10話

「――……?」


 眩しい。まず楓が思った事は、それだった。

 瞼越まぶたごしでも分かる程に眩しい。


瞼を通過して目に沁みる程の強烈な光に徐々に慣れ、少しずつ瞼を開けていった楓が目にしたのは――青いキャップにマスク、ガウンをして、涙目の女性だった。


「……お母さん?」


「楓……っ! よかったっ。楓、楓……っ!」


「お母さん、なんで泣いてるの? その格好は?」


「ここはね、埼玉大学医学部付属病院の集中治療室よ。貴女は倒れて、今入院してるの」


「え……」


 楓は事態が飲み込めなかった。少し腕を動かしてみたり、顔を動かすと、楓の腕には点滴ラインが何本も繋がっていて、周囲にはモニターなどの医療機器が大量にあった。


「私、走ってて……途中から意識が無くなって。……なんの病気なの?」


 少しずつ、ぼやつく頭で何があったかを思い出す。

 楓の頭には陸上部のグラウンドで走っていた時から先の記憶がない。


「それは……っ。大丈夫、大丈夫だからね」


「大宮さん、お話はまた。今日はこの辺りで。医師からもまた説明がありますから」


「もう少し……っ。いえ、我が儘言ってすいません。わかりました」


 母親と同じようにキャップやガウン、マスクをしている人が話しかけていた。

 青いガウンから透けて見えるスクラブから、看護師か何かだと楓は理解した。


「じゃあね、また直ぐ来るからね」


 母親は真っ赤に腫れた目で自動扉から出て行ってしまった。


「あの……私は何の病気なんですか?」


「それは医師がきたらご説明させて頂きますからね。まずはゆっくりお休み下さい」


 看護師はそう言ってから心電図しんでんずや点滴用のパックをチェックし始める。


(何だろう。私、全然何ともないのに……ッ)


 楓はなんで自分が集中治療室に入院しているのか分からない。

 自分はこんなにも元気なのにと身体を動かしてみると、一部身体が言うことを聞いてくれなかった。


「あ、あのっ。左足首、私の左足首が言うことを効かないんです!」


「落ち着いて下さい。それもちゃんとご説明しますからね」


 看護師はそう言って落ち着かせようと微笑む。

 しかし楓は、とても落ち着ける状態ではなかった。



―――――――――――

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