2.出会い【4】

 洞窟の入口から差し込む朝の光が、燃え尽きた焚き火から立ち上る細い白煙を照らしていた。

 レッドは体を起こし、大きく伸びをする。

 ふと振り返ると、ウェスは昨晩と同じようにうずくまった姿勢のままだ。


「眠れなかったのか?」

「別に」


 そっけない答えを聞きながら、レッドは考える。

 神耶族イルンの飛び抜けた能力値ステータスを考えれば、食事が不要なのと同様に、疲労回復のための睡眠も必要ないのかもしれない。

 そんなことを考えながら、身支度を整える。

 外は相変わらず濃い魔素ガンドで薄っすらと霧がかかっていたが、その向こうに見える上空は快晴のようだ。


「一緒に、来るんだろう?」


 振り返って問うと、ウェスは少し驚いた顔をしてから、ゆっくりと立ち上がり、洞窟の外に出てきた。


「私は、まぁ、特にこれって目的があって旅をしているわけじゃないんだが……」


 そばに立ったウェスを上から下まで眺めて、レッドは軽くうなずく。


「まずは、ウェスの身なりを整えないとな」


 ウェスは感情を表に出さず、淡々と頷いたように見える。

 だが、それは単に今まで他人と接した経験がないからだろうと、レッドには容易に想像がついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る