第6話
一九七三年十月十三日。僕らはオフィラ空軍基地付きの航空部隊・第一〇七飛行隊と共にシリアにあるサイカル空軍基地への攻撃に向かった。当初は僕らが随伴する予定なんてなかったはずなのに、先の拠点オルカルへの支援を成功させた僕らは彼らイスラエル人を強く感動させたらしい。
「軍用機乗りは皆、実力者を重宝するんだよ」
と彼女は言った。
襲撃された空軍基地はちょうど、敵を迎えた時の蜂の巣のようになる。人々が走り、轟音と共に迎撃機が上がる。……シリア側が発進させた迎撃機のうちに僕は、東側政府のラウンデルが記載された機体を視認した。
「東の機体、来てるみたいです」
通信機越しに彼女は言う。
「台湾海峡にもベトナムにも奴らはいた。ここに居ない道理がない」
僕らは空戦に突入する。僕らの使用する誘導ミサイルは米国のノックダウン品で、信頼性が低かった。イスラエルのF4が放つ誘導ミサイルの精密性に羨望を抱きながら、僕らは偶然にも東側政府の戦闘機と戦闘を行った。
「
彼女が叫ぶ――東側政府の最新鋭機は
「そっくりだな、僕ら」
彼女に聞こえないように僕はそう独りごちる。二機しか居ない戦闘機。旧式機を鉄火場へと持ち込むその厚顔さ……。
僕らは、搭載している国産ミサイルを敵機に向かって発射した。ミサイルは途中まで敵機に向かい、以後はひょろひょろと頼りなく飛んで砂漠へと落下した。相手もまたミサイルを発射するが――似たようなものだった。
僕らは格闘戦に突入した。農夫と御剣は、お互いの後方に陣取ろうと機動する。速度は低下し、強いGが僕の顔を歪ませる。
この空戦で、僕は何の役にも立つことができなかった。ただ、気付いた時には彼女の機体が敵編隊の機体に食らいつくように機関砲を掃射し、敵の片割れを撃墜していた。
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