13話
約束通り安静にしていたからかは分からない。
大きな何かも起こらず三日が経過し一般病床に移りますと看護師が言ってきた。
途中、松木さんという女性理学療法士――リハビリの人がやってきて座ったり、立ち上がったり。
軽く身体中の筋肉の運動や関節が固まらないようにと運動をしてくれた。
だが、時間にして二十分程度。
しかも血圧など色々なものを観察しながらの為、殆ど運動をしているという実感は楓には無かった。
(むしろ、軽く歩いて絶望した。自分の脚が、身体が自由に動かないなんて……私の身体なのに)
強いストレスで楓は限界に近かった。
自暴自棄になり、口数も減ってきているのを自覚していた。
「――お母さんに何かして欲しい事ある? こっちの病棟に移ったから、ある程度は持ってこられる物も、自由も増えたのよ。あ、あなたのスマホは持って来てあるからね」
「ありがと……。そうだな、日記帳とか。ほら、入院生活って暇だから。スマホじゃなくて文字書いてれば気も紛れるかもだしさ」
必死に笑顔を浮かべる母に、空元気のように空虚な笑みで返す。
母を心配させないようにと必死に笑顔を作ってみたが、楓は作り笑顔に慣れていなかった。
逆効果のように、母は悲しそうに沈んだ顔をしてしまう。
誰の目からも、楓が憔悴しているように見えた。
そんな顔と、快活な笑顔を浮かべて走る楓が同一人物だという事を母は受け入れられなかった。
「――失礼します。大宮さん、改めて詳細な病状説明をする準備が整いました」
「分かりました。すぐに行きます」
そう言って、母親が出て行きそうになった時、看護師が聞いてきた。
「ご本人様はどうされますか? 担当の理学療法士や医師からは歩いても問題ないとの事だったので、このまま一緒に行って聞けますが」
正直、いい話が聞けるとは思っていない。
それでも詳細に聞けるならと思い、楓は「私も行きます」と答えた。
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