範囲外だし、相手は15才だし…この国の王太子だし…



 それに…



 それに…




 男運のない私が年下王太子に溺愛されるわけがない!




 おわり


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最後まで読んでくださりありがとうございました!

初めての小説で拙いところもあったかもしれませんが、楽しく書かせていただきました。またアレクシス視点でもエレナに彼氏がいたときの心境なども書きたいですね。


年下溺愛男子が大好きなのでこれからいろんな年下男子を書いていきたいと思います。

こんな年下男子が好き!っていうのがあれば是非教えてください。


月川はるの

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