プロローグ

1話

 人は死んだら肉体や精神も、何もかも消えてしまうと思うかい?


 ――それは違うと思う。


 人の一生ってのは一つの物語にして、後世にまで燃え広がっていく火なんじゃないかな。

 炎のような情熱は、死や悔恨かいこんの灰を被っても消えはしない。


 歴史上で偉大な事を成した者の名言、成果。

 それらは口伝えや書物の中で燃え続け、誰かの心に影響を与え、場合によっては飛び火もするだろう。


 情熱とは一時的に灰に埋まっているだけに過ぎず、再び燃え盛るのを待つ火種だ。

 それは実に興味深いものだよ。


 人にそれほど影響を与えるような人間が現代にいるか?


 ――いるよ。


 社会全体ではちっぽけな存在でも、小さな英雄とは身近にいるものだよ。


 普段、人の一生を一から終わりまで観る事がない者達が疑うのも無理はない。

 これは私たちの特権だね。

 さて、わかりやすい実例をあげるなら……ちょうど、とびきり興味深い人間がいる。

 

 それでは、この人間が生き、成してきたものの意味がどうなるのか。


 一緒に物語を観ていこうじゃないか――。



―――――――――――

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