3.奇妙なコンビ【2】

 森を抜けた先にあった街は、防護壁に囲まれた大きな街だった。

 入口で、レッドは門番に説明する。


「旅の途中で、保護した子供だ。」


 門番はウェスの姿を一瞥し、無言で頷いて通してくれた。

 街道では妖魔モンスターや盗賊が出没するのが日常茶飯事で、通りがかりの旅人が被害者を助ける話は珍しくない。

 さらに、ウェスの着ている汚れた服が元は上等な仕立てだったことも、話に信憑性を持たせた。


 街の中に入ったレッドは、冒険者組合アドベンチャーギルドを探し始めた。

 だが、振り返るとウェスは呆然と立ち止まり、道行く人々を眺めて忙しなく首を動かしている。


「街に来たのは初めてか?」


 レッドの問いに、ウェスは素直に頷く。

 その仕草に思わず微笑みながら、レッドはウェスの手を取り、優しく引いた。


「転ぶなよ」


 注意が届いているか怪しいが、レッドは気にせず冒険者組合アドベンチャーギルドへ向かう。

 時間的には、組合ギルドの後で宿を抑え、買い物を済ませるのが良さそうだ。


 冒険者組合アドベンチャーギルドの扉は常に開け放たれている。

 荒くれ者の集う場所は、初心者には敷居が高いため、少しでも入りやすくする工夫だ。

 レッドはカウンターへ向かい、自分の危険度3フラヴォランク身分証を提示する。


「この子の身分証を作りたい。私が保証人になる。職は魔導士セイドラー見習いだ」


 受付の壮年の男性はレッドの提示したで身分証を確認し、それを返した。


「ご提示、ありがとうございます」


 事務的な一言を返すと、受付は手際よく危険度1アルブムランクの身分証を用意する。

 一方、カウンターの高さがウェスには少し高いのか、受付の作業には興味を示さず、ざわめく冒険者アドベンチャーたちに目を奪われていた。


「講習は必要ですか?」

「いや、私が指導するから不要だ。それより、この辺りでお勧めの宿はあるかい?」

「そうですね。安く済ませたいなら隣の冒険者アドベンチャー向けの宿ですが、子連れなら街の中央近くの宿が良いでしょう」

「ありがとう」


 新しい身分証を受け取り、レッドは冒険者組合アドベンチャーギルドを後にする。


「ほら、ウェスの身分証だ。なくさないよう首から下げておけ」


 レッドはバッグから細い革紐を取り出し、身分証に通してウェスの首にかけた。

 ウェスは興味深そうに、その金属製の身分証をじっと眺めていた。

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