第5話 レベルアップの甘い味
ああ、甘美だ。これがレベルアップの味。レベル3の私が一気に7回もレベルアップした。前回、レベルが一度に二つも上がったときも感じたが、レベルアップすると妙な快感がある。どんな感じかというと、熱い湯船に体を浸ける感覚に似ている。しかし今回は7つもレベルが急に上がった。
例えるなら、真冬の寒空の下で裸のまま放置された後、温泉を見つけた感じ。凍え死ぬ寸前に熱々の温泉に身を沈め、体がほかほかと温まった頃に冷たいビールを飲む感じだ。そう思うと、冷たいビールが飲みたくなる。
私がビールを飲める日がいつか来るだろうか。なんとなく寂しくなり……はしなかった。私は感謝の気持ちを持つ人間だ。昔はそうじゃなかったけど、今はそうだ。運よく命を拾った。第二の人生を得られたことだけでも感謝するべきことだ。実際、落下の衝撃は思った以上に大きかった。
骨が何本か折れたに違いない。幸いなことに、体が治っていくのが体感できる速度で進んでいる。レベルアップのおかげだろうか。そういえば、前回レベルが二つも上がったあと、少し体が大きくなった気がした。今回もそうだ。ジャガーの肺の内部は、私が自由に動けるくらい広い。少し大げさに言えば、ということだ。
[急激なレベルアップで肉体の変化が遅延しています。]
あれ?確かに、体の成長が止まった。レベルアップの速度が速すぎて、体が追いつかないようだ。ということは、レベルアップすると私の肉体も成長するということか?そうであってほしい。今は少し長いだけで、とても小さい。
これでは野生で生き残るのは難しいだろう。
とりあえず体を動かしてみた。よく動く。私の肋骨の数は数百本はあるだろうし、そのうち少なくとも数十本は折れていたはずだが、痛みは消えた。
そしてボロボロだった顎もくっついている。実のところ、気道に吸い込まれたのは私の計画ではなかったよりによってその時、酷使されていた顎が外れてしまったのだ。運を平均に設定しておいたのは正解だったようだ。こう考えると、ステータスの振り分けを間違えたわけでもない気がする。
……いや、そもそも蛇に生まれなければこんな危険を経験しなくて済んだのか。
ぐぅーっ。お腹の中の乞食が騒いでいる。コウモリを丸ごと飲み込んで満腹だったのに、今は腹が減って死にそうだ。どうやら動きすぎたのが原因のようだ。前世でもこれほど運動していれば良かったのに。
まあ、問題はない。今、私はジャガーの体内にいる。つまり、天井、壁、床、食べられないものがないということだ。私はヘンゼルとグレーテルのお菓子の家に入ったかのように唾を飲み込んだ。
いただきます!かみつき!
生きる味が素晴らしい。少し固いけど、旨味がある。必死に喉元にしがみついていたからだろうか。噛み付きの熟練度が大幅に上昇した。
いくら私が普通の蛇ではないとはいえ、本来蛇は生きている動物を丸呑みし、消化して食事をするものだ。ただ、私の歯の構造は普通の蛇よりも恐竜の歯のように鋭かった。スキルの補助もあるおかげで、肉を噛みちぎるのもなんとかこなせる。
考えてみれば、スキルというのはとても凄いものだ。もし「飛行」のようなスキルを習得できたら、私も空を自由に飛び回れるんじゃないか。
もちろん、想像はつかないけど。全力で飛ぼうとしても、飛行スキルを得られそうにはないし、そんな想像をしながら腹を満たした。
混血ジャガーはやはり強いようだ。肉がとても固かった。でも、私は止まらずに噛んで飲み込むことを繰り返した。大変で時間がかかる作業だったが、決して退屈ではなかった。むしろ美味しい。
子供の頃は好き嫌いが多くて、毎日のようにお尻を叩かれていたが、今の私の姿を見たら、両親はどう思うだろう。
「立派だ、我が息子よ」と喜んでくれるのではないか。少なくとも、部屋に引きこもってニート生活をしているよりは喜ばれるかもしれない。
うん、確かに美味しいと感じたのは錯覚ではなかった。メデューサママが吐き出してくれた肉の塊も食べられるくらいだったし、蛇になってから味覚が変わったのかもしれない。よく食べるのも才能だ。今の程度の才能なら、食レポをしてもいいくらいだ。
私は夢中で肉を食い尽くした。前回はコウモリ一匹で満腹になったが、今回はその三倍以上食べてもまだ入っていく。そんなとき、歯が折れた。
ガリッ!
ぎゃっ!
硬い何かを噛んでしまったらしい。歯が一度に三本くらい抜けてしまったけど、大丈夫だろうか。いや、私はまだ生後2週間も経っていないから、今の歯は乳歯だろう。一度抜けても生え変わる永久歯じゃないといいけど。この世界にインプラントはなさそうだし。
……なんだこれは。噛んだのは骨じゃなかった。いつの間にか私は混血ジャガーの心臓のあたりまで入り込んでいた。そこに光る石のようなものがあった。
尿路結石か?いや、今は心臓の中だから尿路結石ではないだろう。結石をガリッと噛んだと思うと、さすがに私でも食欲が失せる。不思議にも光を放つドングリほどの石。
暖かい熱気のようなものも感じる。自然に光る放射性結石でなければ、これもファンタジー的な何かだろう。魔物の体内にいるんだから、魔石ということかもしれない。
さらに肉を食べたときとはまた違う食欲が湧いてきた。
これを食べればもっと強くなれる。確かな確信があった。それなら、尿路結石ではないことを祈りながら……。
ガブッ。
噛み付く代わりに一口で飲み込んだ。幸いにも、声が私の選択が正しかったことを確認してくれた。
[3等級の魔石を摂取しました。]
3等級の魔石だって。良いものなのか?肉や試験では1等級が一番良いけど、サイオニックエネルギーは12等級が最高だ。混血ジャガーがどれだけすごい魔物か分からないから、何とも言えないな。一度ステータス画面を確認してみよう。
【リトルホワイトスネーク Lv10(-)】
[特性]
[不屈], [精進]
[スキル]
[毒牙 Lv3], [素早く這う Lv3], [息止め Lv4], [捕食 Lv1], [噛み付き Lv4], [毒耐性 Lv2], [出血耐性 Lv2], [痛み耐性 Lv4], [熱耐性 Lv2], [生存本能 Lv3]
【状態】
[成長中], [魔力飽和], [眠気]
おお、何もなかったステータス画面がかなり充実してきた。見慣れない「捕食」スキルも増えている。レベルもついにLv10に到達したが、横に(-)という表示が付いている。たぶん、体の変化が遅延しているっていうことなのだろう。でも、前向きに考えれば少尉(見習い)、大尉(見習い)みたいなものかもしれない。
それでも、ステータス画面は私が越えてきた苦労をはっきりと示してくれた。息止め、痛み耐性、噛み付きが特にレベルアップしているのを見てくれ。どれだけ痛みを伴う道のりだったかがわかる。
気に入っているのは「生存本能 Lv3」だ。私はこの世界について何も知らなかった。生き延びるためには情報が必要だけど、それを本能的な何かで乗り越えられるのではないか。もちろん、本当に生存本能に従うべきかは分からない。ほとんどの動物は高い所を恐れる本能を持っているが、時には生き延びるために高い木を登らなければならないこともあるだろう。
【状態】というのも見慣れないものだ。ステータス画面はリアルタイムで更新でもされるのだろうか。私は成長中で、眠気を感じていた。魔力飽和というのは何を意味するのか分からないが、魔石を食べたからそうなったのかもしれない。
いずれにせよ、魔石を食べた途端、不思議にも私を苦しめていた飢えが収まった。ああ、眠気が増してきた。私の適応力は素晴らしいもので、この混血ジャガーの体内はそれほど悪くなかった。血と体液が少しべたついて匂いはしたが、良い点もある。上下左右すべてが食べ物だということだ。そして、この腹の中にいる間は私を脅かす危険もない。
ここで少し休むのも良いだろう。以前のように、眠って起きれば体が軽くなっている気がする。少し目を閉じてみようか。
そうして私は再び眠りの中へ身を任せ……とはいかなかった。少し不安だ。
目を閉じていたが、また開けた。これが正しい選択だろうか。この暖かくて暗い場所は本能的な安定感を私に与えてくれる。しかし、それは錯覚かもしれない。外の環境はどうだろう? 混血ジャガーが落ちた場所が実は危険な場所だったら?死んだ動物の死体には掃除役が群がるものだ。虫が寄ってくるくらいなら問題ないが、混血ジャガーと同じくらい危険な魔物が現れたら大変だ。もし何かが混血ジャガーの死体を丸ごと飲み込んだら、私はフェレロロシェの中のヘーゼルナッツのように、あるいは海苔巻きの中のたくあんのように食べる楽しみとなってしまうだろう。この不安もおそらく生存本能Lv3の働きかもしれない。
とりあえず出てみよう。私はあちこち動き回った末に出口を見つけた。
舌をぐっと伸ばして、死んでいる混血ジャガーの口を通って外に出た。
「うわ、これすごいことになってるな。」
混血ジャガーが落ちた崖はかなり高かった。辺りを見回すと、ここは窪んだ盆地の地形だった。そして混血ジャガーは平らな地面の上にむき出しで横たわっていた。危険な状況なのかどうか少し迷うところだ。
あの大きな肉塊をそのまま放置しておくのは少しもったいないので、まずは周囲を見渡すことにした。スルスルと這いながら近くの茂みに入っていった。
ドゥーン-
あれ?地面に密着している腹から振動が伝わってきた。蛇が世界を認識する方法には視覚以外にも手段がある。特に、振動を感知する能力は人間よりも遥かに優れているようだ。
ドドドッ…ドゥー…
何かが地中を動いているのがはっきりと感じられた。とりあえず硬い岩の上に急いで登った。それでもなお振動はさらに激しくなっていく。
何かが近づいてきていた。
私は動きを止め、静かに息を潜めた。あ、すぐ下を通り過ぎた。岩の下を通り抜けた何かが向かった先は、混血ジャガーの死体のある場所だった。そして地面が突然盛り上がった。
甲殻の付いた足のようなものが四本突き出ると、
ガシャッ!
混血ジャガーの死体を抱え込んでそのまま地中に消えていった。
ゴゴゴゴゴゴー…
そいつは獲物を手にして消え去った。
生存本能様、ありがとう。現れた魔物がどんな奴かすら見えなかったが、確実に混血ジャガーより大きくて強力そうだった。あんな奴が地中を這い回っているなんて、恐ろしい場所に来てしまったものだ。
私はしばらくの間、岩の上で身動きせずにいた。奴が完全に去ったと確信してからようやくその場を離れることができた。
寝る場所を見つけなければ。もう裸の地面で寝たいとは思わない。
日が沈む直前、体を隠せそうな岩の隙間を見つけた。その中に入り、土を体にかけてカモフラージュした。あの奴、まさか岩ごと飲み込むなんてことはしないだろう。
今日は悪夢を見るかもしれないな。少し緊張しながら目を閉じた。
***
悪夢は見なかった。私の精神力は抜群に強靭だからだ。むしろ、良い夢を見たと言えるかもしれない。眠りに入るとすぐに状態メッセージが見えたのだ。
[レベル10を達成しました。進化が可能です。]
[進化しますか?]
もちろんだ!
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