第2話

「護身用のつもりで持ち歩いてた。でもまさかほんとうにやっちまうとは思ってなかったよ」



その日もいじめグループは昼休みに伊勢谷さんを校舎の裏に連れて行こうとした。



「そのときカッとなってね……

ポケットに入れてたのを取り出したんだよ。

これで相手はビビってなんにもできないと思った、でも1人が笑いながら近づいてきて……

俺は斬りつけた。それで初めて相手も驚いて……

相手の腕から流れる血を見たら怖くなって逃げ出したよ」




「そのときにナイフは?」



私が聞くと頭をふりながら



「中庭まで走っていったときに自分がナイフを持ったままということに気がついてその場に投げ捨てたよ」




話している伊勢谷さんの顔はどこか昔を懐かしんでいるようだった。



そして悲しそうでもあった。

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