第6話

「さすが宗久だ」


 佐藤ごうが口を開く。


「珍しいわねあんたが話すなんて………まあ私もテンション上がってきたわ」


 もうこいつら勝ちムードになってやがる……。だけど本当にまずい!とりあえずあの謎の動きを止める技から脱出しないと!

 そう、さっきからあの宗久から放たられる謎のオーラが俺の動きを止めている。


「スキル!!」


【発動できません】


 ………なんだって………。まさかあのオーラはスキルまで封じ込むことができるのか?


「おらカス終わりだ」


 宗久が攻撃の姿勢に映る。あの体制はまさかドロップキック?!あいつが気に入ってずっと練習してた技だ!


「おお宗久くんサンドバック復帰おめでとうってことですね!?」


 田川玄樹が嬉しそうにニヤニヤと笑う。


 くそ避けないと!だけど体が…………


「深呼吸じゃ」


「!?」


 今の声って………!?


「行くぞおらあ!!!」


 そんなことより深呼吸!?


 言われるがままに深呼吸して一度脳を冷やした。なんか一瞬家にいるみたいな感覚になった………だけどこれになんの意味がある?

 宗久の足が俺の頭に届きそうなとき、何か違った。

 ………動ける!?


「なに!?!」


 あと0.1秒で届きそうってタイミングでギリギリ避けることに成功した。宗久も何が起きたんだ……といった表情で硬直する。だがそれは俺も同じ。なんで動けたんだ?


 すると深呼吸の助言をしてくれた人が口を動かした。やはり風の王だったようだ。引き続き赤い柵で動きをとめられているが、意識だけは戻せるようだ。


「お主………理由は知らんが相当なトラウマを相手に持ってるようじゃの。それこそがお主の体を止めていた正体じゃ」


 確かに………いやでも動けなくなるなんてことは今まででも一回も無かった……


「精神干渉ってスキルを使ったんじゃ。お主さっきから何かに焦りすぎじゃ。そんな状態じゃ簡単に操作されてしまうぞ?」


 ………!なるほど………確かに俺は復讐心が昂りすぎて奴を少しでも早く殺したい一心で戦っていた。でも思ったより相手は強くなっていて、焦ってしまっていたんだ。しかしその火は絶対に絶やそうと思うな………精神干渉のスキルがどんなんか見当がつく。だからもう大丈夫だ……これで対等!!


「動くんじゃねぇよ」


「そんなもん俺にはもう通用しない」


「チッ……」


「今度は俺の番だ!『英雄の剣』」


 東京タワーくらいじゃないか……と思えるほどの巨大な剣が魔法陣と一緒に召喚された。さっきの龍とは対照的で眩しくて見えないほどの輝きを放っている。まるで全てを浄化してくれるかのような……

 その剣は宗久を刺すために地面と並行になった。


「くっそが………『死滅龍』ッ!!!!」


 再びあの禍々しい龍が姿を現した。お互いの最強の攻撃同士の戦い。しかしあの龍にさっきまでのおぞましさは感じない。おそらくあの輝きに少し浄化されているのだろう。しかし龍は諦めない。剣に向かって主を守るような動きで剣に突進していった。それは同じく剣も地面と平行のまま猛スピードで死滅龍へと迎え撃つ。両者激突!!!とんでもないエネルギーが爆発する。地面がガタガタと揺れるこの両者の衝突だけで自然を超越した。発動したもの同士も立ってられるのがやっとというくらいのエネルギーである。


 そんな中、とっさに俺は叫んだ。


「宗久!!!俺がお前にされてきた今までのこと!!ここで報いを行ってやる!!!」


 それに反応した宗久もとっさに叫んだ。


「だまれ生涯奴隷がッ!!てめぇは一生俺様の奴隷なんだよ!!!」


 激しい激突が続く、だがどんどんと死滅龍は押されていく。そのたびに英雄の剣は輝きを強める。まるでその闇を喰らうかのように。


「うぉぉぉおー!!!!!!」


「ぐぉおおおお!!!!!!ぐはぁぁぁ!!!」


 死滅龍は全ての闇を喰われ、そのまま消滅した。押しのけた英雄の剣はその力を保ったまま田中宗久の胴体をぶっ刺した。


「革命を起こされた気分はどうだ?自称王様」


 俺は地べたに這いつくばる宗久に足を置いてそう言ってやった。

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