4.ウェスの正体

 レッドは、予定通りに宿の部屋をキープしてから、目についた店に入り、ウェスの服装を整えた。


魔導士セイドラーらしくなったじゃないか」


 フード付きのマントに膝下のローブ、腰のベルトにはナイフケースが付いているが、まだナイフは入っていない。


「ナイフの扱いを覚えたら、専用のを買おう。ウェスはどうせ全ての属性エレメントが使えるんだろうが、基本は一番得意な属性エレメントだけを使ったほうが良い。どこでだれに見られるか分かったもんじゃないからな」


 宿の裏でタライを借りて体の汚れを落とし、新しい服に着替えたウェスは、レッドの言葉に素直に頷いた。


人間リオンの使う呪文スペルは知ってるか?」


 問いかけに、ウェスは首を横に振る。


「では明日、少し教えてやろう。私は目的もなく旅をしているが、時々冒険者組合アドベンチャーギルドの仕事も請け負う。人間リオンの目があるところでは、呪文スペルを使わずに魔法ガルズを行使すると目立つからな」


 目立つことは避けたい……と言葉にはしなかったが、ウェスはその意図を理解したようだった。


あと、ウェスには少々面倒かも知れないが、こういう宿に泊まった時は、メシを食っておけ。それもまた、目立たないためだ」


「それは、知ってる」


「うん? だれか、指導をしてくれるものがいたのか?」


 少々立ち入った質問だった所為か、ウェスは訝しむような顔で返した。  その態度に、レッドは改めて思う。

 この子供の姿をした神耶族イルンは、自分よりもずっと年長なのだ、と。


「では少し、腹を割って話をしようか」


 そう言うとレッドは念のために部屋に結界フルンドを張り、外に声が漏れないようにした。

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