酒と正月の私の大騒動

風馬

第1話

正月の朝、町は静けさに包まれていた。まだ初日の出も拝まぬまま、私は母親の命令で雑煮を作る羽目になっていた。元旦早々、料理なんて普段から絶対にしない私にとって、雑煮は一大事。しかも、どうやら母親は「今年こそは自分で作りなさい」と言ったまま、どこかに消えてしまったのだ。


「雑煮ってこんなに面倒だったっけ?」と、鍋を見つめる私。具材が煮立ち始めると、なんだか香ばしい匂いが立ち上り、これはこれで悪くないかも…と考え始めた瞬間、ドアが勢いよく開いた。


「かける! 正月だっていうのに、あんたまた酒ばっか飲んでるんじゃないでしょうね?」と母親。


あれ? 今、酒のことを言われた気がした。


「あ、いや、その…正月だし、ちょっとだけ、ほんの少しだけ…」と答えたが、その言葉はすでに聞く耳もたず。母親は私の隣に座り、黙々と雑煮を作り始めた。


そうして雑煮も完成し、家族全員が集まったテーブルに並べられる。みんなで食べ始めると、母親がついでくれるのは、お神酒の代わりに、またもや私の好きなビール。母親は酒に関しては寛大だが、どうも「ついで」にくれるものが、私にとっては危険なアイテムのような気がしてならなかった。


「お前、ほんとに酒好きだなあ…」父親が笑いながら言う。私は何も言わず、ビールを一口飲む。それで済めばよかったのだが、次の瞬間、隣に座っていた叔父が突然ビールを差し出してきた。


「これも飲め、かける。せっかくだから、みんなで乾杯しようぜ!」


それからというもの、私は完全に負けていた。飲み始めたら止まらない。叔父、父、そして母も、いつの間にか同じテンションになり、家族全員が酒に酔っ払う始末。


そして、ついには年賀状を開けた途端、興奮しすぎて、父が雑煮の具をぶちまけ、母がテーブルをひっくり返し、私と叔父は笑いながら転げまわっていた。


「ああ、もう…今年もまた最悪の正月だ」と母が呆れたように言う。だが、その言葉にもみんなが笑い転げる。正月の風物詩、それは「騒がしい家族の宴」なのだと、私は改めて実感した。


そして最後には、酔っ払ったみんなが「乾杯!」と叫びながら、結局またビールを空けるのであった。


こうして私の正月は、酒とともに酔っ払って過ぎていった。


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