たったひとりの英雄として復讐する

第5話

「あの……なんで黒色なんだ？」

　すると宗久がこう答えた。

「あ？そんなん決まってんだろ暴虐の王をぶっ殺したんだよ」

「え！？」

　嘘だろ！？暴虐の王ってたぶん風の王と同等の実力があるはず！俺は唖然と口を開く。

　あの王達みたいな化け物達は俺みたいに謎の称号が無いと勝てないはずなのに………。いやまさか………？

　頭上によく注目する。すると宗久の黒色の下にこう書かれていた。

【称号:絶対的な独裁者】

　称号持ち！？

「気付いたかカスが。お前は勝手に選ばれた人間って思ってるかも知れねぇけどそうじゃないんだよ」

「キャハハ恥ずかしい男ね」

「お前はどうやっても俺らからしたらカスなんだよ」

　この瞬間、謎の重りが体を押し寄せた。

　なんでだ………ようやく俺が初めてあいつらに勝てると思ったのに。なんで神様はこう俺に理不尽を押し付けるんですか？答えてくださいよ。

「ガハハ！！見ろよこいつ！神に祈ってんじゃねぇの？」

「最高っす宗久くん！やっぱこいつおもしれえ」

　………結局同じか…………ん？

【たった一人の英雄として立ち上がるべきだ】

　メッセージ…？てかこんな口調だっけ？………でもそんなことよりどういう意味……

「！！」

　その瞬間、俺の背中に稲妻のような衝撃を感じた。なんでこんなすぐに俺は諦めてしまっていたんだろうか……！？普通に考えたらまだこんなに絶望するタイミングじゃない！負けても無いのになんで落ち込んでるんだろう俺は。俺も黒色だ。言わば同格。相手が王を倒したと言っても苦戦して倒したのかも知れない………格下の可能性もある。…………だめだなこいつらに植え付けられてきたイメージがずっと付き纏っていたようだ。勝手に自分の中で俺はこいつらより下！って決めつけてたせいでそんなことにも気付けなかった………。

　覚悟を決めた。

「おお？宗久くんこいつやるっぽいすよ」

「最後は男のプライドってか？命知らずが！殺してやるよ」

　………多分こいつらも俺が上っていうイメージがずっとついてるんだろな。

「俺が教えてあげないと」

「はぁ？何言って……………ぐはッッ！？」

　風の王ですら見切れなかったスピードにお前がついてこれる訳ないよな？一瞬にして俺はこいつの顎に打撃をクリーンヒットさせた。宗久は意識はあるものの少し硬直があり、静止する。他の取り巻きは大きく驚いている。

「え……ちょっと宗久！何やられてんのよ！」

「うるせえ黙ってろ……」

　……なんだこいつの速さは…クソがさすがに風の王を倒したのはまぐれじゃないってか？だがなこいつは知らねぇだろなあ！俺の本当の強さを。

「もっかい教えてやるよカス」

「！？」

　なんだこのゾワゾワっとする感覚は………！？なんだか分からないけど宗久からおぞましい圧を感じる！くそ！動けない！！！

「『破滅龍』」

　そのとき空に大きな龍が現れた。黒く黒くおぞましく禍々しい雰囲気を放つ。見るだけで気を失いかけるほどだ。その龍は対象を見つけると体を向け、突進し始めた。

「ぐはあぁああああ」

　動けない俺へ龍からの無慈悲な突進。物凄い痛みが体中に走る。しかし本当の恐ろしさはここからだった。

　自分の体の異変に気付く。禍々しいオーラが自身の体にまとわりついている。その瞬間から俺は頭がズキズキとし始める。

「ハハハ！！！見たかカス！！これが俺様の力だ！」

　これはまさか精神攻撃………！？脳が侵食されそうだ、！これはこの男、宗久が人を操作する際に最も最初に行うことと似てる！じわじわと相手の脳を衰弱させ、いつの間にか自分の手駒にする………それと一緒だ！…………ということはまさか？

「あと5分ってとこか。あのカスが再びサンドバックになるぞおお前ら！しかも次はもっと忠実にな！ハッハハハ！！！」

　俺は5分以内にこいつを倒さないとこいつの操り人形になってしまうのか！？