第5話
バーレブ線の拠点・オルカルへの近接航空支援がイスラエルの所望する作戦行動だった。僕らの機体は
「ぶつかるぐらいの低空で」
と彼女は言った。――バーレブ線は戦場を通り越した地獄の様相を呈している。破壊された戦車、相互の兵士の死体、死体、死体、死体。黒焦げ、生焼け――バリエーション豊か。僕らはその死体の数々の、顔の作りまで分かってしまいそうなほどの低空を飛んだ。
「無茶苦茶だ」
地面や、そこにある物が高速で迫ってくる。こんな飛び方を僕は防衛学校では教わらなかった。僕の機体は僕の戸惑いを反映するかのように揺らぐ。けれども、彼女の――岩本朱三の機体は揺らがない。
僕達の機体は、当初要求された地点へ爆弾を投下した。その爆弾は炸裂して、幾人とも知れぬアラブ人を吹き飛ばした。
しかし、僕らが帰還する途上。僕らが行動を終えてほんの数十分としないうちに、拠点・オルカルは陥落した。
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